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39話

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それからしばらくしてシルフェ様が本当にやってきたのだ。

「ご無沙汰をしてしまい申し訳ありません」

爽やかな笑顔。

「お帰りなさいませ」

お帰りなさいませ。いってらっしゃいませ。
お客には、此処が家で寛いで貰いたいとの独特の挨拶だ。

「楼主がお待ちですが、先にお茶を」

今日は冷たく冷やしたハーブティー。
一気に飲み干せるようにと氷を入れた。

「ありがとうございます、珍しいですね冷たい飲み物がいただけるなど」

それもそのはず、氷は珍しい物なのだ。
それは楼閣にいただいた物で大量にあるからと割って配った。
シルフェ様が来る前には楼閣全員に削った氷を配り砂糖水を掛けて楽しんだ。
流石にお客全員に振る舞うほどは無かったため、ルーカスは食べてしまった。
シルフェ様が来るなら残しておけば良かったと思いながらグラスにハーブティーを注ぐと、シルフェ様は椅子に座りグラスに手を掛けると一気に煽るように飲み干した。

「ご馳走さまでした、爽やかな香りがしますね」

シルフェ様がそう言ってくれると、嬉しくなる。
お茶屋で買ったハーブを自分で調合したのだ。

「また、他のお茶も飲んでいただけますか?」
「おや、これはルーカス嬢のお茶でしたか。ならばもっと味わえば良かったです」

残念そうにグラスを置いたシルフェ様。
また、今度があるだろうとルーカスは立ち上がる。
楼主の部屋に案内をしなければならないのだ。

「シルフェ様、来たばかりで大変申し訳ございませんが、楼主の部屋へご案内させていただきます」
シルフェ様の手を取りそっと立ち上がらせると、部屋を出る。
手は繋いだままゆっくりと間違えないように楼主の部屋に向かい、軽く扉を叩いた。

「ルーカスです」
「入りなさい」

名乗ると短い返事があった。

「失礼いたします、シルフェ様をお連れしました」
「ありがとう、とりあえず座りなさいな……ルーカスお茶を頼む」

楼主は座っていた椅子から立ち上がり、応接用のソファーへと移動し用意してあった茶器を示す。
ルーカスは頷き茶器を持ち上げると簡易キッチンでお茶の準備をする。
既に沸いていたお湯を注ぎ習ったようにお茶をいれた。
香りは悪くないが、あまり見たことの無い色で大丈夫だろうかと不安になりながらも2人の前にそれぞれカップに注ぐ。

「ルーカス、貴方の分もあるからいれて一緒に座りなさいな」

お茶をいれたら部屋に戻るものだろうと思っていたが、楼主にそう言われてルーカスは自分の分もカップに注ぎながらちらちらとシルフェ様を見た。

「貴方に関係することだからね、ルーカス……」

楼主様は眉間に皺を寄せてこちらを見つめていた。
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