上 下
19 / 51

19話

しおりを挟む
「ベルナルド様に魔力の制御を習うの、ですね?」
「フェンリエッタ、どうだろうか」
「ベルナルド様なら…」

フェンリエッタは、ベルナルドになら教えを乞うてもいいと思う。
普段の会話からも知能の高さが見て取れるベルナルド。
その教えなら楽しみだ。
ただ、ベルナルドに魔力かあるとは聞いたことがない。
学院にいる間も魔力は使っていなかったように感じたが…

「なら、最初は辛いが寝室で魔力の制御を学びながら身体を慣らして次第に動けるようになったら本格的に座学と実技をすることになるとの事だ。
フェンリエッタの体調を見ながら行ってくれるとのことだから、当邸に客人として迎えるよ?」
「はい、お父様…それと、私は王宮へは…」
「行かなくていい。何があろうとお前は私たちが守る」
「お父様」

優しく抱き締められたその腕にそっと身体を預ける。
本当に両親は優しすぎる。

「フェンリエッタちゃん!」

急にぎゅうっと反対側から抱き締められたその先にいたのは義母。

「お義母様…お帰りなさいませ?」
「倒れたって聞いて驚いたのよ!フェンリエッタちゃん、心配しないで?もしフェンリエッタちゃんに何かあれば、この家ごと破棄して外国に行って、商いをしてもいいわねぇあなた」
「そうだな、家門に執着は無いしこの屋敷を売り払って外国に行ってもいいだろう」
「そのときには私のお小遣いを投資しているお金を還して貰わなきゃ。
国家予算の4割程度ですもの、耳を揃えて還していただけるでしょ」

にこにこと恐ろしい事を言った義母をじっと見ると、綺麗な笑顔を返された。

「私だけ外国に…」
「そんなこと、許しません。
嫁ぐならわかりますが、一人では行かせませんよ?いいですね?」
「…は、はい」

この家の影の支配者は義母で、義母の決定は全てなのだ。

「ありがとうございますお義母様…」
「いいのよ、大切なフェンリエッタちゃんのためだもの…大切なお姉様の忘れ形見ですもの…フェンリエッタちゃんを悲しませる方は万死にあたいしますわ」

淑女にあるまじき言葉を使う義母は、ほほっと笑うと離れてくれた。

「フェンリエッタちゃん何か少し食べられそうかしら?食べられるなら何か少しでもお腹に入れなさい」
「はい」
「じゃあ、あなた…戻りましょうあまり長居をするとフェンリエッタちゃんに負担がかかるもの」
「フェンリエッタ、体調が悪くなったらすぐに誰かを呼びなさいいいね?」

父母の言葉に頷いたフェンリエッタはこのあと持ってきてもらった食事を口にしてから直ぐに眠りに落ちたのだった。
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

死に戻りの魔女は溺愛幼女に生まれ変わります

みおな
恋愛
「灰色の魔女め!」 私を睨みつける婚約者に、心が絶望感で塗りつぶされていきます。  聖女である妹が自分には相応しい?なら、どうして婚約解消を申し込んでくださらなかったのですか?  私だってわかっています。妹の方が優れている。妹の方が愛らしい。  だから、そうおっしゃってくだされば、婚約者の座などいつでもおりましたのに。  こんな公衆の面前で婚約破棄をされた娘など、父もきっと切り捨てるでしょう。  私は誰にも愛されていないのだから。 なら、せめて、最後くらい自分のために舞台を飾りましょう。  灰色の魔女の死という、極上の舞台をー

処理中です...