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8話
しおりを挟むセレスティが薔薇の修道院に入って三年の月日が流れた。
修道院での生活はセレスティの魔法の威力と効能を上げるだけではなく、食糧確保が目的のサバイバルは暗器の使い手としても優秀でありながら優美で気品溢れる清楚な美少女へと育てた。
傍から見れば聖女に選ばれてもおかしくないくらいである。
・・・・・・・・・・・・そう、見た目だけは。
よっしゃーーーっ!!!
「次の新作は、筋骨隆々な大男の皇帝が征服した他国の美形王子を衆人環視の前で凌辱してメス堕ちさせるんじゃーーーっ!!!」
・・・・・・・・・・・・中身はゴリゴリの腐女子に進化していた。
「シスター・セレスティ、素敵です♡」
「副修道院長(マザー)・アリーゼはどのような新作をお考えなのでしょうか?」
ここ三年の間に副修道院長になったアリーゼに新米シスターの一人が尋ねる。
「そうですわね・・・。程よく鍛えられた提督を徹底的に調教してメス堕ち。その後は女装・・・シースルーのベビードールがいいかしら?それともウェディングドレスをベースにしたナイトウェアがいいかしら?」
調教して今やセックスの事しか考えられなくなってしまった変態雌奴隷な提督を女装させて地下のオークション会場に出品!
その後は公開自慰する提督を観客達が囃し立てたり、輪姦するんじゃい!!!
「人前で自慰・・・そこまで考えが及びせんでしたわ!」
「流石はマザー・アリーゼ!」
こんな感じで薔薇の修道院の───男同士の恋愛物語をこよなく愛する者だけが集うお茶会ならぬ集会の場が盛り上がっている頃
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(あのアホは何も分かっておらぬ・・・)
エメラルドウッド王国の国王であるフランツは悩んでいた。
あのアホこと唯一の息子であるフリッツ(18)の妃に迎えるべき年頃の令嬢が軒並み居ないのだ。
原因は分かっている。
自分の唯一の息子であるフリッツが、乳母であるドロテア(45)を愛妾として迎えているだけではなく彼女に入れ込んでいるからだ。
現国王のたった一人の息子という理由だけで王太子になったフリッツは、その地位に胡坐をかいて己を研鑽しないが王族の特権だけは享受する。
それがフリッツという男だった。
『当時の陛下は公爵令嬢であったアリーゼ様と婚約解消をして、真実の愛とやらで結ばれている年嵩の男爵令嬢のハンナ殿を選ばれ彼女を王妃に迎えた』
『真実の愛で結ばれているお二人の御子ですから、フリッツ様もドロテア様と共にあればどのような試練も障害も乗り越えられるのでは?』
『血筋・教養・語学・魔力・立ち居振る舞い・淑徳に美貌・・・未来の王妃に相応しい全てを兼ね備えたアリーゼ様ではなく、屈託のない笑みと自由奔放な姿が心を癒すという理由だけでハンナ妃を選んだ陛下とフリッツ様は(陛下の特徴を何一つ受け継いでおられない)陛下とそっくりですよ』
『残念ですが私の娘はハンナ妃のように屈託なく笑う事も、乳母であるドロテア殿のような年上でもありませんので、フリッツ様の妃になるのは無理でございます』
フリッツの後見になりそうな有力な高位貴族は自分の娘を釣り合いの取れる家柄の令息と婚約を結んでいるものだから、王家が横槍を入れて婚約を白紙にしろと口出し出来ない。
中には
『ドロテア殿は城を贈られるくらいの寵愛をフリッツ様から受けております。そんなドロテア殿は王太子妃のように振る舞っているとか・・・。民達が夢中になっている真実の愛で結ばれているお二人の間に割り入るなど私には出来ません!!』
『お二人の邪魔をして民達から悪女と罵られるのであれば修道女として生きる道を選びますわ!!』
要するに王家から打診した高位貴族の令嬢達は、王太子としての義務を果たさないフリッツの元に嫁ぐのは嫌だと婉曲的に拒否しているだけではなく、本当に修道院に入ったのだ。
「何故・・・斯様な事態に陥ってしまったのであろうな・・・?」
過去に思いを馳せるかのように、フランツはアリーゼと婚約解消した当時の事を思い出す。
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