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1章

16話

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「ほら、身体洗って?これ、身体を洗うスポンジよ。あげるわね?」
使い方はこうよとばかりに、石鹸を泡立てて身体を洗う。
「ほら、背中をあらってあげるから、そっち向きなさいな」
ぐりんとニコルの向きを変えて背中にスポンジを滑らせてやる。
「背中を洗ったら泡を流してから入りましょ」
鞭打たれた痕の残る背中をレイモンドは気にしないようにしながらスポンジを滑らせた。
「どう?痛くない?力加減がよくわからなくてごめんなさいね?」
「大丈夫です」
「そう?ならいいわ」
「あの、僕も……レイモンド様の背中、洗いたいです……」
振り向いてきたニコル。
「あら、ありがと。じゃあお願いしようかしら」
ニコルの申し出に驚きながらも、レイモンドは背中からお湯を掛けてやる。
「前は自分で流せるかしら?」
「はい」
「じゃあ、アタシの背中もお願いね?」
レイモンドは躊躇いなくニコルに背中を見せた瞬間、ニコルの息が一瞬止まった気がした。
「あ、そうね無理しなくていいわよ……あまり綺麗なものでは無いものね」
レイモンドはそう言えばと、苦笑しながらざっと身体を洗うと立ち上がり湯に浸かりましょうと自分の身体に湯を掛けた。
「ニコル、此処は見習いだってゆっくりお風呂に入っていいのよ?ひとりが心配ならアタシと一緒はどう?アタシとならまだ大丈夫じゃないかしら?背中に傷を持つ者同士ね?」
レイモンドの言葉にニコルはハッとした。
「ふふ、若い頃に色々やっちゃってね、熱湯を浴びたのよ。随分と大きなケロイド……えーと赤い痣になってるわよね?なかなか消えなくてね。やだわ年寄りってことかしら」
クスクス笑いながらも湯船に足をつけるレイモンド。
誰も居ない浴室にはちゃぷりちゃぷりと湯が揺れる音がしていた。
「ニコル、いらっしゃいな早く温まらなきゃ」
おいでおいでと、さっきのニコルの失礼な態度を気にしていないのか、笑顔のまま手招きをしてくる。
「失礼します」
ニコルはゆっくりお湯に入ると、レイモンドにぐいっと身体を引かれてあわわっとなりレイモンドに抱きつくようになる。
「ほら、大丈夫よ溺れないわ。お湯は熱くない?熱かったら端の方はぬるいから、好きな温度を探しなさいな。熱いのが好きだけど直ぐに出ちゃうひとも、ぬるいのが好きでゆっくり浸かっているひともいるからね?」
「でも、僕なんかがいたら邪魔に……」
「ならないわよ、ニコルは騎士見習いだもの。流石に団長とかと一緒に入ることはないから遠慮しなくていいわ。此処のお風呂はアタシ達小隊の騎士だけだから、きっと次に来た時は知った顔ばかりよ?」
レイモンドがそう言う間も、ニコルは腕についた傷を恥ずかしそうに隠していた。
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