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第四章
神様通信
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太陽が海の向こう側へ沈むと、辺りはすっかり暗くなる。電灯一つ無い家の中は、外と同様に暮れていった。
ホセは居間の天井に、シィカスの枝に灯すランタンをかけ、部屋の灯りを確保する。
電話の後、俺達は情報交換を行い、ヴィンス救出までのお互いのスタンスを話し合った。そこで決めたのは、俺が実行役を担い、ホセやノラ、サイチは最後まで政府に捕捉されないようにする、ということだ。
これにノラは少々の抵抗を示したが、俺とホセの二人から説得されて、合意に至った。
俺達はその後、ホセの庭で採れた野菜と、捌いた鶏でつくられた料理を食べた。とびきり新鮮なそれらはおいしかったが、こうして電気のない生活を少しだけ体験すると、どれだけ不便になるかが身に沁みてわかる。
そうして夜の七時ちょうどに、サイチがやって来た。
玄関の戸が叩かれる音に俺が立ち上がると、ホセは天井に吊るしているものではない、もう一つのランタンを灯して、俺に手渡してくれた。
利便性は電気とは比べものにならないが、全方位に広がる、優しい灯りは嫌いではないと思う。
玄関ヘ向かい、戸を開く。そこには予想通り、サイチが立っていた。布に包まれた六〇立方センチメートル程度の、箱のようなものを抱えている。彼は俺を見て、いつも通り不機嫌そうに眉を寄せる。
サイチと会う時、彼はいつも椅子に座っていたからよくわからなかったが、こうして横に立つと小柄なことがわかった。俺よりも、頭一つ分以上小さい。
「何であんたがまたミミサキ市にいて、ホセさんと一緒に何を企んでるのか、ちゃんと説明してもらうからな」
どこか恨みがましい様子で言われ、俺は笑った。
「わかっている。それより、サイチはホセさんに頭が上がらないんだな」
「俺が、あの変人の爺さんに?」
「そんな言い方していいのか」
「うるさいな」
彼を家の中へと促し、居間へと向かいながら下らない会話をする。電気が一切ないという非日常感溢れる家の中、信頼できる仲間が増えていくような感覚が何だかくすぐったい。
「シマ来たか、急に呼び出して悪かったな」
ホセと対面すると、サイチはコロッと態度を変えた。
「いえ全然、大丈夫です。それでこれ、ご要望の」
彼は抱えていた箱のようなものを床の上に下ろす。布を取り払うと、幾本ものケーブルが刺さった、無骨な機械の塊が姿を現した。本体の上には、古びたヘッドフォンが乗っている。
「ああ、懐かしいな。んじゃあ早速神様通信の傍受をはじめるか」
「この家は電気がありませんが、ここでできるんですか?」
とても電気がなくて動く代物には見えなくて、俺は問う。
「いや、場所を移さなきゃならんな。ツキは俺と来てくれ。サクナはシマに説明と、残しとった夕飯出してやってくれるか」
ホセがそう指示を出すと、サイチは部屋の中を見回し、暗がりに紛れるようにひっそり座っていたノラを見つけて、また眉を寄せていた。口には出していないが、おそらく「何故お前までここに」という気持ちだろう。
一方ノラの方も、どこか困惑したような面持ちでサイチを見ている。
「あの、ホセさん。サイチさんまで巻き込んで大丈夫でしょうか……サイチさんは、何も知らないのに」
「何だって?」
サイチは「何も知らない」というワードに反応して食ってかかろうとする。一方、ホセは鷹揚に頷いた。
「シマは俺が見込んだ男よ。こう見えて芯が通っとる。安心しな」
こう見えて、というのは褒めているのかけなしているのか微妙なところではあるが、サイチは嬉しかったようだ。ぐっと黙り、ランタンの灯りの下でもわかるほどに、顔を赤くしていた。
俺とホセが車で来たのは、ホセの家がある森の端にぽつんと佇む商店。
商店自体は、まだ七時を回った所だというのに、すでに営業を終了していた。けれどホセの用があったのは商店ではなく、その横に設置された自動販売機の方だった。
彼は機械を抱えて車を降りると、地面の上に座り込んだ。
自動販売機の電源をとっているコンセントの空き口に、機械のプラグを差し込む。すると、側面についた計器の針が動きはじめた。
「大きめの電気製品の近くの方が、混ざるノイズも大きいんだ」
彼はそう説明をしながら、繋がっているヘッドフォンを装着し、機械についている、いくつものダイヤルを調整し始める。
その様子を見ながら、俺はランタンをホセの横に置き、自動販売機の横に置かれた古びたベンチに腰を下ろす。
今日は比較的暖かかったとはいえ、夜になるとさすがに冷え込む。コートの襟を引き寄せたが、都内の張り詰めたような寒さとは、質が違うなと感じていた。
俺にはヘッドフォンでホセが聞いている音は聞こえないので、ただ待つしか無い。
空を見上げる。濃紺の夜空に、降ってきそうな程の明るい星星が、無数に瞬いている。そのとき俺は不意に、シンさんと張り込みをして、男を逮捕した日のことを思い出した。あの時見ていた夜空はたしかに美しかった。けれど、ミミサキ市で見る星空は、デンメラで見るものとは、見える星の数が格段に違う。
デンメラの星空しか知らなければ、夜空とはこういうものだと思う。だが、ミミサキ市の星空を知ってしまえば、デンメラの星空には、見えていない星が存在することがわかるのだ。まるでこの世界のようだと、そう思った。
そうして一時間半ほどが経過した時、ホセが動いた。
手元の紙に何かの走り書きを繰り返し、しばらくヘッドフォンに手を当てて聞き入った後、それを外して俺の方を見る。
「わかったぞ、ヴィンスっていう神様が今いるところ」
「本当ですか。彼は今どこに」
俺もベンチから立ち上がり、ホセの横にしゃがみ込んで、メモ書きを覗き込む。
「ツルマ市の医療刑務所に入れられとるようだ。しばらく側を離れていたキャプターが戻ってきたっちゅうことで、仲間に注意を促しとったわ。まだ発電所に入れられていなかったのは不幸中の幸いやな」
「ツルマ市ってセイイロ山が隔てている、隣の市ですよね。どうして拘置所ではなく医療刑務所なんでしょうか」
「本当のところはわからんが、神に何らかの器具を装着するのに、手術を装ったりできるのは都合が良いんじゃあないか」
ホセの言葉に、俺は深く納得した。彼は言葉を続ける。
「それと二月二八日、つまり二日後にキャプターがまた動くだろうっちゅう情報があった。おそらく神様が移送される日だな」
「であれば、移送時を狙って救出するのが一番良さそうですね」
想像以上の収穫に興奮する。一気にヴィンス救出が現実味を帯びてきた。
「ああ。医療刑務所を強襲するのも、完全封鎖された後の発電所を暴くのも難易度が高すぎるわな。ツルマ市はミミサキ市と比べてかなり広いが、医療刑務所も既存の発電所も一箇所しか無い。移送先はそこだな」
「後は移送中にどうヴィンスを取り返して逃げるか、か……」
眉を寄せ悩みだした俺に、ホセは外したヘッドフォンを差し出してきた。
「聞いてみるか、神様通信」
俺は少し戸惑ってから頷き、ヘッドフォンを頭に装着する。するとすぐに、うるさいほどの音が流れ込んできた。
微かに混ざるノイズの中、流れている声に、俺は聞き覚えがある。
あの、身代金の受け渡しを指示してきた電話の声と似ているのだ。あれよりもさらに多くの人間が同時に喋っているようで、逆に均一化されている。その情報を発しているのがどんな人物なのかは判別がつかない。少しでもヴィンスの声が聞けるかと期待したのだが、これでは無理だ。
声は様々な情報を語るが、それらは会話にはなっていなかった。皆が皆好きなことを一方的に話しているだけ。世の中のあちこちで話されている噂話と独り言を一箇所に集約したらこうなりそうだ。
「何だかゾワゾワします」
微妙な表情を浮かべた俺に、ホセが声をたてて笑う。
「電話とは根本的に仕組みが違うもんよな。辛抱強く聞いとると、たまに重要情報が混ざる」
聞き続けていると、軽い頭痛を感じてきた。これを長年傍受し続けたホセの忍耐力の高さが伺える。
俺はヘッドフォンを外し、ホセへと返した。彼はコンセントからプラグを抜き、片付けをはじめる。
「場所がわかったからな、もう少し詳しい情報はシマが探れるやろ。一先ず帰るぞ」
次に起こすべき行動は決まった。
ホセは居間の天井に、シィカスの枝に灯すランタンをかけ、部屋の灯りを確保する。
電話の後、俺達は情報交換を行い、ヴィンス救出までのお互いのスタンスを話し合った。そこで決めたのは、俺が実行役を担い、ホセやノラ、サイチは最後まで政府に捕捉されないようにする、ということだ。
これにノラは少々の抵抗を示したが、俺とホセの二人から説得されて、合意に至った。
俺達はその後、ホセの庭で採れた野菜と、捌いた鶏でつくられた料理を食べた。とびきり新鮮なそれらはおいしかったが、こうして電気のない生活を少しだけ体験すると、どれだけ不便になるかが身に沁みてわかる。
そうして夜の七時ちょうどに、サイチがやって来た。
玄関の戸が叩かれる音に俺が立ち上がると、ホセは天井に吊るしているものではない、もう一つのランタンを灯して、俺に手渡してくれた。
利便性は電気とは比べものにならないが、全方位に広がる、優しい灯りは嫌いではないと思う。
玄関ヘ向かい、戸を開く。そこには予想通り、サイチが立っていた。布に包まれた六〇立方センチメートル程度の、箱のようなものを抱えている。彼は俺を見て、いつも通り不機嫌そうに眉を寄せる。
サイチと会う時、彼はいつも椅子に座っていたからよくわからなかったが、こうして横に立つと小柄なことがわかった。俺よりも、頭一つ分以上小さい。
「何であんたがまたミミサキ市にいて、ホセさんと一緒に何を企んでるのか、ちゃんと説明してもらうからな」
どこか恨みがましい様子で言われ、俺は笑った。
「わかっている。それより、サイチはホセさんに頭が上がらないんだな」
「俺が、あの変人の爺さんに?」
「そんな言い方していいのか」
「うるさいな」
彼を家の中へと促し、居間へと向かいながら下らない会話をする。電気が一切ないという非日常感溢れる家の中、信頼できる仲間が増えていくような感覚が何だかくすぐったい。
「シマ来たか、急に呼び出して悪かったな」
ホセと対面すると、サイチはコロッと態度を変えた。
「いえ全然、大丈夫です。それでこれ、ご要望の」
彼は抱えていた箱のようなものを床の上に下ろす。布を取り払うと、幾本ものケーブルが刺さった、無骨な機械の塊が姿を現した。本体の上には、古びたヘッドフォンが乗っている。
「ああ、懐かしいな。んじゃあ早速神様通信の傍受をはじめるか」
「この家は電気がありませんが、ここでできるんですか?」
とても電気がなくて動く代物には見えなくて、俺は問う。
「いや、場所を移さなきゃならんな。ツキは俺と来てくれ。サクナはシマに説明と、残しとった夕飯出してやってくれるか」
ホセがそう指示を出すと、サイチは部屋の中を見回し、暗がりに紛れるようにひっそり座っていたノラを見つけて、また眉を寄せていた。口には出していないが、おそらく「何故お前までここに」という気持ちだろう。
一方ノラの方も、どこか困惑したような面持ちでサイチを見ている。
「あの、ホセさん。サイチさんまで巻き込んで大丈夫でしょうか……サイチさんは、何も知らないのに」
「何だって?」
サイチは「何も知らない」というワードに反応して食ってかかろうとする。一方、ホセは鷹揚に頷いた。
「シマは俺が見込んだ男よ。こう見えて芯が通っとる。安心しな」
こう見えて、というのは褒めているのかけなしているのか微妙なところではあるが、サイチは嬉しかったようだ。ぐっと黙り、ランタンの灯りの下でもわかるほどに、顔を赤くしていた。
俺とホセが車で来たのは、ホセの家がある森の端にぽつんと佇む商店。
商店自体は、まだ七時を回った所だというのに、すでに営業を終了していた。けれどホセの用があったのは商店ではなく、その横に設置された自動販売機の方だった。
彼は機械を抱えて車を降りると、地面の上に座り込んだ。
自動販売機の電源をとっているコンセントの空き口に、機械のプラグを差し込む。すると、側面についた計器の針が動きはじめた。
「大きめの電気製品の近くの方が、混ざるノイズも大きいんだ」
彼はそう説明をしながら、繋がっているヘッドフォンを装着し、機械についている、いくつものダイヤルを調整し始める。
その様子を見ながら、俺はランタンをホセの横に置き、自動販売機の横に置かれた古びたベンチに腰を下ろす。
今日は比較的暖かかったとはいえ、夜になるとさすがに冷え込む。コートの襟を引き寄せたが、都内の張り詰めたような寒さとは、質が違うなと感じていた。
俺にはヘッドフォンでホセが聞いている音は聞こえないので、ただ待つしか無い。
空を見上げる。濃紺の夜空に、降ってきそうな程の明るい星星が、無数に瞬いている。そのとき俺は不意に、シンさんと張り込みをして、男を逮捕した日のことを思い出した。あの時見ていた夜空はたしかに美しかった。けれど、ミミサキ市で見る星空は、デンメラで見るものとは、見える星の数が格段に違う。
デンメラの星空しか知らなければ、夜空とはこういうものだと思う。だが、ミミサキ市の星空を知ってしまえば、デンメラの星空には、見えていない星が存在することがわかるのだ。まるでこの世界のようだと、そう思った。
そうして一時間半ほどが経過した時、ホセが動いた。
手元の紙に何かの走り書きを繰り返し、しばらくヘッドフォンに手を当てて聞き入った後、それを外して俺の方を見る。
「わかったぞ、ヴィンスっていう神様が今いるところ」
「本当ですか。彼は今どこに」
俺もベンチから立ち上がり、ホセの横にしゃがみ込んで、メモ書きを覗き込む。
「ツルマ市の医療刑務所に入れられとるようだ。しばらく側を離れていたキャプターが戻ってきたっちゅうことで、仲間に注意を促しとったわ。まだ発電所に入れられていなかったのは不幸中の幸いやな」
「ツルマ市ってセイイロ山が隔てている、隣の市ですよね。どうして拘置所ではなく医療刑務所なんでしょうか」
「本当のところはわからんが、神に何らかの器具を装着するのに、手術を装ったりできるのは都合が良いんじゃあないか」
ホセの言葉に、俺は深く納得した。彼は言葉を続ける。
「それと二月二八日、つまり二日後にキャプターがまた動くだろうっちゅう情報があった。おそらく神様が移送される日だな」
「であれば、移送時を狙って救出するのが一番良さそうですね」
想像以上の収穫に興奮する。一気にヴィンス救出が現実味を帯びてきた。
「ああ。医療刑務所を強襲するのも、完全封鎖された後の発電所を暴くのも難易度が高すぎるわな。ツルマ市はミミサキ市と比べてかなり広いが、医療刑務所も既存の発電所も一箇所しか無い。移送先はそこだな」
「後は移送中にどうヴィンスを取り返して逃げるか、か……」
眉を寄せ悩みだした俺に、ホセは外したヘッドフォンを差し出してきた。
「聞いてみるか、神様通信」
俺は少し戸惑ってから頷き、ヘッドフォンを頭に装着する。するとすぐに、うるさいほどの音が流れ込んできた。
微かに混ざるノイズの中、流れている声に、俺は聞き覚えがある。
あの、身代金の受け渡しを指示してきた電話の声と似ているのだ。あれよりもさらに多くの人間が同時に喋っているようで、逆に均一化されている。その情報を発しているのがどんな人物なのかは判別がつかない。少しでもヴィンスの声が聞けるかと期待したのだが、これでは無理だ。
声は様々な情報を語るが、それらは会話にはなっていなかった。皆が皆好きなことを一方的に話しているだけ。世の中のあちこちで話されている噂話と独り言を一箇所に集約したらこうなりそうだ。
「何だかゾワゾワします」
微妙な表情を浮かべた俺に、ホセが声をたてて笑う。
「電話とは根本的に仕組みが違うもんよな。辛抱強く聞いとると、たまに重要情報が混ざる」
聞き続けていると、軽い頭痛を感じてきた。これを長年傍受し続けたホセの忍耐力の高さが伺える。
俺はヘッドフォンを外し、ホセへと返した。彼はコンセントからプラグを抜き、片付けをはじめる。
「場所がわかったからな、もう少し詳しい情報はシマが探れるやろ。一先ず帰るぞ」
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