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第2章 退魔
21話
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「こちらだ」
繋いだ手をそのままに大きな屋敷の前にいた。
鶸の屋敷と同じくらいの広さだなぁと思いながら門を見上げた。
「ご自宅…ですか?」
まぁ、うん…自宅だって知ってるけどね?
とりあえず聞いとかなきゃ。
「ええ、縁側へ回ってください今お茶を出します」
通されたのは縁側。庭から回って縁台に腰掛ける。
横目に見た庭は丁寧に作られていて、俺好みの様相だった。
「いえ、お気遣いなく」
「大丈夫ですよ、すぐですから」
断りを入れたのに気にする気配はなく、話を聞きたいと言うわりにはお茶が出てくるなんて聞いたことがない。
だが、直ぐに運ばれてきたお茶には可愛らしいお茶菓子も添えてあった。
「どうぞ?」
「いただきます」
すすめられて飲み干さなければ帰れない。
そう思って俺はお茶に手をつける。
美味い玉露だ。
「で、聞きたいのだが、まずは名前」
こくりとぬるめの玉露を嚥下したのを見計らって白銀が聞いてくる。
「鴇」
「年齢は?」
「18」
「何処に住んでいる?」
「ん?それ必要?事件の内容を聞くために呼んだんじゃなくて?」
「あ、あぁ…」
ふいっと逸らされた視線。
じろりと見上げると、白銀はばつが悪そうに頬を掻いた。
「関係ない話なら、忙しいから帰る…待っている人がいるからな」
ことりと湯飲みを置いて立ち上がろうとすると、その腕を掴まれる。
「すまない…でも、君の事を知りたい…」
「知ってどうする?」
「一目惚れなんだ!」
「…ありがとう、でも俺男なんだけど」
またかよ!ただでさえ鶸の屋敷の男どもは蓮や雀にアタックする気配はないんだ。
蓮も雀も女性として申し分ない優しさ、気立て、見た目だって美人だぞ?
俺も、鴇じゃなかったらアタックしてる。
鴇ってやることがチャラく見えるから、やりたくないんだ。
「性別は…体格を見ればわかる。いや、ほかの一般はわからないと思うが…触れた腕や腰などは…胸も」
おいっ!何処見てんだ!
俺は盛大に溜め息を吐いて立ち上がった。
こんなやつは相手にしたくない。
「何処へ!」
「用がねぇなら俺はアンタと違って遊んでられねぇくらい忙しいんだ」
夜の退魔の準備や、できたら夜通しになる場合があるから夕方まで横になりたい。
化粧を落とせないから、座りながら寝るとかしかできないけど休みたいのに無駄な時間を使った。
つか、用心棒ならこいつらが神隠しを何とかできねぇのかよ!
珍しくイライラとした俺は、そのまま大股で屋敷を出ていく。
あ。茶菓子食ってくれば良かったかも。
それだけは残念だったなと呟いた。
繋いだ手をそのままに大きな屋敷の前にいた。
鶸の屋敷と同じくらいの広さだなぁと思いながら門を見上げた。
「ご自宅…ですか?」
まぁ、うん…自宅だって知ってるけどね?
とりあえず聞いとかなきゃ。
「ええ、縁側へ回ってください今お茶を出します」
通されたのは縁側。庭から回って縁台に腰掛ける。
横目に見た庭は丁寧に作られていて、俺好みの様相だった。
「いえ、お気遣いなく」
「大丈夫ですよ、すぐですから」
断りを入れたのに気にする気配はなく、話を聞きたいと言うわりにはお茶が出てくるなんて聞いたことがない。
だが、直ぐに運ばれてきたお茶には可愛らしいお茶菓子も添えてあった。
「どうぞ?」
「いただきます」
すすめられて飲み干さなければ帰れない。
そう思って俺はお茶に手をつける。
美味い玉露だ。
「で、聞きたいのだが、まずは名前」
こくりとぬるめの玉露を嚥下したのを見計らって白銀が聞いてくる。
「鴇」
「年齢は?」
「18」
「何処に住んでいる?」
「ん?それ必要?事件の内容を聞くために呼んだんじゃなくて?」
「あ、あぁ…」
ふいっと逸らされた視線。
じろりと見上げると、白銀はばつが悪そうに頬を掻いた。
「関係ない話なら、忙しいから帰る…待っている人がいるからな」
ことりと湯飲みを置いて立ち上がろうとすると、その腕を掴まれる。
「すまない…でも、君の事を知りたい…」
「知ってどうする?」
「一目惚れなんだ!」
「…ありがとう、でも俺男なんだけど」
またかよ!ただでさえ鶸の屋敷の男どもは蓮や雀にアタックする気配はないんだ。
蓮も雀も女性として申し分ない優しさ、気立て、見た目だって美人だぞ?
俺も、鴇じゃなかったらアタックしてる。
鴇ってやることがチャラく見えるから、やりたくないんだ。
「性別は…体格を見ればわかる。いや、ほかの一般はわからないと思うが…触れた腕や腰などは…胸も」
おいっ!何処見てんだ!
俺は盛大に溜め息を吐いて立ち上がった。
こんなやつは相手にしたくない。
「何処へ!」
「用がねぇなら俺はアンタと違って遊んでられねぇくらい忙しいんだ」
夜の退魔の準備や、できたら夜通しになる場合があるから夕方まで横になりたい。
化粧を落とせないから、座りながら寝るとかしかできないけど休みたいのに無駄な時間を使った。
つか、用心棒ならこいつらが神隠しを何とかできねぇのかよ!
珍しくイライラとした俺は、そのまま大股で屋敷を出ていく。
あ。茶菓子食ってくれば良かったかも。
それだけは残念だったなと呟いた。
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