40 / 51
40話
しおりを挟む
「なぜ…殿下…は、フェンリエッタとの婚約破棄を舞踏会で行おうと思ったのか、お聞かせ願いたいですね」
嫌そうに殿下と口にした父親は、静かにフェルディナンドを見ていた。
見るのも嫌だが嘘は許さないとの抗議なのだ。
「皆に…知らしめる為に…」
「…その必要があったのか?」
声のトーンが下がる。
こんなに怖い父をフェンリエッタは見たことがない。
「婚約は家同士の繋がりなのだから、先ずはフェンリエッタと陛下に話すのが普通ではないのか?
ましてや、あのような場で公開処刑のようではないか…挙げ句の果てに…そちらの令嬢とダンスをしてから早々に部屋に引きこもったようで、なにを明け方までしていたのかは知りませんが、令嬢が部屋に戻ったのは、夜が明けてからと聞いていますが」
ちらりとヒュアキントス令嬢を見ると、マリアはヒッと息を詰めた。
「それに、そちらの令嬢は、うちの娘に手を上げたとも聞く…何故ゆえに?」
「それは…っ」
「娘の言動が貴女の尊厳を傷付けたのかもしれませんが、娘が言ったことに何か間違いはあったのですか?
男爵家の令嬢が侯爵家の令嬢に手を上げるほどの何かが…」
「待ってください、侯爵様、うちの娘が手をあげたと?」
割って入ってきたのはヒュアキントス男爵。
そんなことは聞いていないとばかりの慌てようだ。
「間違いはありません、私が証人です」
ベルナルドが頷いて男爵を見る。
「誰だ君は」
「隣国から留学に来ていました、ベルナルド・リコリスと申します…フェルディナンド殿下やフェンリエッタ令嬢、ヒュアキントス令嬢とも同級生として生活をさせていただいておりましたが…」
「ならば、貴族ではあるのか、爵位を言え」
高圧的に喋る男爵にベルナルドは苦笑しつつ陛下を見る。
「私に爵位はありません」
「なっ!貴族でないのに学院に入れるのか?何故だ」
騒ぐ男爵に対して、陛下や両親は驚きもせずに静かに男爵を見ている。
ベルナルドの言葉にフェンリエッタは息を飲んだ。
爵位がないその意味は。
この男はわからないのだろうか。
正面にいるフェルディナンドもわかってはいないようだし、マリアの顔はこちらからは見ることができない。
つい、隣に座るベルナルドの顔をまじまじと見てしまったフェンリエッタ。
その手を優しく取り、ベルナルドは小さく頷く。
この結婚、早まってしまったのかもしれない。
フェンリエッタは少しばかり後悔をした。
嫌そうに殿下と口にした父親は、静かにフェルディナンドを見ていた。
見るのも嫌だが嘘は許さないとの抗議なのだ。
「皆に…知らしめる為に…」
「…その必要があったのか?」
声のトーンが下がる。
こんなに怖い父をフェンリエッタは見たことがない。
「婚約は家同士の繋がりなのだから、先ずはフェンリエッタと陛下に話すのが普通ではないのか?
ましてや、あのような場で公開処刑のようではないか…挙げ句の果てに…そちらの令嬢とダンスをしてから早々に部屋に引きこもったようで、なにを明け方までしていたのかは知りませんが、令嬢が部屋に戻ったのは、夜が明けてからと聞いていますが」
ちらりとヒュアキントス令嬢を見ると、マリアはヒッと息を詰めた。
「それに、そちらの令嬢は、うちの娘に手を上げたとも聞く…何故ゆえに?」
「それは…っ」
「娘の言動が貴女の尊厳を傷付けたのかもしれませんが、娘が言ったことに何か間違いはあったのですか?
男爵家の令嬢が侯爵家の令嬢に手を上げるほどの何かが…」
「待ってください、侯爵様、うちの娘が手をあげたと?」
割って入ってきたのはヒュアキントス男爵。
そんなことは聞いていないとばかりの慌てようだ。
「間違いはありません、私が証人です」
ベルナルドが頷いて男爵を見る。
「誰だ君は」
「隣国から留学に来ていました、ベルナルド・リコリスと申します…フェルディナンド殿下やフェンリエッタ令嬢、ヒュアキントス令嬢とも同級生として生活をさせていただいておりましたが…」
「ならば、貴族ではあるのか、爵位を言え」
高圧的に喋る男爵にベルナルドは苦笑しつつ陛下を見る。
「私に爵位はありません」
「なっ!貴族でないのに学院に入れるのか?何故だ」
騒ぐ男爵に対して、陛下や両親は驚きもせずに静かに男爵を見ている。
ベルナルドの言葉にフェンリエッタは息を飲んだ。
爵位がないその意味は。
この男はわからないのだろうか。
正面にいるフェルディナンドもわかってはいないようだし、マリアの顔はこちらからは見ることができない。
つい、隣に座るベルナルドの顔をまじまじと見てしまったフェンリエッタ。
その手を優しく取り、ベルナルドは小さく頷く。
この結婚、早まってしまったのかもしれない。
フェンリエッタは少しばかり後悔をした。
27
お気に入りに追加
4,220
あなたにおすすめの小説
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
才女の婚約者であるバカ王子、調子に乗って婚約破棄を言い渡す。才女は然るべき処置を取りました。
サイコちゃん
ファンタジー
王位継承権を持つ第二王子フェニックには才女アローラという婚約者がいた。フェニックは顔も頭も悪いのに、優秀なアローラと同格のつもりだった。しかも従者に唆され、嘘の手柄まで取る。アローラはその手柄を褒め称えるが、フェニックは彼女を罵った。そして気分が良くなってるうちに婚約破棄まで言い渡してしまう。すると一週間後、フェニックは王位継承権を失った――
妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています
今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。
それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。
そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。
当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。
一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」
まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。
【本日付けで神を辞めることにした】
フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。
国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。
人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
アルファポリスに先行投稿しています。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる