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episode U . ジュンの場合 / ビデオ・スレイブ
June 009 . Laboratory
しおりを挟む青空に赤色や緑色の風船が飛んで、
観覧車のゴンドラの中で
ジュンが乱れ泣いている。
帰りたい。
それほど彼は、その思いに心を挫がれていたのである。
いつになったら帰れるの、と思いながら、
「アァぁぁ…おぉぉ…ッ!」
と喘ぐ
ジュンが特に感じていることは、バイブレーターから与えられる刺激の形態が、数珠のようなヨコ型に変わってきたことである。
「アァぁぁン~ッ…」
高性能の玩具は挿入さえしておけば、勝手に肉を抉り性感を高ぶらせてくれるシロモノだが、
ジュンは手を動かした。
ジュンの手は神経質だったり、思切った乱暴だったり、
様々な角度でバイブレーターを操った。
「アァぁぁ…きもち、いぃよゥ…、んアアアア」
と、いつもよりも大きな声で喘ぐのは、寂しいからだ。
人恋しさを伴う性慾が猛烈に動き
「アァぁぁ、アアんン」
こう喘ぎながら熱烈な感情の発作にかられて、
「アーッ、アーッ、もう許して!」
と、射精した。
これでもう、三度目の射精だ。
其なのに…、其なのに…、
そしてジュン不意にこらえきれなくなって、片手で顔を隠すと、からだじゅうをゆすぶるような、声を立てぬ悶え方で、激しく、感じ続けた。
「もう、許して、許して…」
謂れのない煩悶に囚われているジュンと、
青空を交互に映テレビ。
まるで、その影が光の中で明滅する様に淡々と映し出される。洞窟の影のように背後で明滅するジュンの影。
調教師・冬眠鼠はゴンドラから降ろされたジュンを抱擁し、頭を撫で、
「何はともあれ第一に自分で自分を恥じぬことが肝心です、これがそもそも、いっさいのもとですから」
と言い聞かせたが、
その場面はカットされていた。
そして、ヴィデオは自動的に巻き戻される。
ジュンの苦痛も悲哀も快楽も幸福も、
ヴィデオの中では無限ループのように繰り返す。
開け放たれた焦げ茶色の扉には、プラスチックのプレートがかけられている。
プレートには、マジックインキで
Laboratory(実験室)
と、書かれている。
実験室と書かれた部屋。
白いリノリウムの床、白い壁紙。
アンティークの透かし彫りが施されたガラスが嵌められた木材の窓枠だけが、妙に暖かみがある。
部屋の中央部に、
レトロなブラウン管のテレビが三台、
積み上げられている。
それぞれ、電子銃から打ち出された電子ビームが、偏向ヨークによって、曲げられ、
蛍光面にあたり、輝いている。
積み上げられた、テレビの傍らの床に一人の性奴隷がいる。slave 刻印入りの首輪に繋がれた鎖のせいで、自分の意思でここから退室することが出来ぬ。
白い体に白いレザーのハーネス、目隠しをされ、開口機で唇を大きなOの字で強制的に固定されている。
これは、一体、誰なのだろう。
調教師・冬眠鼠が
「マルセル・デュシャンが美術館に便器を置いたように、僕は君をここに置いていくよ」
さも、いとおしげに囁いた。
性奴隷の頬には再び激しい動乱の色が現われた。
唇の両隅がぴくぴくと震える。
「ぱっと燃えて、消えて、それからすっかり以前のからだになって、帰って来るがいい。僕はおまえを待っているぞ」
満月の日は、館は夜通し開かれている。
館内では、大勢の旦那さまが性の遊びに興じたり、寛いだり、各々の好きなスタイルで朝を待つ。
そのうち、われを忘れてしまうほど感じやすい、青白い顔の空想家の
ーーーの匂いを嗅ぎつけたら、
ここへ、やって来るだろう。
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