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②カフェ・四つ葉のクローバー(前編)
しおりを挟む南の大陸にある、とある帝国の辺境の地にあるカフェ・四つ葉のクローバーでは、今日も朝から獣人族やドワーフ、魔族のみならず店の存在を知った人間の客で賑わい注文が飛び交っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
緑の匂いを含んだ爽やかな風が吹く朝
「ビルデちゃん、ハニーバターのモーニングとチーズトーストのモーニングを一つずつ」
「俺はホットサンドのモーニング一つとベーコンエッグのモーニングを二つ」
「私はスクランブルエッグのモーニングをお願いします」
「はい。ご注文、承りました」
客の注文を受けたブリュンビルデがそう答えると、カフェのマスターにして料理人であるグリーズに伝える。
待つこと暫く
「お待たせしました。ハニーバターのモーニングとチーズトーストのモーニング、ホットサンドのモーニングとベーコンエッグのモーニング二つ、スクランブルエッグのモーニングです」
ブリュンビルデとカフェのママであるノルンが客のテーブルに料理を持ってくる。
「柔らかい白パンと、人間の国のお貴族様でさえ滅多に口にできない蜂蜜をふんだんに使うなんて贅沢なトーストだな」
「とろけるチーズのコクときつね色に焼けた白いパンの香ばしさ・・・。この店の飯は本当に美味ぇな」
王侯貴族や金持ちしか口にできない蜂蜜や砂糖をかけたパンやコーヒーを口にしている兵士達、冒険者として活動している竜人族や人狼族達がグリーズの作った料理に舌鼓を打つ。
「グリーズ、ベーコンとチーズのホットサンドと豚ロースのカツサンド・・・それから牛フィレのカツサンドとやらをそれぞれ五つずつ作ってくれ。持ち帰りでな」
「はいよ」
カウンター席に座っている一人の傭兵が注文した料理を聞いたグリーズが慣れた手つきで作っていく。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
太陽の日差しが強くなる昼時
「お嬢・・・ではなくビルデさん、注文が決まりました。あた、私はオムライスとアイスミルクティー、デザートにストロベリーパフェだ・・・です」
「私はチキングラタンとアイスコーヒー、デザートはフルーツパフェでお願いします」
「私にはハンバーグランチで付け合せはライス、それとウインナーコーヒー。彼女にはホットケーキとカフェオレを頼むよ」
「ワシは牛ロースのカツレツランチで付け合せはパン、それとホットコーヒー」
「俺は豚のヒレカツを乗せたカレーライスとホットコーヒーね」
「私はたまごサンドとカフェラテ」
「あたしはミックスサンドとレモンティー」
「はい。ご注文、承りました」
客の注文を受けたブリュンビルデがグリーズに伝える。
時間にして十分くらいであろうか。
「お待たせしました。オムライスとアイスミルクティー、チキングラタンとアイスコーヒーです。デザートのストロベリーパグリーズフルーツパフェは食後にお持ちいたします」
「ハンバーグランチとウインナーコーヒー、ホットケーキとカフェオレ、牛ロースのカツレツランチとホットコーヒー、豚のヒレカツカレーとホットコーヒーです」
「たまごサンドとカフェラテ、ミックスサンドとレモンティーです」
注文した料理をブリュンビルデが人間の客達が座るテーブルへ、ブリュンビルデと共に働いているエレーネが剣士・槍使い・戦士・黒魔導師・白魔導師の冒険者パーティーが座るテーブルグリーズそれぞれ運んで行く。
「トマトケチャップで味付けしたチキンライスだけでも美味しいけど、ライスを巻いている薄い卵と一緒に食べると違う味わいが楽しめるのね」
「牛の肉って固いものだと思っていたけど、ちゃんと下拵えをするだけではなくミンチとやらにして焼いてしまえばこんなにも柔らかくなるんだな」
「白いソースのコクがチキンとマカロニに絡まって・・・熱いけど美味しいわ」
「肉を油で揚げるなんて贅沢だな~」
「豚肉を油で揚げるから脂っこいと思っていたけど・・・これはいける!帝都では高級と言われている酒屋や宿屋で出している料理なんてここのと比べたら月とすっぽんだな」
ギルドの受付をしている職員、高ランクの冒険者パーティー達、いい家のお嬢様と思しき魔族の少女達がそれぞれ幸せそうな笑顔を浮かべながら料理を口に運ぶ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
茜色に染まった空が夜の帳に覆われようとしている頃
「ビルデちゃん、デミグラスソースハンバーグと海老ドリアとオムライスとお子様プレート。デザートはプリンアラモードをお願いします」
「ブリュンビルデ、注文が決まったよ。俺はナポリタンとカプチーノ」
「俺はチキンソテーとシーザーサラダだ」
「私は・・・カルボナーラとトマトサラダね」
「俺はボロネーゼとバニラアイス」
「はい。ご注文、承りました」
客の注文を受けたブリュンビルデが笑顔でそう答えてから約十分後
「お待たせしました。デミグラスソースハンバーグと海老ドリアとオムライスとお子様プレートです。デザートのプリンアラモードは食後にお持ちいたします」
「ナポリタンとカプチーノ、チキンソテーとシーザーサラダです」
「カルボナーラとトマトサラダ、ボロネーゼです。バニラアイスは食後にお持ちいたします」
ブリュンビルデが家族連れの客が座るテーブルに、エレーネが背は低いが筋骨隆々のドワーフ達、ノルンが有翼人の青年が座るテーブルに料理を運ぶ。
「目玉焼きが乗っているハンバーグ、エビフライ、ケチャップライス、フライドポテト、コーンサラダ、プリン・・・何かお姫様になった気分なの~」
「皮がパリッと焼けていて香ばしいのに肉は柔らかいだけではなく凄くジューシー。塩と胡椒の味が口の中に広がっていく・・・」
「前に食べたミートソースも美味いと思ったけど、俺は肉を感じるボロネーゼの方が好みだな」
エビフライを食べた七つか八つくらいの子供、鍛冶ギルドを束ねるドワーフのギルドマスター、町の外れで自作のポーションを販売している有翼人の青年が、それぞれ自分が注文した料理を堪能する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「グリーズさん、ノルンさん、店の片づけが終わりました」
「エレーネちゃん、ご苦労様」
「明日も早いから今日はもう休んでいいわよ」
閉店時間となり閑散とした店内では、仕事を終えたエレーネが自分の部屋へと戻る。
「ビルデちゃんとエレーネちゃんが来てからというもの、店が繁盛するようになったし、何より我が家も賑やかになったよ」
「看板娘のビルデちゃん目当てのお客さんが多いからね~」
「お客様達はマスターが作る美味しい料理が目当てであって、私が目当てだなんてありえないですよ」
椅子に腰を下ろしノルンが淹れた紅茶を飲んでいるブリュンビルデが笑みを浮かべながら、グリーズが口にした【自分が目当て】という部分を否定する。
「でも、うちの人が作っている料理は全部ビルデちゃんが教えてくれたんだから、強ち料理目当てというのも当たらずも遠からずかも知れないね~」
無能であるとはいえ、王太子を男爵令嬢に奪われ、挙句の果てに婚約破棄された。
そんな自分を『公爵家の恥晒し』という理由で、父親は娘を身一つで勘当しただけではなく生国でも母の母国でもない他国の修道院に送ろうとしたのだが、その途中で崖から落ちたというのに命を失わずに済んだブリュンビルデとエレーネを受け入れてくれたのがグリーズ夫妻である。
(二人に拾われて本当に良かった──・・・)
ブリュンビルデは過去を振り返る。
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