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1章 見習い

5話

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「さて、まずは靴を買いましょ。今のじゃ足先痛いでしょ?」
レイモンドはニコルの手を引きながら靴屋に入る。
「おはようございます」
レイモンドが声を掛けると、おーうと、間伸びした返事が返ってくる。
「ごめんねぇ、アタシの弟分なのよ。ちょっと足を測って何足か見繕って欲しいの。支払いはアタシするからね?」
店の奥からのっそりと出てきたのは白髪の老人だった。
「おやおや、じゃあそっちの子がそうかい。先ずは足のサイズを測るからこっちにおいで」
店主に招かれニコルはおずおずと椅子に座った。
てきぱきと靴を脱がせ、店主はニコルの足のサイズを測り、いくつかの革靴を出してくる。
「お前さん、これからぐんと背が伸びるな。年齢の割には足が大きい。そこの小隊長よりも大きくなるかもなぁ?」
「あら、アタシだって低くはないけどねぇ?」
「まぁ、可能性の話だからな、伸びない奴もいるが」
「ま、健康ならいいわよ!取り敢えず、三足かしら」
レイモンドが選び始めたのは、通常履くためのハーフブーツとサンダル等、日常で使う靴。
「ニコル、いらっしゃい。これが今の貴方のサイズだから、この大きさで好きな色とデザインのを選びなさい。材質とかも好きなものをね?」
「でも、レイモンド様……おいくらかわからなくて」
選んでしまっていいものかと、ニコルは悩んでいたようでそんな可愛らしさにレイモンドは破顔した。
「金額なんて気にしなくていいのよ、物はいいけど安いお店なのほらほら、履いてる靴は持って帰る?せっかくなら新しい靴を慣らさない?でも、靴擦れしちゃうかしら」
「足型を入れてのばしてやるから大丈夫だろう、さてどれにするかの」
店主も混ざりあれこれ見始めるレイモンドを止めようとあたふたニコルはしたが、これもいいあれもと言いながら何とか三足に絞り購入をした。
「ありがとうございます」
店を出るとニコルは頭を下げる。
手には三足分の靴が入った箱を持っていた。
「大丈夫よ、本当に届けて貰わなくていいの?」
「大丈夫です」
「じゃあ、次は洋服よ行きましょ?服の方が選ぶものが多いわよ」
次はどのお店に行こうかしらとレイモンドはウキウキしながらも、離れてしまわないようにニコルの手を掴む。
「レイモンド様!」
「何?ほら、はぐれちゃ駄目よ?それとも何か食べる?」
「いえ、でも……」
「中古の服屋だって言ったでしょ?本当に安いから……あ、そうだ、この銀貨を五枚渡すから買えるだけ買ってきなさい、そうすればここのお店の安さがわかるわ」
レイモンドはニコルに銀貨を渡して行ってらっしゃいと店に送り出した。
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