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5話

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あれから数日、通常と同じように過ごしていたが、漸くお父様あてに修道院からの手紙が届いた。

「受け入れを許可する、何も持たずに身一つで来ること」

簡潔な言葉で書いてあった。
それはそうだと俺は頷くも、お父様もお兄様もその内容には納得はしていないようだった。
お布施は駄目なのかとか、寒い場所なのだから防寒着は等と騒いでいるが、俺の気持ちは落ち着いている。

「お父様、お兄様、決まり事ですし俺は大丈夫ですから」
「だが、ルーカス」

心配そうにこちらを見てくるお父様に大丈夫ですよと笑みを向ける。

「明日には出発しようかと思いますので、お父様……修道院までの道程は馬車をお貸しくださいませんか?あまりに近くまで行くと修道院に迷惑をかけてしまうといけないので、近くの街まででいいのですが」
「構わないが、修道院の前まで乗り付けてしまえ」
「父上、当日は私がルーカスを送り届けます」
「そうしたらいい」

などと父と兄の会話を遮り、俺は告げる。

「お父様もお兄様も、俺だけが特別な事をするわけにはいきません。修道院には入らせたていただくのですから。目立たないように行かせてください。これから俺が天に召されるまでは今修道院にいらっしゃる修道士の方たちと仲良くしていかなければならないのですから」

ゲームの中で悪役令息と呼ばれていた本物のルーカスなら、きっと修道院でも身分や権力を振りかざしてやりたい放題をしたかもしれない。
けれど、今、そんなことをしても虚しいだけだとわかっているし、俺の生き方でお父様たちを不幸にしてしまう。
愛する家族を断頭台に送りたいと思う人間が居るわけがない。

ルーカス、だが……」
「お父様、俺を愛して下さるのならどうか聞き分けてください」
「可愛いルーカスを苦しめるのはあのアホ王子なんだよな」

兄様が眉間に皺を寄せる。
ゲームの中ではモブキャラなのがもったいなさすぎるくらいのイケメンなのに。
そんな言葉遣いはダメだろ。

「お兄様……流石に不敬……」
「本当だろう?ルーカスが何をしたというのだ?」
「でも」

王族……あの王子は、きっと自分に都合のいいことばかりをでっち上げると思う。
断罪されるようなことしてきた記憶はないけれど、好きな者と結ばれたいのならゲームの中では語られなかった犯罪すれすれの事も厭わないだろう。
だけど、それを言っても仕方ないのだ。

「俺が何もしていないことをお父様やお兄様が知っていてくれればいいのです」

負け惜しみではなく、本当にそう思うから。

「お父様、お兄様、明日出立するための荷造りをしますので、俺は部屋に行きますね?最低限の下着などは持ち込んでも仕方ないかなと思うので。駄目なら処分されてしまうかもしれませんが、それは修道院の指示に従いたいと思いますので。
では」

俺は父親の書斎から辞する。
身支度をしなければ。
何を持っていっても大丈夫だろうか。
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