上 下
33 / 52
1章

33話

しおりを挟む
「ティア様、眠れませんか?」

欠伸を噛み殺した所でキラ様に心配された。

「え、あ…はい…レイジュは、大丈夫でしょうか」

もう、3日も逢っていない。
此処へ来たときには毎日のように何かしらで来ていたのに…仕事かなにかだろうか。
それとも具合が悪いのだろうか。
考えてしまうと不安になる。

「はい、大丈夫かと。事情があっていらっしゃれないようですが、今日は預かっているものかございまして…お持ちしても?」

どうやら、食事が終わるまで待ってくれていたようだ。

「えぇ、はい…」

何だろうか。

「お待ちくださいませ」

キラ様が持ってきた瞬間、部屋の空気が変わる。
其処だけ何が季節が切り取られてやって来たようだった。
色々な花の香り。

「凄い…」

何種類もの香りが合わさって1つになっている。

「大丈夫ですか?ティア様?」
「何が…ですか?」
「通常ですと、一種類の香りの方が…」
「あぁ、大丈夫です。私は薬師ですから…全部ではありませんがかぎ分けられますよ?」

失礼しますとキラ様が触れさせてくださったのは、大きな花束。

「うわ…キラ様っ…」

腕で抱えるくらいの花束に驚きながらも、これをどうしたらいいのかと悩む。

「花瓶がありますか?」
「ございますが…」
「なら、寝室の端に置いてくださいませんか?」

ここならばずっとこの香りを嗅いでいられる。
花束の中に混じったレイジュの香りは、恐らくその花を焚き物に使っているのだろうから。
本当ならばその花だけが欲しいけれど、何の花かはわからなくてそれは言えず。

「では、寝室の端に置きますが、歩くときにはご注意くださいませ。
花瓶はいくら割っても構いませんが、ティア様がお怪我をなされば、レイジュ様が心配されますから」
「ふふ、ありがとうございます…そちら側にはなるべく行かないように致しますから…」

キラ様が離れていく。
少しあってから水の揺れる音がして、花瓶が来たのがわかった。
嬉しい。
何の花か考えるのも楽しそうだ。
そう思いながら、レイジュの心遣いに感謝した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~

槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。 最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者 R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。

拾われた後は

なか
BL
気づいたら森の中にいました。 そして拾われました。 僕と狼の人のこと。 ※完結しました その後の番外編をアップ中です

BLゲーに転生!!やったーーー!しかし......

∞輪廻∞
BL
BLゲーの悪役に転生した!!!よっしゃーーーー!!!やったーーー!! けど、、なんで、、、 ヒロイン含めてなんで攻略対象達から俺、好かれてるんだ?!? ヒロイン!! 通常ルートに戻れ!!! ちゃんとヒロインもヒロイン(?)しろーー!!! 攻略対象も! ヒロインに行っとけ!!! 俺は、観セ(ゴホッ!!ゴホッ!ゴホゴホッ!! 俺はエロのスチルを見てグフグフ言うのが好きなんだよぉーー!!!( ̄^ ̄゜) 誰かーーー!!へるぷみぃー!!! この、悪役令息 無自覚・天然!!

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

記憶喪失の君と…

R(アール)
BL
陽は湊と恋人だった。 ひねくれて誰からも愛されないような陽を湊だけが可愛いと、好きだと言ってくれた。 順風満帆な生活を送っているなか、湊が記憶喪失になり、陽のことだけを忘れてしまって…! ハッピーエンド保証

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

嫌われ者だった俺が転生したら愛されまくったんですが

夏向りん
BL
小さな頃から目つきも悪く無愛想だった篤樹(あつき)は事故に遭って転生した途端美形王子様のレンに溺愛される!

処理中です...