27 / 131
26話
しおりを挟む
「ルーカス嬢、あれは焼き菓子ですから、早めにどうぞ」
飾り尾を仕舞うシルフェ様が言うのは、先程いただいた小箱らしく、せっかくなら一緒に食べようと俺は開けて良いかと聞く。
構いませんよと言われて俺はリボンの端を引いた。
綺麗に包まれているのに解くのは勿体無い気がしたが。
とても上質のリボンが使われているのだ。
「わぁ」
俺はリボンを丁寧に纏めてから箱を開けると、そこにはまるで玩具のような綺麗に飾付けられた焼き菓子が入っていた。
型抜きされたクッキーが、綺麗にデコレーションされている。
それはまるで貴族のお茶会に並べられるような美しさだった。
「最近できた焼き菓子店のものですが、味は良いと聞きます」
「シルフェ様は甘いものは?」
「嫌いではありませんが、沢山は食べられなくて……」
「お1ついかがですか?」
「いただきましょう」
お皿か何かに出そうとしたが、そんなに気を使わなくていいと言われて小箱をそっと机に置いた。
「ルーカス嬢もお茶をいれてゆっくりしてください」
シルフェ様の言葉に頷くと、自分の分のお茶もいれさせて貰う。
向かい合う形ではなく、シルフェ様の隣に椅子を置いて横並びで座ると、ちらりとシルフェ様を見上げる。
立つと自分より頭1つ大きい身長だが、こうして座れば近くに感じる。
自分も小さい訳ではないが、騎士の人は比較的大柄なのだ。
αやβだからだろうか。
父様や兄様と比べるとやはり俺は一回りは小さくて、幼いときは沢山食べて運動すれば兄様のような長身になれると信じていた。
結局、途中で身長は止まってしまったが。
これで弟に抜かされたら流石にちょっと悲しいものもあるのだけれど、それはそれで仕方ない。
まだ、年齢がそこまでいかないが近いうちに性別判定をすることになるのだろう。
「ルーカス嬢、どうぞ?」
考え事をしてしまっていて、掛けられた声にハッとすると、そこにはにこにこと微笑むシルフェ様がいる。
そして、1枚の焼き菓子を手にして俺に差し出していた。
え。これは俗に言うあーんだろうか。
焼き菓子とシルフェ様を交互に見ていると、どうぞと更に差し出してきたため、俺は目を伏せつつ息を吐いてから、覚悟を決めてパクリと焼き菓子を一口で口に入れる。
さほど大きくはない焼き菓子は簡単に口に入った。
けれど、味など緊張してわかるはずもない。
モグモグと咀嚼をして飲み込んでから、俺は少しの悪戯心からシルフェ様がしたように、1つの焼き菓子を指先で摘まみシルフェ様の口許に差し出した。
さぁ、どんな反応をするのだろうかとシルフェ様を見ると、少し驚いた表情をしたが躊躇する気配もなく俺が摘まんだ焼き菓子を口に入れたのだった。
飾り尾を仕舞うシルフェ様が言うのは、先程いただいた小箱らしく、せっかくなら一緒に食べようと俺は開けて良いかと聞く。
構いませんよと言われて俺はリボンの端を引いた。
綺麗に包まれているのに解くのは勿体無い気がしたが。
とても上質のリボンが使われているのだ。
「わぁ」
俺はリボンを丁寧に纏めてから箱を開けると、そこにはまるで玩具のような綺麗に飾付けられた焼き菓子が入っていた。
型抜きされたクッキーが、綺麗にデコレーションされている。
それはまるで貴族のお茶会に並べられるような美しさだった。
「最近できた焼き菓子店のものですが、味は良いと聞きます」
「シルフェ様は甘いものは?」
「嫌いではありませんが、沢山は食べられなくて……」
「お1ついかがですか?」
「いただきましょう」
お皿か何かに出そうとしたが、そんなに気を使わなくていいと言われて小箱をそっと机に置いた。
「ルーカス嬢もお茶をいれてゆっくりしてください」
シルフェ様の言葉に頷くと、自分の分のお茶もいれさせて貰う。
向かい合う形ではなく、シルフェ様の隣に椅子を置いて横並びで座ると、ちらりとシルフェ様を見上げる。
立つと自分より頭1つ大きい身長だが、こうして座れば近くに感じる。
自分も小さい訳ではないが、騎士の人は比較的大柄なのだ。
αやβだからだろうか。
父様や兄様と比べるとやはり俺は一回りは小さくて、幼いときは沢山食べて運動すれば兄様のような長身になれると信じていた。
結局、途中で身長は止まってしまったが。
これで弟に抜かされたら流石にちょっと悲しいものもあるのだけれど、それはそれで仕方ない。
まだ、年齢がそこまでいかないが近いうちに性別判定をすることになるのだろう。
「ルーカス嬢、どうぞ?」
考え事をしてしまっていて、掛けられた声にハッとすると、そこにはにこにこと微笑むシルフェ様がいる。
そして、1枚の焼き菓子を手にして俺に差し出していた。
え。これは俗に言うあーんだろうか。
焼き菓子とシルフェ様を交互に見ていると、どうぞと更に差し出してきたため、俺は目を伏せつつ息を吐いてから、覚悟を決めてパクリと焼き菓子を一口で口に入れる。
さほど大きくはない焼き菓子は簡単に口に入った。
けれど、味など緊張してわかるはずもない。
モグモグと咀嚼をして飲み込んでから、俺は少しの悪戯心からシルフェ様がしたように、1つの焼き菓子を指先で摘まみシルフェ様の口許に差し出した。
さぁ、どんな反応をするのだろうかとシルフェ様を見ると、少し驚いた表情をしたが躊躇する気配もなく俺が摘まんだ焼き菓子を口に入れたのだった。
310
お気に入りに追加
901
あなたにおすすめの小説
ポメラニアンになった僕は初めて愛を知る【完結】
君影 ルナ
BL
動物大好き包容力カンスト攻め
×
愛を知らない薄幸系ポメ受け
が、お互いに癒され幸せになっていくほのぼのストーリー
────────
※物語の構成上、受けの過去が苦しいものになっております。
※この話をざっくり言うなら、攻めによる受けよしよし話。
※攻めは親バカ炸裂するレベルで動物(後の受け)好き。
※受けは「癒しとは何だ?」と首を傾げるレベルで愛や幸せに疎い。
三度目の人生は冷酷な獣人王子と結婚することになりましたが、なぜか溺愛されています
倉本縞
BL
エルガー王国の王子アンスフェルムは、これまで二回、獣人族の王子ラーディンに殺されかかっていた。そのたびに時をさかのぼって生き延びたが、三回目を最後に、その魔術も使えなくなってしまう。
今度こそ、ラーディンに殺されない平穏な人生を歩みたい。
そう思ったアンスフェルムは、いっそラーディンの伴侶になろうと、ラーディンの婚約者候補に名乗りを上げる。
