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40話

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「なぜ…殿下…は、フェンリエッタとの婚約破棄を舞踏会で行おうと思ったのか、お聞かせ願いたいですね」

嫌そうに殿下と口にした父親は、静かにフェルディナンドを見ていた。
見るのも嫌だが嘘は許さないとの抗議なのだ。

「皆に…知らしめる為に…」
「…その必要があったのか?」

声のトーンが下がる。
こんなに怖い父をフェンリエッタは見たことがない。

「婚約は家同士の繋がりなのだから、先ずはフェンリエッタと陛下に話すのが普通ではないのか?
ましてや、あのような場で公開処刑のようではないか…挙げ句の果てに…そちらの令嬢とダンスをしてから早々に部屋に引きこもったようで、を明け方までしていたのかは知りませんが、令嬢が部屋に戻ったのは、夜が明けてからと聞いていますが」

ちらりとヒュアキントス令嬢を見ると、マリアはヒッと息を詰めた。

「それに、そちらの令嬢は、うちの娘に手を上げたとも聞く…何故ゆえに?」
「それは…っ」
「娘の言動が貴女の尊厳を傷付けたのかもしれませんが、娘が言ったことに何か間違いはあったのですか?
男爵家の令嬢が侯爵家の令嬢に手を上げるほどの何かが…」
「待ってください、侯爵様、うちの娘が手をあげたと?」

割って入ってきたのはヒュアキントス男爵。
そんなことは聞いていないとばかりの慌てようだ。

「間違いはありません、私が証人です」

ベルナルドが頷いて男爵を見る。

「誰だ君は」
「隣国から留学に来ていました、ベルナルド・リコリスと申します…フェルディナンド殿下やフェンリエッタ令嬢、ヒュアキントス令嬢とも同級生として生活をさせていただいておりましたが…」
「ならば、貴族ではあるのか、爵位を言え」

高圧的に喋る男爵にベルナルドは苦笑しつつ陛下を見る。

「私に爵位は
「なっ!貴族でないのに学院に入れるのか?何故だ」

騒ぐ男爵に対して、陛下や両親は驚きもせずに静かに男爵を見ている。
ベルナルドの言葉にフェンリエッタは息を飲んだ。
その意味は。
この男男爵はわからないのだろうか。
正面にいるフェルディナンドもわかってはいないようだし、マリアの顔はこちらからは見ることができない。
つい、隣に座るベルナルドの顔をまじまじと見てしまったフェンリエッタ。
その手を優しく取り、ベルナルドは小さく頷く。
この結婚、早まってしまったのかもしれない。
フェンリエッタは少しばかり後悔をした。
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