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59話

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「ん……」
「目が覚めたか?」
身じろいだ俺に言葉が掛けられ俺の意識は一気に覚醒した。
「お、おはようございます」
流石にあの後、シルフェ様と致すことは無く色々な会話をしながら寝落ちてしまった。
「起きられそうか?朝食は?」
「は、はい……軽いものなら食べられると思います」
チュッと額にキスをされ俺は目を伏せた。
シルフェ様も寝起きなのだろうか、額に掛かる前髪が艶かしい。
そして、伏せ目がちにした視線の先には寝乱れて顕になったシルフェ様の鍛えられた胸元。
見てはいけない物を見た気がして俺は完全に目を閉じた。
「なら、起きるか。外でダーウェルが待っている気配がする」
「は、はい!」
人を待たせていると聞くと慌てて目を開けるが、視界に入ってくるシルフェ様の胸を見ないように起き上がる。
すると、俺のガウンは見事にはだけていた。
慌てて掻き抱くようにしながらガウンの前を掴むと、腰紐を絞めると同時にシルフェ様がチリンとベルを鳴らした。
俺が借りていた部屋のベルよりも気持ち音が低いのは、どちらの部屋で呼んでいるかをわかるようにする為なのだろう。
「失礼いたします、おはようございます」
ビシッと燕尾服を着たダーウェルと、その後ろから入ってきたのはフェイ。
「おはようございます」
「ルーカスの着替えを手伝ってくれ」
「畏まりました、フェイ」
「はい」
最初からそのつもりだったのだろう、フェイは躊躇いもない足取りでこちらに来ると腕に掛けていたショールをふわりと俺の肩に掛けてくれた。
「隣の部屋にルーカス様、歩けますか?」
「歩くよ」
歩けないなんて情けないことは言えないと引き攣ったであろう表情を浮かべてから、気合いで寝台から立ち上がり隣の部屋に続く扉を開けて移動する。
「ルーカス様……無理をなさらなくても」
「大丈夫、ありがとう。フェイ、着替えはシャツとトラウザーズでいいかな」
王子妃として、着慣れたスカートやドレスは窮屈でアーデルハイド家では来客が無ければ自由な服装で居て良かったのだが、それをたまたまあの王子に見つかりはしたないと罵られた。
それから、俺は活発に動ける服を着無くなったのだが花街では現代で言うアオザイみたいな服もあり、履いたトラウその時に履いた薄い生地のズボンが快適に感じてそれでは駄目だろうかと思ったが、シルフェ様に贈られたものは全てスカートだったなと思い出して俺は頭を振った。
「フェイ、スカートでいいよ、無理を言ってごめん」
「いえ、ご用意はしてくださっておりますよシルフェ様が。ルーカス様が好きな服装をと、様々なものを衣装部屋に。ご覧になられますか?」
「え?」
俺はにっこりと笑うフェイを見上げたのだった。
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