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第3章 気持ち

39話★

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「鶸…来た」

もう既に喉はカラカラで上手く言葉が出ない。
夕飯もあまり喉を通らずに、味も殆どしなかった。
何度も悩みながら身体を清めて新しい浴衣を身に纏う。
部屋で落ち着きなく歩いているのに気付いて苦笑しながら鶸の部屋にやってきた。

「あぁ、入って座りなさい。お茶でもいれよう」

鶸も風呂上がりなのかいつもと違う浴衣姿に鼓動が早くなる。

「うん…」

部屋に入ると襖を閉めて座布団が置かれた場所へ座ろうとして、背中を見せている鶸の広い背中に俺はぺたっと貼り付いた。

「鶸…待たせちゃった?」
「そんなことは無いが…舞い上がっているのは確実だな。ほら…ぬるめにしてあるから飲め」

差し出された湯飲みを受け取るも、背中から離れたくなくてそのままでいると、苦笑した鶸が湯飲みを受け取り直してから俺を背中からひっぺがした。

「うわっ!」

ぐるんっと身体が回転して、またすっぽりと鶸の腕の中に納められてしまう。
見上げる形の俺にそっと鶸から口吻けられた。

「可愛らしい事をするな…せっかく落ち着こうとしているのが台無しだ」

クスクス笑う鶸の頬に手を伸ばして甘えるように撫でる。

「鶸…いつもと違う…」
「ん?」
「色気、駄々漏れてるぞ?」
「鴇にだけだ…」

長い指で唇を摘ままれて俺は少しだけ唇を開く。
凄く恥ずかしいんだけれど、どうしたらいい?
飲むまでに至らなかったお茶を
鶸がそっと端へと避けた。

「ずるい…鶸、俺、鶸みたく生まれたかった…」
「そうか?鴇は鴇がいい…見た目だけでなく、中身もな」

鶸の喉がこくりと上下する。
喉仏すら、男の色気たっぷりだ。

「鶸…ずるい…よ」

もう、何がずるいのかすらわからない。
ほんのりと火鉢で暖かくなっている室内は行灯の明かりが頼りで、少し暗くて鶸の影が襖に浮かび上がっている。

「鶸…行灯を消して…恥ずかしい」
「何も見えなくなるぞ?」

こくりと俺が頷くと鶸は行灯の明かりを吹き消してしまう。
明かりの消えた部屋は暖をとるための火鉢の炭が赤く燃えているだけだった。
火鉢に意識を取られていると、抱き上げられて布団の上に寝かされた。

「んん…」

啄むような口吸いから舌を絡めるものへと移行しながら、いつの間にか俺の帯はほどかれていた。

「冷た…く、ない?」

腹部に触れられた指先に声を上げようとして、俺はぱちくりと瞬きをした。
他人の体温は冷たさが先に来る筈なのに。
それだけ、鶸も自分を求めてくれているのだろうと胸があたたかくなった。

「嬉しい…っあ…」

かぷりと喉に噛み付かれそのままチュッと吸い上げられた。
ちくりと走る痛みと、後から来るじわりとしたむず痒さ。
角度や場所を変えて与えられる痛みが快楽へと変わり、俺は小さく喘いだ。
首から胸、胸から腹へと鶸の愛撫の位置が変わり足を開かされると、俺は今までに感じたことがないくらいの快楽の渦の中にいた。
触れられる全てが気持ちいい。他人に触られたことなどほぼ無いのに。

「鴇…綺麗だ…」

嘘だ。
そんなことあるはずがない。
頭を振った俺の手を掴んで鶸は自分の下肢に触れさせる。
布ごしでもわかる熱の塊。

「鴇の姿に興奮して…年甲斐もなくこうなっている…すまない」

耳元で囁かれる言葉に俺は心臓を鷲掴みされた気がした。

「嬉しい…俺でこうなってくれてるの」
「鴇が好きだからだ。それに、鴇の身体も反応してくれているぞ?」

自分から手を離させると、そのままその手を俺自身へと導く。
其処はわかっていたが、熱く痛いくらいに張り詰めていた。

「1度出しておくか?」
「いい、辛いけど…早く鶸が欲しい…」

浴衣を着たままの鶸の帯を解いてから、俺は鶸の身体の下で俯せになり、少しだけ尻を上げた。
何処で何をするかくらいの知識はある。
ただ、怖くて自分で準備をすることが出来なかったのは許して欲しい。
ごくりと、鶸の喉が鳴ったような気がした。
そう言えば浴衣の中に雀から貰った軟膏が入れてあったと手をのばして探ろうとした瞬間、ありえない部分に濡れた音がした。

「ひゃっ!」

舐められて…いるっ!?
ぬるりとした感触と逃げるのを拒むように抑えられる太股。
軟らかな息を感じる気がするのに、怖くてそちらを見ることができない。

「少し力を抜きなさい…痛かったら言うんだ」

鶸の言葉にはっと頭を上げた瞬間、つぷりと入口から中に入ってくるものがある。
それはゆっくりとだが確実に体内を侵食していく。

「あっ…は…ぅ」

今までに感じたことのない感覚。
痛みは無いが気持ち悪い。

「指だ…痛くは無いだろう?」

鶸の問いかけに、俺は頷くしかできない。
口から心臓が出てしまいそうだ。
馴染むまでそのままにしてくれていた指を鶸はゆっくりと動かし始める。
入口を広げるように、中を刺激するように。
その指先がある場所に触れた瞬間、俺の上体はくずおれた。

「…っつ!!」

声にならない衝撃。
これ、前立腺?
名前しか知らない場所を鶸の指が見つけたとばかりに触る。
俺は声にならない悲鳴を上げて、逃げるように腰を浮かせたが、がっちりホールドされており少しも動けない。
指で掴んだ敷布がある細かい波を作る。

「っか…はぁ…鶸…あぁっ…」

強い衝撃に目がちかちかする。
逃げることを許さず与えられる刺激に俺はどうしていいかわからずに、声をあげるしかない。
その刺激がいつの間にか2本になり、3本になるのには時間はかからなかったらしい。

ずるりと引き抜かれた指。
長く感じられた攻め苦に解放され脱力した瞬間、そのままでいろと掛けられた声。
次の瞬間、先程まで指が入っていた部分に違う熱が押し当てられた。

「ゆっくりする、怖くはないからな?」

背中に当てられた鶸の厚い胸板。
身体に負担が少ないと、最初は俯せでと譲らなかった鶸。
グッと開かれ捻り込まれた先端は指の比ではなかった。

「あっ…あぁ…」

逃げ腰になる自分を叱咤しながら、鶸に全て任せるのもしのびないが、何をしていいかわからない。
ゆっくりと太い部分を受け入れるまでにはかなりの時間を要したはずだが、鶸は辛抱強く付き合ってくれた。

「鴇、もう少しだ…」

体格に似合う大きさの剛直。
きっと目にしていたら怖くてきっとできなかったかもしれない。

「ごめん、鶸も辛いのに…」

背中に感じるのは鶸の汗だろう。

「私を気遣わなくていい、辛いのは鴇の方だろう?」

力が抜ける度に少しずつ腰を進める鶸が、最後まで埋め込まれたのはそれから更に後。
かなりの衝撃に息も絶え絶えになっている俺の頭を鶸の大きな手が撫でてくれた。

「へへ、辛いけど…嬉しい」

これ以上は無理だと言うくらい鶸との距離が近い。
鶸を抱き締められないのが寂しいけれど、自身がはち切れそうに痛いのも確かだ。

「鶸…鶸の熱いの中にくれる?」

ちらりと振り向いた瞬間、体内で更に質量が増した気がした。

「鴇、あまり煽るな…少し動くぞ?」

鶸がゆっくりと腰を低く。
肌がぶつかる衝撃。

「んん…っ…」

次第に早くなる抽挿に俺は喘ぐしかできない。
上手く息が吸えずに意識が遠退く。
添えられた鶸の手の中に白濁を放ち、体内に飛沫を受けるとそのまま俺は意識を手放した。


☆☆☆☆☆☆☆

あけましておめでとうございます。
今年も皆様にとって良い年になりますように
お祈り申し上げます。
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