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隻眼の俺と世界を救った錬金術師の目覚め

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「ここに何かいなかった! 人、ううん、人間に似たやつら」



 俺は両腕を掴まれてがくがくと揺さぶられる。



「い、いたよ。黒くて手招きする奴らが一杯」



「黒い? ほんとに? 人じゃなくて?」



「ああ、なあシュラク」



「いたぜ、もやもやして地上まで漏れ出して襲ってたやつら」



「ああ、うそ、まさか、あの子たち私を起こそうとして? 肉体は年月には耐えきれなかったけど、魂という概念だけは取り残されてしまったのね」



「お、おれは、最近すぐ筋肉痛、になる、歳でな、離して、もらってもいいか」



 アトラススーツは無理やり能力を伸ばしているから、戦闘後は結構早めに筋肉痛が来る。俺がもし高校生として異世界に来ていれば、こんな惨いことにはならなかっただろう。



 だが、俺の腕は離さずに遠野はがくがくと揺さぶり続ける。



「それで、その子たちは、どうしたの!」



「ど、どうぢたってっで、俺も必死だったし——」



『彼らは生命賛歌という名のレイラインに乗り、スープとして色々な魂と溶け合いクラウド上に保管され、魂に蓄積されたデータをデフラグ処理とクリーンアップにより整理されて、新たな生命としての準備期間に入る流れです』



「か、帰るべきところに、送れたってさ」



 振動にも負けずに遠野に伝えると、ゆっくりとその場にへたり込んだ。



「良かった——勝手に作られて、勝手に迷わされて、概念が腐敗してきてたんだね、でも私を——助けようと、この人たちを、呼んでくれたんだね」



 目に涙を浮かべるが遠野は泣くことなく、ぐっと我慢しているようだ。



「奴らは何だったんだ」



「あれは、私たちが作り出したホムンクルス、多分、あなた達が出会ったのはホムンクルスの肉体が滅びてなお、ここにに定着した腐敗した魂——そう、帰れたんだね。本当に良かった」



「なあ義贋総司郎、何言ってるか分かるか?」



 シュラクが小さく耳打ちしてくる。正直俺もよく分からないので、軽く肩をすくめるだけにしておいた。



「——私、外に出たいわ」



 彼女は足に力を入れて立ち上がろうとするが、上手く力が入らないようでその場にまた座り込む。



「あ、あれ——筋力が低下してるの、ちょっと調整が甘すぎじゃない?」



 何度も無理やり立とうとするので、俺は背中を向けてしゃがみこむ。



「乗って」



「別にいい」



 年頃だから恥ずかしいのか、遠野はプイっと顔をそむける。



「そうか、まあどのみち、出口作ってからの方が良いか」



 俺はビルの真ん中まで歩き、右手を空へ伸ばす。すると連動したようにアタッシュケース化していたアトラスが分解され、吸い付くように次々とパーツが身体に付着していく。



「な、何あれ」



「義贋総司郎は変な奴だよなあ」



 おいおい聞こえてるぞ、若人たちよ。



「この先は何処だ?」



『地上は丁度、日時計があった広場です』



「憩いの場がなくなるのは申し訳ないが、歴史的建造物発見ってことで目を瞑ってほしい」
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