【BＬ】小さな恋の唄…盲目の私が恋をしたのは…

１章

26話

レイジュに後ろから抱き締められている。
レイジュの胡座の足の間に身体が挟まれ、レイジュの腕が腹の辺りで交差し私との距離が密着している。
肩口に触れるのはレイジュの顎だろうか…

「レイジュ…重くありませんか？」
「大丈夫だ」

レイジュの腕にそっと手を添えて、少しだけ上向きになる。
ほんのりと背中に伝わってくる温かさ。
他人の体温。
気持ちいい。
さらさらと触れるのはレイジュの髪だろう。

「レイジュは甘えたがりなんですね…可愛い」

弟や妹はいなかったが、動物が寄り添っているのを見た記憶がある。

「レイジュ…できれば…で、いいのですが、私にもレイジュを抱き締める権利をくださいませんか？」

誰かを抱き締めてみたいと思ったのはいつぶりだろうか。
私を抱き締める腕の力が弱くなりそっと身体を離しながら手探りでレイジュに触れる。

「レイジュ…あの…少し失礼しますね？」

体重をかけないようにしながら、レイジュの膝の間に入るようにしてぎゅっと抱きついた。
しっかりとついた筋肉。
自分より２周りは太いだろう腕。
指先で感じる顔はずっと前に覚えていたあの顔と同じ。
少し頬が削げて精悍になっているかもしれない。

「あの、どうかしましたか？触れてはいけませんでしたか」

あまり声を発しないレイジュに、何かしてしまったのかと不安になった瞬間、強い力で抱き締められた。

「ティアの体温…だな」

小さな声で呟くレイジュ。
それ以上私には何も言うことができなかった。