上 下
13 / 57
1章 見習い

13話

しおりを挟む
雑貨屋で固形の石鹸を購入する。
「ニコルは本当に欲しいものは無いの?アタシと同じ石鹸って……まぁいいけど、他に好きな匂いとかあったら今度は言いなさいよ?」
結局は選べずに今使っているレイモンドが予備に持っていた石鹸と同じ物を買ってもらった。
少し甘い、レイモンドに良く似合う香りは身体を洗った時にいつも良い匂いだと思って使わせて貰っていた。
「大丈夫です、ありがとうございます」
「じゃあ、軽い物で食事してから帰りましょうか、何か食べたいものがあるかしら?無ければサンドイッチとかだと軽すぎるかしらね?まぁいいわ、おすすめの店があるのよ」
レイモンドは、ゆっくり街の中を歩く。
あちらの店は店主が怖いけれど良いものがあるとか、あちらの店は珍しい物が置いてあるなど、あまり来た事のないニコルを案内してくれている。
「もしかしたら、ニコルにおつかいをお願いしなければならないときも出てくるかもしれないのよ、だからね少し案内も兼ねてね?アタシと一緒じゃ買いたいものも買えないかもしれないし、休みの時に毎回一緒に出掛けるのも気詰まりになっちゃうかもしれないから、ニコルだって慣れてきたら自由にしていいのよ?」
さぁ着いたと言うのは道に面した部分に出窓があり、どうやらそこで品物を買うように出来ていた。
「ニコル、お魚とお肉どちらが好き?あ、ごめんねこれとこっち、半分に切って別々に包んで頂戴?それと、フルーツのジュースふたつ」
ニコルは選ぶ事が得意では無い。
与えられた物に不服を言うなどして来なかったからだ。
それをレイモンドは察して、半分ずつにした。
選ぶ事ができるようになるまで、そうしてあげようと思ったのだ。ただ、過度な行為も良くは無い。
先程の文具店であのガラスペンが欲しいと意思表示をしたのは良い兆候だと思ったから、先に支払いを済ませて取り置きをしたのだ。
折角のニコルの行為に水をさされたくない。
「さあ、ニコル食べましょ。こう言うお店はお店の中で食べない分、安価なのよ。」
そう言いながら、店の店員から袋を受け取るとレイモンドは近くの生垣の縁に腰掛けた。
「流石に歩きながらじゃお行儀悪いからね、ニコル隣に座りなさい。ほら」
レイモンドはポケットからハンカチを取り出して縁に掛けるとそこに座りなさいと促した。
「え」
「ほら、早く。温かいうちに食べなきゃね?」
そう言うと、飲み物を渡す。
ニコルは慌ててハンカチが無い部分に腰掛けた。
「もう、そうよね貴方はそう言う子だったわ」
レイモンドは困ったように笑うと、今度はハンカチをたたんでからポケットに戻した。
「まずはお魚にしましょう」
袋の中からガサガサと紙に包まれたサンドイッチを取り出すと、ひとつをニコルに手渡す。
「パンの中に魚を揚げたものが挟まっているわ、普段はふたつぶんの大きさなんだけど半分にして貰ったのよ。だって少しずつ食べたいじゃない?でね、これ……紙を外したら、かぶりつくのよ?ナイフとフォークは要らないの。楽チンでしょ?」
そう言いながら、レイモンドはサンドイッチをぱくりと食べてみせるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

『ユキレラ』義妹に結婚寸前の彼氏を寝取られたど田舎者のオレが、泣きながら王都に出てきて運命を見つけたかもな話

真義あさひ
BL
尽くし男の永遠の片想い話。でも幸福。 ど田舎村出身の青年ユキレラは、結婚を翌月に控えた彼氏を義妹アデラに寝取られた。 確かにユキレラの物を何でも欲しがる妹だったが、まさかの婚約者まで奪われてはさすがに許せない。 絶縁状を叩きつけたその足でど田舎村を飛び出したユキレラは、王都を目指す。 そして夢いっぱいでやってきた王都に到着当日、酒場で安い酒を飲み過ぎて気づいたら翌朝、同じ寝台の中には裸の美少年が。 「えっ、嘘……これもしかして未成年じゃ……?」 冷や汗ダラダラでパニクっていたユキレラの前で、今まさに美少年が眠りから目覚めようとしていた。 ※「王弟カズンの冒険前夜」の番外編、「家出少年ルシウスNEXT」の続編 「異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ」のメインキャラたちの子孫が主人公です

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

なぜか第三王子と結婚することになりました

鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!? こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。 金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です ハッピーエンドにするつもり 長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

[完結]嫁に出される俺、政略結婚ですがなんかイイ感じに収まりそうです。

BBやっこ
BL
実家は商家。 3男坊の実家の手伝いもほどほど、のんべんだらりと暮らしていた。 趣味の料理、読書と交友関係も少ない。独り身を満喫していた。 そのうち、結婚するかもしれないが大した理由もないんだろうなあ。 そんなおれに両親が持ってきた結婚話。というか、政略結婚だろ?!

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

処理中です...