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44話

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「ヒュアキントス令嬢、フェンリエッタ嬢を叩いたのは認めますか?」

ベルナルドの冷たい声が響く。

「えっ…」
「ヒュアキントス令嬢、認めるかどうするか、それを問うています」
「おい、マリア…どうなんだ?」
「あの、お父様…」

わたわたとしたマリアにどうなんだと詰め寄る男爵。

「叩き…ました」

認めたマリアに男爵は愕然とする。

「ま、まぁ…学生同士の喧嘩…のようなものではありませんか、ねぇ侯爵様…婦人も…」
「卒業した後だと聞いていますわよ?いつまでが学生なのかしら?男爵」

静かに聞いていた義母が首を傾げる。
可愛らしい仕草に子供がいるとは思えない若さだ。

「え、あー…学院の中にいる間は…でしょうかな?
そ、そうだ…そうですとも!」

良い意見が出せたと思ったのだろう、頷きながら辺りを見回す男爵に賛同する者は誰独りいない。

「そう…ならば仕方ないわね…顔に傷でも残った日にはどうしようかとも思ったけれど、ベルナルド様の的確な対処で顔には痕も残らなかったわ…子供の喧嘩で済ませられるならば親が出ていく必要はありませんわね?ねぇ、あなた?」

義母は隣の父を見上げる。
それに頷きを返した父はちらりと男爵を見やる。

「フェルディナンド殿下は、フェンリエッタが叩かれたのにそちらのヒュアキントス令嬢を止めることもなくそのままにした…と。彼らの会話の内容を聞いていて止めることを必要ないと判断されたのですな?
ならば、無実であっても何をされてもいいと言うことですね?」

「え?」

父も義母も豆の輸出入を握っているのを離すつもりは無いらしい。
マリアが非を認め丁寧に謝罪をしたのならば考えたのであろうが。

「ヒュアキントス男爵家も、そのような家訓ならば現状がどうなっていようと仕方ないのでしょうね」

ベルナルドがそっと揶揄するも、男爵はそれに気付かない。
ベルナルドがつい男爵に向かって溜め息を吐くと馬鹿にされたと思ったのか男爵は激昂する。

「なんだっ!そのこちらを小馬鹿にした態度は!」
「いえ、私も悪いことをしているとは思いませんので今後この国との豆の輸出貿易は一手にゲンティアナ侯爵家と行う事に決めました。侯爵後で内容を取り決めしましょう」
「これは殿からの申し出はありがたい…是非ともよろしくお願いいたします。」

ベルナルドを殿下と呼称したのはわざとだろう。

「殿下…?豆の貿易?」

男爵の顔色が変わる。
漸くそれを理解したのだろう。
わなわなとその手を握り震わせていた。
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