ラーディンは野蛮で冷酷な獣人の王子と噂されていたが、婚約者候補となったアンスフェルムを大事にし、不器用な優しさを示してくれる。その姿に、アンスフェルムも徐々に警戒心を解いてゆく。
エルガー王国がラーディンたち獣人族を裏切る未来を知っているアンスフェルムは、なんとかそれを防ごうと努力するが……。
【完結】攻略は余所でやってくれ!
オレンジペコ
BL
※4/18『断罪劇は突然に』でこのシリーズを終わらせて頂こうと思います(´∀`*)
遊びに来てくださった皆様、本当に有難うございました♪
俺の名前は有村 康太(ありむら こうた)。
あり得ないことに死んだら10年前に亡くなったはずの父さんの親友と再会?
え?これでやっと転生できるって?
どういうこと?
死神さん、100人集まってから転生させるって手抜きですか?
え?まさかのものぐさ?
まあチマチマやるより一気にやった方が確かにスカッとはするよね?
でも10年だよ?サボりすぎじゃね?
父さんの親友は享年25才。
15で死んだ俺からしたら年上ではあるんだけど…好みドンピシャでした!
小1の時遊んでもらった記憶もあるんだけど、性格もいい人なんだよね。
お互い死んじゃったのは残念だけど、転生先が一緒ならいいな────なんて思ってたらきましたよ!
転生後、赤ちゃんからスタートしてすくすく成長したら彼は騎士団長の息子、俺は公爵家の息子として再会!
やった~!今度も好みドンピシャ!
え?俺が悪役令息?
妹と一緒に悪役として仕事しろ?
そんなの知らねーよ!
俺は俺で騎士団長の息子攻略で忙しいんだよ!
ヒロインさんよ。攻略は余所でやってくれ!
これは美味しいお菓子を手に好きな人にアタックする、そんな俺の話。
【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜
咲
BL
公爵家の長女、アイリス
国で一番と言われる第一王子の妻で、周りからは“悪女”と呼ばれている
それが「私」……いや、
それが今の「僕」
僕は10年前の事故で行方不明になった姉の代わりに、愛する人の元へ嫁ぐ
前世にプレイしていた乙女ゲームの世界のバグになった僕は、僕の2回目の人生を狂わせた実父である公爵へと復讐を決意する
復讐を遂げるまではなんとか男である事を隠して生き延び、そして、僕の死刑の時には公爵を道連れにする
そう思った矢先に、夫の弟である第二王子に正体がバレてしまい……⁉︎
切なく甘い新感覚転生BL!
下記の内容を含みます
・差別表現
・嘔吐
・座薬
・R-18❇︎
130話少し前のエリーサイド小説も投稿しています。(百合)
《イラスト》黒咲留時(@black_illust)
※流血表現、死ネタを含みます
※誤字脱字は教えて頂けると嬉しいです
※感想なども頂けると跳んで喜びます!
※恋愛描写は少なめですが、終盤に詰め込む予定です
※若干の百合要素を含みます
悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです
魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。
ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。
そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。
このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。
前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。
※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)
【完結】前世は魔王の妻でしたが転生したら人間の王子になったので元旦那と戦います
ほしふり
BL
ーーーーー魔王の妻、常闇の魔女リアーネは死んだ。
それから五百年の時を経てリアーネの魂は転生したものの、生まれた場所は人間の王国であり、第三王子リグレットは忌み子として恐れられていた。
王族とは思えない隠遁生活を送る中、前世の夫である魔王ベルグラに関して不穏な噂を耳にする。
いったいこの五百年の間、元夫に何があったのだろうか…?
王太子殿下は悪役令息のいいなり
白兪
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」
そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。
しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!?
スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。
ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。
書き終わっているので完結保証です。
婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》
クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。
そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。
アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。
その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。
サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。
一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。
R18は多分なるからつけました。
2020年10月18日、題名を変更しました。
『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。
前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる