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㊲新メニューの開発-6-
しおりを挟む料理勝負当日
ナイジェル家の食堂のテーブルに着いているのは六人。
当主であるオプシディアンと彼の妻であるスカーレット、二人の間に産まれた長男のパトリックと長女のアイリーン、そしてラクシャーサとリューヴェリオンだ。
ちなみにワタガシも今回の審査員の一人として参加しており、食堂の床の上で大人しくしていたりする。
てっきり、ガンツが買収した者達が参加しているのかと思っていた一柱と二人は心の中で拍子抜け状態だ。
「お兄さま、今日はシモジモの人間が料理を作るのだとか。シモジモってどういう意味ですか?」
自分の隣に座っているにアイリーンが話しかける。
「シモジモ・・・下々というのは身分や地位が低い・・・一言で言えば平民の事だよ、アイリーン」
兄の言葉にアイリーンが感心した声を上げる。
「ねぇ、お兄さま。平民の女冒険者が作る料理ってどんなものでしょうか?」
楽しみですわ~
「僕もだよ」
平民がどのような料理を食べているのかを教育係から聞いてはいるものの、実際に口にした事がないアイリーンとパトリックは今日という日を楽しみにしていたのには理由がある。
二人はオプシディアンの子供───つまり貴族子女だから平民と比べたら食生活は豊かだが、香辛料で味付けをしている肉料理と魚料理を食べるという行為は、勉強よりも辛いという事実を抱えてもいるのだ。
それらの料理の味付けが子供にとって刺激が強いだけではなく濃すぎるのか、パトリックとアイリーンは砂糖を使い過ぎているデザートを好むようになってしまった。
二人の偏食を治そうと両親は肉と魚と野菜を使った料理を食べさせようとするのだが、味付けが濃すぎる料理は子供にとって苦痛以外の何者でもなく、デザートへと逃げる。
結果、二人は医者に診せたら『これ以上太ったら命の危険に関わる』とまで言われてしまうくらいの身体になってしまっていた。
父親は細マッチョなイケメン、母親はスレンダーな美女だというのに、二人の血を引いている子供達がメタボ体型だという事実は、ナイジェル家の謎とまで言われているくらいだ。
食堂で兄妹が会話をしている頃
「儂に負けると分かっていながら逃げない度胸だけは褒めてやるとしよう」
ナイジェル伯爵の邸宅の厨房に姿を見せたシェリアザードをガンツが見下した態度で迎えるのだが、彼女は脂肪の塊を無視して調理に取り掛かる。
(流石、伯爵家のお抱え料理人・・・)
ガンツの性格はさておき彼の包丁捌きは、プロの料理人でないシェリアザードにしてみれば見事としか言いようがなかった。
だが、シェリアザードはこの勝負に勝たなくてはいけないので、彼女もまた全力を尽くす──・・・。
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