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⑨もう一人の転生者-2-
しおりを挟むマイアが凛子として生きていた記憶を思い出したのは六歳の頃だった。
『こういう場合、ヒロインか悪役令嬢・・・モブであっても貴族令嬢として転生するのがセオリーでしょ?!どうせならアストライアーに生まれ変わりたかったな~』
どこかで見た事があるような、大勢の中にいれば埋もれていそうな──・・・鏡に映る自分の平凡な顔を見てショックを受けたマイアが呟く。
攻略対象者の婚約者であるエレクトラ、アルティミシア、キャロラインは良家のお嬢様という事もあるのか、それぞれタイプは異なるがカサンドラよりも格上の美人だった。
そんな三人が足元にも及ばない美形がアストライアーである。
甄夫人とギュルバハルをモデルにしたと公式設定資料集に書いていただけあって、アストライアーは超美人なだけではなく、後宮の女達だけではなく民衆にも慕われ尊敬されている。正に、品行方正を絵に描いたような女性だった。
その代償と言えばいいのか分からないが、二人がモデルだからなのか、いや、彼女達がモデルであるからこそ、ヒロインの自作自演に陥れられたアストライアーの人生は、悪役令嬢と位置付けられている三人と比べて悲劇そのものとしか言いようがなかったのだ。
(私がアストライアーに生まれ変わっていたら自分の身を護る為だけにNAISEIでミントグリーン王国を富ませて、その後は採掘したウランやプルトニウムで製造した核兵器でロードライト帝国を抑えつけたのにな~・・・)
と言いたいところだったが、考えてみたら自分の前世はエステティシャン。
ウランの採掘方法やプルトニウムといった放射性物質の製造方法、核兵器をどうやって作るのかなど知らなくて当然の人間であった。
ならば戦車を製造すればいいじゃない!とも思ったのだが、仮に戦車の作り方を知っていたとしても、作れたとしても、前世で大型特殊免許を取得していないので戦車の操縦方法を知らないのだ。
※戦車を動かすには、大型特殊免許(カタピラに限る)が必要。自衛隊の教習所以外では取得できない
(・・・・・・私はアストライアーじゃないから、そんな事を考えていても意味がないけどさ。それでも考えてしまうのよね~)
高校時代にプレイしていたゲームの世界では名前どころか立ち絵もなかった農家の娘として転生したという事実にショックを受けた凛子ことマイアであったが、自分はラノベのように神様に会っていないので転生先を選べなかったのは仕方がない。
(さてと・・・)
「今日も頑張って働きますか!」
日の出と共に起きて田畑を耕し、日の出と共に眠る
窓を開けると部屋の中に流れ込んでくる新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込むと、凛子はマイアとして生きて行く事を決意する。
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