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86話
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「ルーカス……開けてもいいか?」
「はい」
シルフェ様が離れると、俺の目からは涙が落ちた。
しゅるりとリボンが解かれる音がした。
「これを私に?ルーカスがイメージした私の香りか……ありがとう、ルーカスに匂いが付いていたから勘違いをしてしまった……すまない」
シルフェ様の声が優しくなったのに気付いて瞼を軽く抑えてから目を開けるとシルフェ様を見上げた。
「使わせて貰うよ。ルーカスありがとう。」
「使っていただけるのですか?ありがとうございます」
シルフェ様の手に握られた香水瓶をシルフェ様はゆっくりと見ている。
キラキラと射し込む太陽の光を受けて輝くその香水瓶が綺麗だなと俺は思っていた。
「が、ルーカス……どうして同じ匂いがルーカスの傍でしているんだ?」
シルフェ様が疑問に思うのは当然だろう。
しっかりとプレゼント用に包まれていたのだから。
「シルフェ様と色違いの瓶を俺用にしました。中の香水は同じ物で……シルフェ様に似合う香りだと思うと、少し部屋の中で使ったのです……シルフェ様が傍にいて下さるように……感じたかったのかも……数日しか離れていないのに……とても逢いたかったのです」
俺はそう告げた。
シルフェ様には隠せない。
呆れられてしまうかもしれないと少し不安になり、シルフェ様の服に触れようとした瞬間、ぎゅうっと抱き締められた。
「まったく……可愛い過ぎないか……ルーカスは」
思っていた言葉と違う言葉が頭上から降ってくる。
「シルフェ……様?」
「同じ匂いになりたかったと言うことか?」
そう聞かれればそうかもしれない。
「はい、たぶん」
俺は言葉を濁すとシルフェ様は困ったように天井を見上げた。
「私も、ずっとルーカスのポプリを持っていたんだ。段々香りが薄くなってしまっている気がしてどうしようかと。今度来る時はまたこのポプリが欲しいのだが?」
「はい、お作りしてお持ちします。それと、もうひとつ……シルフェ様に贈り物を。シルフェ様に似合いそうな赤翡翠のカフスです。式典にも使えるとの事ですが……ループタイもありましたが、それは馬車に置いてきました。お仕事がおやすみになられたら、そのループタイを使って、どうか俺とデートしてください」
俺はシルフェ様におねがいをする。
一度だけでいい。デートと言うものをしてみたい。
今までが特殊な生活をしてきた。
必ず出かける時は家族と、それに警護がついてくる。
恋人など居た事はないし、自宅と学院と王宮を行ったり来たりする生活しかしていなかったのだ。
話に聞く、デートと言うものに憧れた事もあったが、王子が市政に出る事はほぼ無く、更に二人きりで出掛けるなど自分から誘うこともできていなかった。
「はい」
シルフェ様が離れると、俺の目からは涙が落ちた。
しゅるりとリボンが解かれる音がした。
「これを私に?ルーカスがイメージした私の香りか……ありがとう、ルーカスに匂いが付いていたから勘違いをしてしまった……すまない」
シルフェ様の声が優しくなったのに気付いて瞼を軽く抑えてから目を開けるとシルフェ様を見上げた。
「使わせて貰うよ。ルーカスありがとう。」
「使っていただけるのですか?ありがとうございます」
シルフェ様の手に握られた香水瓶をシルフェ様はゆっくりと見ている。
キラキラと射し込む太陽の光を受けて輝くその香水瓶が綺麗だなと俺は思っていた。
「が、ルーカス……どうして同じ匂いがルーカスの傍でしているんだ?」
シルフェ様が疑問に思うのは当然だろう。
しっかりとプレゼント用に包まれていたのだから。
「シルフェ様と色違いの瓶を俺用にしました。中の香水は同じ物で……シルフェ様に似合う香りだと思うと、少し部屋の中で使ったのです……シルフェ様が傍にいて下さるように……感じたかったのかも……数日しか離れていないのに……とても逢いたかったのです」
俺はそう告げた。
シルフェ様には隠せない。
呆れられてしまうかもしれないと少し不安になり、シルフェ様の服に触れようとした瞬間、ぎゅうっと抱き締められた。
「まったく……可愛い過ぎないか……ルーカスは」
思っていた言葉と違う言葉が頭上から降ってくる。
「シルフェ……様?」
「同じ匂いになりたかったと言うことか?」
そう聞かれればそうかもしれない。
「はい、たぶん」
俺は言葉を濁すとシルフェ様は困ったように天井を見上げた。
「私も、ずっとルーカスのポプリを持っていたんだ。段々香りが薄くなってしまっている気がしてどうしようかと。今度来る時はまたこのポプリが欲しいのだが?」
「はい、お作りしてお持ちします。それと、もうひとつ……シルフェ様に贈り物を。シルフェ様に似合いそうな赤翡翠のカフスです。式典にも使えるとの事ですが……ループタイもありましたが、それは馬車に置いてきました。お仕事がおやすみになられたら、そのループタイを使って、どうか俺とデートしてください」
俺はシルフェ様におねがいをする。
一度だけでいい。デートと言うものをしてみたい。
今までが特殊な生活をしてきた。
必ず出かける時は家族と、それに警護がついてくる。
恋人など居た事はないし、自宅と学院と王宮を行ったり来たりする生活しかしていなかったのだ。
話に聞く、デートと言うものに憧れた事もあったが、王子が市政に出る事はほぼ無く、更に二人きりで出掛けるなど自分から誘うこともできていなかった。
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