10 / 24
1章
10話
しおりを挟む
「もう、お腹いっぱいです」
ニコルはレイモンドと分けて全部の種類のマドレーヌを完食した。
「でも、凄く美味しかったです」
ご馳走様でしたと頭を下げたニコルの頭にレイモンドはぽんと手を乗せる。
「さぁて、次は何を買おうかしらね。ニコルがしっかり勉強するようにガラスペンと、インクを買いに行きましょ。あと、ノートかしら?」
騎士見習いが学ぶ為に使う消耗品は基本共有で、ごく稀に自分の物を持ち込む見習いもいる。
「え」
「ちゃんと聞いてるわよ。とても出来がいいんですって?見習いになった時には辛うじて名前が書けるだけだったのが、今は文字を全部正しく書けるんですって?貴族なら幼い頃から講師がつくけれど、居なかったのでしょう?まだ数日なのにね……本当に……いえ、性別なんていいわ。ニコルはそれだけ頑張り屋さんなのね」
褒められて嬉しくない人間はいない。
「いえ、早く他の皆と同じように講義が受けられる様にならないとと思って……」
「そう、ならアタシでいいなら文字とか色々と教えてあげられるけどどうかしら?やるのは食事が終わってから寝るまでの一刻くらいの間とか?もちろん夜勤務がある時は出来ないけれど」
「え、いいんですか?」
「いいわよぉ?とりあえず歩きながら話しましょうか」
レイモンドに促され立ち上がると、店員が残っていた一人分のマドレーヌを紙袋にいれて渡してくれた。
それをニコルは受け取って大切に抱き締めるのをレイモンドはにこりと笑いながら促した。
「ペンとインクも買わなきゃだけど、本屋さんに行って簡単な本も買いましょ?時間があるかしらね。もしかしたらお昼は食べ歩きになっちゃうかもしれないわね、それでもいい?」
店を出て、行きつけの文具店に向かいながらレイモンドはニコルに問い掛ける。
可愛らしい雑貨も一緒に置いてある文具店は路地の片隅にひっそりとあった。
綺麗な羽根ペンが書かれている看板。
「ほら、行きましょう?ニコルはペンはどんなのがいいかしら」
店に入ると、文具店独特のインクの匂いがするが、ニコルにはそれがインクの匂いだとはわからないでいた。
「こんにちは、ペンを見させて?」
レイモンドが声を掛けると、可愛らしい声で返事があった。
「書き味とか、握った感触とか好みがあるでしょ?持ってみたかったら店員さんに声を掛けなさい?アタシもいつものインク買わなきゃね?」
「はい」
ニコルは悩みながら店の中の文具を見始めた。
ニコルはレイモンドと分けて全部の種類のマドレーヌを完食した。
「でも、凄く美味しかったです」
ご馳走様でしたと頭を下げたニコルの頭にレイモンドはぽんと手を乗せる。
「さぁて、次は何を買おうかしらね。ニコルがしっかり勉強するようにガラスペンと、インクを買いに行きましょ。あと、ノートかしら?」
騎士見習いが学ぶ為に使う消耗品は基本共有で、ごく稀に自分の物を持ち込む見習いもいる。
「え」
「ちゃんと聞いてるわよ。とても出来がいいんですって?見習いになった時には辛うじて名前が書けるだけだったのが、今は文字を全部正しく書けるんですって?貴族なら幼い頃から講師がつくけれど、居なかったのでしょう?まだ数日なのにね……本当に……いえ、性別なんていいわ。ニコルはそれだけ頑張り屋さんなのね」
褒められて嬉しくない人間はいない。
「いえ、早く他の皆と同じように講義が受けられる様にならないとと思って……」
「そう、ならアタシでいいなら文字とか色々と教えてあげられるけどどうかしら?やるのは食事が終わってから寝るまでの一刻くらいの間とか?もちろん夜勤務がある時は出来ないけれど」
「え、いいんですか?」
「いいわよぉ?とりあえず歩きながら話しましょうか」
レイモンドに促され立ち上がると、店員が残っていた一人分のマドレーヌを紙袋にいれて渡してくれた。
それをニコルは受け取って大切に抱き締めるのをレイモンドはにこりと笑いながら促した。
「ペンとインクも買わなきゃだけど、本屋さんに行って簡単な本も買いましょ?時間があるかしらね。もしかしたらお昼は食べ歩きになっちゃうかもしれないわね、それでもいい?」
店を出て、行きつけの文具店に向かいながらレイモンドはニコルに問い掛ける。
可愛らしい雑貨も一緒に置いてある文具店は路地の片隅にひっそりとあった。
綺麗な羽根ペンが書かれている看板。
「ほら、行きましょう?ニコルはペンはどんなのがいいかしら」
店に入ると、文具店独特のインクの匂いがするが、ニコルにはそれがインクの匂いだとはわからないでいた。
「こんにちは、ペンを見させて?」
レイモンドが声を掛けると、可愛らしい声で返事があった。
「書き味とか、握った感触とか好みがあるでしょ?持ってみたかったら店員さんに声を掛けなさい?アタシもいつものインク買わなきゃね?」
「はい」
ニコルは悩みながら店の中の文具を見始めた。
78
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
断罪された大聖女は死に戻り地味に生きていきたい
花音月雫
ファンタジー
幼い頃に大聖女に憧れたアイラ。でも大聖女どころか聖女にもなれずその後の人生も全て上手くいかず気がつくと婚約者の王太子と幼馴染に断罪されていた!天使と交渉し時が戻ったアイラは家族と自分が幸せになる為地味に生きていこうと決心するが......。何故か周りがアイラをほっといてくれない⁉︎そして次から次へと事件に巻き込まれて......。地味に目立たなく生きて行きたいのにどんどん遠ざかる⁉︎執着系溺愛ストーリー。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
異世界勇者召喚失敗か?
どら焼き
ファンタジー
失敗国王✕ダメ王子✕クソ勇者
とてつもない化学反応がすると、危険が危険だとわかるから退避だ!
大縁 増田(おおべ ますた)は、実は超有名の一族になっていないといけないはずの者だった。
今から1500年前に、大妖怪、大邪霊、大悪魔を朝廷(政府)の帝(みかど)の拒否できない命令によって、誰もやりたがらない討伐と封印の仕事をすることになった、大縁(おおべ)家。
この命令のを完遂した暁には、千五百年の宰相の地位就任と千五百年の日本の領地からの税の半分(つまり国家予算の半分)を千五百年与えるという約束をしたが、命がらがらなんとか先祖が封印した後は、大っぴらに賄賂を出さなかったという、聞けば無茶苦茶な理由で僻地へと強制勤務にさせられた大縁(おおべ)家。
なぜ?千五百年の国家予算の半分なんて話しになったのか?
それは、妖怪封印によって一族はエネルギーをずっと無理矢理出すことになり、やらなくてもいい不幸の生活をさせられる、補填、保障であった。
そして長き時間が経ち、ついに封印が解ける時がやって来た。
逃げる?いやお断りだね。
今の世界とそっくりだが、違う世界かもしれない地球で起こる物語。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる