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1.なれの果て※
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時は江戸時代。茶屋などで客を相手に男色を売った男娼のことを陰間といった。特に数え13、14から20歳ごろの美少年による売色をさす。
口減らしなどで親から売られた見目の良い少年たちが、男を喜ばせるために性の技術を磨く。
そしてその陰間茶屋の中心となる芳町には、女より綺麗だと謳われた陰間がいた。その名は錦弥。
陰間茶屋は若衆を派遣するだけで実態は男娼の寮である。そこで性を提供するわけではないのだが、錦弥を一目見るために男達は茶屋の前に集まった。錦弥に会うために男達は銀子を積んだ。錦弥と目があっただけで気絶するものまでいたという。
―――― そんな伝説の陰間の数年後。
「なんだぁ? お前も落ちぶれたもんだなぁ。 こんな、なさけねぇ姿を晒しても客を取らなきゃなんねぇとは」
「あっ……あっ……あぁ、いいっ……」
錦弥はそれぞれの手と足を結ばれ、うずくまり、尻を高く上げていた。穴には男の陰茎。その抽挿は荒々しい。興が乗ってきたのか、錦弥の尻たぶを手のひらでバシバシと叩いた。白い肌が赤くなり、錦弥が痛がっても誰も止めるものはいない。
心にもない言葉を言うのは慣れている。少しでも早く男をイカせ、賢者タイムが訪れるのを待つか、時間が過ぎるのを待つしかなかった。
かつて、「蝶よ、花よ」と江戸中の男共に騒がれた陰間の錦弥はもういなかった。
急速に背が伸び、しっかりとした身体つきになった錦弥。陰間などという仕事でなければ、さぞかし女性に持てたであろう外見は、陰間としては仇となった。
「女性に負けない綺麗さ」をウリにしているというのに、女どもがうっとりするような男前なのだ。
男を主な客層としている陰間。錦弥の人気は急降下していった。かつてのように稼げなくなると、茶屋の主人からひどい折檻を喰らうこともままあった。
陰間をやめた男は、女性相手の男娼になることも多かった。だが、錦弥はまだ年季が明けない。そのため、今日のような特殊な性癖を持つ男たちに充てがわれるようになった。陰間としての値段も下がり、客層も以前とくらべ乱暴な客が増えていた。錦弥が呼び出されるのは表通りにある料理屋から一本奥の路地に入った、少々荒っぽい行為をしても問題のないような料理屋へと変わった。
ある日は足袋だけを履いた状態で、全裸で柱に吊られ、縛られていた。後ろ手に縛られ、片足を吊られ、大きく股を開かされている。その間には木製の太い張り型が突き刺さっていた。
「こんな状態でも勃たせてやがる。 昔はあんなにスカしていたのに、今ではただの淫乱か。 それともこれが本性か?」
錦弥のあられもない姿を嘲笑いながら、酒臭い口を近づけ、乳首をつねった。陰間茶屋の若衆は、わずかな刺激でも勃つように訓練されていた。勃っていないと、自分のサイズや技術が足りないと侮辱されたように思う客もいるのだ。だから、子供の頃から穴の拡張とともに、陰茎を自由に勃たせるよう練習させられてきた。
「いいもん食ってるから、こんなでかくなるんだよ。 しかも無駄にでけぇちんこしやがって、この顔と、このイチモツでさぞかし後家さん方を喜ばせてんだろぅ?」
陰間の客はたいてい男衆だが、時折女の相手をすることもある。金の持った後家とか、大奥女中とか。時折錦弥の陰茎を自分の嫁に突っ込ませ、自身は錦弥に突っ込むといった酔狂な客もいた。どんな要望にも銀子を積まれている以上、茶屋の主人が引き受けた以上、錦弥に拒否権はなかった。
「そ……んなこと……ひっ!!」
錦弥の勃たせた陰茎が叩かれた。痛みに思わず腰が引けて、顔をしかめてみればニヤニヤと笑っている客の姿が見えた。小さくて醜い男だった。男にとってみれば事実などどうでも良いのだ。ただ錦弥を罵倒し、日々の憂さ晴らしをしたいだけで。
「あぁっ……」
体内を貫く太い張り型が、客によって奥まで突っ込まれた。体内の奥に到達する強い刺激に思わず声が漏らせば、男は笑った。「一度張り型でイッてみせろ」と体内を激しくかき回し始めた。タチの悪い客だった。弱い立場のものをいたぶることで興奮するタイプだ。
自分だって早くこの穴に入れたくて勃たせているくせに、それよりも錦弥に責め苦を味わわせることを優先する。目を閉じ、陰茎に集中した。体内を拡げる張り型の大きさを利用し、自らの下腹の筋肉を使って、縛られたまま自らを射精へと導く。
「すげぇ、前をいじってねぇのに後ろだけでイキやがった」
男は興奮して、張り型から手を離した。弛緩した穴からぼとりと張り型が落ちた。吐き出された錦弥の精液も陰茎を伝わり、畳へと垂れた。
そして男の怒張が、まだ肩で息をしている錦弥の体内へと侵入する。先程よりも細く柔らかいそれで体内を刺激されれば、ゴールが見えてきたという安堵感で自然と柔らかい吐息が漏れる。
「あぁ……いいです……そこっ!! そこっ!! 本物のほうがいい……」
縛られていて、自由にならない身体。錦弥を縛る紐を身体に食い込ませ、男の望むであろう言葉を口にしながら、抽挿を受け止める。
男は錦弥の腰を掴み、臀部へ強く腰を打ち付けると、錦弥の体内へ精を吐き出した。そして残滓までを残らず出すと、陰茎を抜き取り満足気に出ていった。
縛られたまま放置される錦弥。
穴から男の吐き出したものが溢れ、太ももを汚した。
◇
男が帰ると入れ替わりに、金剛の銀次が入ってきた。
金剛とは、陰間の身の回りをする従者のことを言う。陰間が客に呼ばれて行く時には必ずこの金剛が供をする。陰間が逃げ出さないように、客が無理をしすぎないように、用心棒としての役割もあるが、陰間になる前の穴の拡張や、行為をするための布団を運ぶこともこの金剛の仕事である。加えて銀次の場合、客の要望に応えて縛るのも仕事の一つだった。身体も大きく、無口で無愛想な男。
いつもの有様にとくになんの反応をするでもなく、淡々と紐をほどき拘束を解いていく。無理な体勢を強いられていた錦弥の身体はギシギシと悲鳴を上げていた。
すべての拘束が解かれる時、錦弥がケガをしないように身体を支え、布団にそっと横たえた。
「……大丈夫ですか?」
銀次の問いにうなずくだけで答える。自らの手で太ももをもみほぐし、こわばった足をほぐしていると、片付けを終えた銀次が後孔を軽く拭き、マッサージを変わってくれた。
「2切(2~3時間)までまだ時間がありますが、お食事されますか? ……あ……」
手のつけてない御膳を見て銀次は黙った。残っているのは、陰間が食べてはいけないという言われている、芋や魚を使った料理ばかり。
「いいよ。 食べたいならお前が食べな。 それにさっきの客に張り型で奥まで責められたから、今食べたら吐きそう」
「ですが……」
銀次の言いたいことはわかっていた。「これ以上大きくならないように」と陰間茶屋の主人から錦弥は厳しい食事制限をされていた。身体に見合わぬわずかな量の食事で、負担の多い性交を強いられているのだ。倒れられたら困るということだろう。
「今日はもう終わりだろ? さっさと帰って湯浴みをしたい」
横たわる身体を動かせば、体内に出された精液が溢れてきた。
「……かき出しますね」
錦弥の股を開き、体内に残る客の残滓を銀次が指で掻き出す。
「はふ……」
思わず甘い吐息が口から漏れる。それを銀次が熱のこもった瞳で見ていた。この指の動きはわざとなのか、それともこの身体が感じるように訓練された結果なのか。
むくむくと陰茎が持ち上がり、先端から透明な滴がつぷっと溢れた。
「一度、気をやりますか?」
「いいよ。さっさと掻き出して」
金にならない性行為はしない。それは錦弥のプライドだった。もちろん水揚げ前は訓練のため銀次と身体をつなげたこともあったが、客を取るようになってからはまったくない。ただ世話をされるだけだ。
陰間茶屋に帰れば、今晩指名を貰えなかった陰間達がいた。錦弥が入っていくと会話を止めた。
ふらふらになるまで客にいたぶられ、拘束の痕が残る錦弥の身体。哀れみの目が物語っている。
―――― ああはなりたくない、と。
口減らしなどで親から売られた見目の良い少年たちが、男を喜ばせるために性の技術を磨く。
そしてその陰間茶屋の中心となる芳町には、女より綺麗だと謳われた陰間がいた。その名は錦弥。
陰間茶屋は若衆を派遣するだけで実態は男娼の寮である。そこで性を提供するわけではないのだが、錦弥を一目見るために男達は茶屋の前に集まった。錦弥に会うために男達は銀子を積んだ。錦弥と目があっただけで気絶するものまでいたという。
―――― そんな伝説の陰間の数年後。
「なんだぁ? お前も落ちぶれたもんだなぁ。 こんな、なさけねぇ姿を晒しても客を取らなきゃなんねぇとは」
「あっ……あっ……あぁ、いいっ……」
錦弥はそれぞれの手と足を結ばれ、うずくまり、尻を高く上げていた。穴には男の陰茎。その抽挿は荒々しい。興が乗ってきたのか、錦弥の尻たぶを手のひらでバシバシと叩いた。白い肌が赤くなり、錦弥が痛がっても誰も止めるものはいない。
心にもない言葉を言うのは慣れている。少しでも早く男をイカせ、賢者タイムが訪れるのを待つか、時間が過ぎるのを待つしかなかった。
かつて、「蝶よ、花よ」と江戸中の男共に騒がれた陰間の錦弥はもういなかった。
急速に背が伸び、しっかりとした身体つきになった錦弥。陰間などという仕事でなければ、さぞかし女性に持てたであろう外見は、陰間としては仇となった。
「女性に負けない綺麗さ」をウリにしているというのに、女どもがうっとりするような男前なのだ。
男を主な客層としている陰間。錦弥の人気は急降下していった。かつてのように稼げなくなると、茶屋の主人からひどい折檻を喰らうこともままあった。
陰間をやめた男は、女性相手の男娼になることも多かった。だが、錦弥はまだ年季が明けない。そのため、今日のような特殊な性癖を持つ男たちに充てがわれるようになった。陰間としての値段も下がり、客層も以前とくらべ乱暴な客が増えていた。錦弥が呼び出されるのは表通りにある料理屋から一本奥の路地に入った、少々荒っぽい行為をしても問題のないような料理屋へと変わった。
ある日は足袋だけを履いた状態で、全裸で柱に吊られ、縛られていた。後ろ手に縛られ、片足を吊られ、大きく股を開かされている。その間には木製の太い張り型が突き刺さっていた。
「こんな状態でも勃たせてやがる。 昔はあんなにスカしていたのに、今ではただの淫乱か。 それともこれが本性か?」
錦弥のあられもない姿を嘲笑いながら、酒臭い口を近づけ、乳首をつねった。陰間茶屋の若衆は、わずかな刺激でも勃つように訓練されていた。勃っていないと、自分のサイズや技術が足りないと侮辱されたように思う客もいるのだ。だから、子供の頃から穴の拡張とともに、陰茎を自由に勃たせるよう練習させられてきた。
「いいもん食ってるから、こんなでかくなるんだよ。 しかも無駄にでけぇちんこしやがって、この顔と、このイチモツでさぞかし後家さん方を喜ばせてんだろぅ?」
陰間の客はたいてい男衆だが、時折女の相手をすることもある。金の持った後家とか、大奥女中とか。時折錦弥の陰茎を自分の嫁に突っ込ませ、自身は錦弥に突っ込むといった酔狂な客もいた。どんな要望にも銀子を積まれている以上、茶屋の主人が引き受けた以上、錦弥に拒否権はなかった。
「そ……んなこと……ひっ!!」
錦弥の勃たせた陰茎が叩かれた。痛みに思わず腰が引けて、顔をしかめてみればニヤニヤと笑っている客の姿が見えた。小さくて醜い男だった。男にとってみれば事実などどうでも良いのだ。ただ錦弥を罵倒し、日々の憂さ晴らしをしたいだけで。
「あぁっ……」
体内を貫く太い張り型が、客によって奥まで突っ込まれた。体内の奥に到達する強い刺激に思わず声が漏らせば、男は笑った。「一度張り型でイッてみせろ」と体内を激しくかき回し始めた。タチの悪い客だった。弱い立場のものをいたぶることで興奮するタイプだ。
自分だって早くこの穴に入れたくて勃たせているくせに、それよりも錦弥に責め苦を味わわせることを優先する。目を閉じ、陰茎に集中した。体内を拡げる張り型の大きさを利用し、自らの下腹の筋肉を使って、縛られたまま自らを射精へと導く。
「すげぇ、前をいじってねぇのに後ろだけでイキやがった」
男は興奮して、張り型から手を離した。弛緩した穴からぼとりと張り型が落ちた。吐き出された錦弥の精液も陰茎を伝わり、畳へと垂れた。
そして男の怒張が、まだ肩で息をしている錦弥の体内へと侵入する。先程よりも細く柔らかいそれで体内を刺激されれば、ゴールが見えてきたという安堵感で自然と柔らかい吐息が漏れる。
「あぁ……いいです……そこっ!! そこっ!! 本物のほうがいい……」
縛られていて、自由にならない身体。錦弥を縛る紐を身体に食い込ませ、男の望むであろう言葉を口にしながら、抽挿を受け止める。
男は錦弥の腰を掴み、臀部へ強く腰を打ち付けると、錦弥の体内へ精を吐き出した。そして残滓までを残らず出すと、陰茎を抜き取り満足気に出ていった。
縛られたまま放置される錦弥。
穴から男の吐き出したものが溢れ、太ももを汚した。
◇
男が帰ると入れ替わりに、金剛の銀次が入ってきた。
金剛とは、陰間の身の回りをする従者のことを言う。陰間が客に呼ばれて行く時には必ずこの金剛が供をする。陰間が逃げ出さないように、客が無理をしすぎないように、用心棒としての役割もあるが、陰間になる前の穴の拡張や、行為をするための布団を運ぶこともこの金剛の仕事である。加えて銀次の場合、客の要望に応えて縛るのも仕事の一つだった。身体も大きく、無口で無愛想な男。
いつもの有様にとくになんの反応をするでもなく、淡々と紐をほどき拘束を解いていく。無理な体勢を強いられていた錦弥の身体はギシギシと悲鳴を上げていた。
すべての拘束が解かれる時、錦弥がケガをしないように身体を支え、布団にそっと横たえた。
「……大丈夫ですか?」
銀次の問いにうなずくだけで答える。自らの手で太ももをもみほぐし、こわばった足をほぐしていると、片付けを終えた銀次が後孔を軽く拭き、マッサージを変わってくれた。
「2切(2~3時間)までまだ時間がありますが、お食事されますか? ……あ……」
手のつけてない御膳を見て銀次は黙った。残っているのは、陰間が食べてはいけないという言われている、芋や魚を使った料理ばかり。
「いいよ。 食べたいならお前が食べな。 それにさっきの客に張り型で奥まで責められたから、今食べたら吐きそう」
「ですが……」
銀次の言いたいことはわかっていた。「これ以上大きくならないように」と陰間茶屋の主人から錦弥は厳しい食事制限をされていた。身体に見合わぬわずかな量の食事で、負担の多い性交を強いられているのだ。倒れられたら困るということだろう。
「今日はもう終わりだろ? さっさと帰って湯浴みをしたい」
横たわる身体を動かせば、体内に出された精液が溢れてきた。
「……かき出しますね」
錦弥の股を開き、体内に残る客の残滓を銀次が指で掻き出す。
「はふ……」
思わず甘い吐息が口から漏れる。それを銀次が熱のこもった瞳で見ていた。この指の動きはわざとなのか、それともこの身体が感じるように訓練された結果なのか。
むくむくと陰茎が持ち上がり、先端から透明な滴がつぷっと溢れた。
「一度、気をやりますか?」
「いいよ。さっさと掻き出して」
金にならない性行為はしない。それは錦弥のプライドだった。もちろん水揚げ前は訓練のため銀次と身体をつなげたこともあったが、客を取るようになってからはまったくない。ただ世話をされるだけだ。
陰間茶屋に帰れば、今晩指名を貰えなかった陰間達がいた。錦弥が入っていくと会話を止めた。
ふらふらになるまで客にいたぶられ、拘束の痕が残る錦弥の身体。哀れみの目が物語っている。
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