壁穴奴隷No.18 銀の髪の亡霊

猫丸

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3.恋人になるまで

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気づくと、精液でぐちゃぐちゃに汚れたベッドに寝ていた。
抱き潰されて、そのまま意識を失ってしまったらしい。

新しいご主人様が、すごく怒っていた。
こんな状態で放置されたということは、ぼくはまた失敗してしまったんだろうか。
なんてぼくはだめなんだ。
何一つまともにできない。

こびりついた精液はカピカピに乾ききり、汚れたシーツは肌に張り付いていた。
どこもかしこも痛い。
身体中が悲鳴をあげている。

でもよかった。それでもぼくはまだ生きている。
いつものように、胸に手を当てて体内にある愛しいカケラを探す。

「あ…あ…」

そうだった、新しいご主人様はずっと恋焦がれていたあの人だった。

◇◇◇

誰もいない部屋で、どうして良いのか戸惑っていると、新しいご主人様が現れた。
大人になったアレクは、背も伸びて、身体もがっしりして、ちょっと日に焼けた肌がますますかっこよくなっていた。昔も今も憧れの存在。

「よかった、気がついたか」
ホッとした顔。

「あっ…すみ…ません。どうしていいかわからなくて……その、布団もシーツも…」
目を合わせられず、あわてて布団からでようとする。
ちゃんと奴隷として立場をわきまえた発言ができていただろうか?

「あぁ、気にするな。じゃぁ洗いに行こう」
そう言って、戸惑うシルヴァをシーツごと抱きかかえると、浴室へ連れて行った。

自分で洗える、と拒否したが、断られた。
洗われている時、後穴や全身の噛み痕がしみたが、だまって耐える。
時折アレクはうっとりしながら、僕の全身に残る痕をなでてていた。
こびりついた精液はなかなか落ちなかった。

「じゃぁ、次は髪洗うから」

長めのバスタブに頭を上げ、伸び切った髪を時間をかけて洗われた。
アレクの服は泡や水が飛んで、濡れている。

やさしくされると、アレクの本心がわからず戸惑ってしまう。
ずっと目も合わせられず、鏡の前で身体を拭かれているときに、ふと違和感に気づいた。

「あれ……?」

忌まわしくてちゃんと見たことがなかった淫紋だったが、こんな模様だっただろうか?
下腹に触れ、つい鏡に近づこうとすると、アレクが嬉しそうに言った。

「気づいたか」

「これ…」

「そう、俺の所有印だ。これでお前は間違いなく俺のものだ」

―――

昨日の言葉が蘇ってきて、目の前が真っ暗になった。
そんなに恨まれていたなんて。

会えない5年間、ずっと心にいた大切な存在。
アレクなら、僕がどこにいても、アレクのためだけに生き続けてることをわかってると思って。

僕はなんて馬鹿だったんだ。
考えてみれば、当たり前だ。
アレクにとって僕は、望まぬ奴隷契約をさせられ、自分の命を握っている相手。
探し出してみれば、どんな男にでも尻ふって、惨めに生にしがみついている軽蔑すべき存在。
せめて、あんな場所で会わなければ、お互い笑顔で契約解除して、お別れできていたんだろうか。

身体に残るたくさんの痕。
こんなにも恨まれていた。

子供時代を思い出して、涙が溢れそうになる。
それも、辛い現実の中で、幸せだったと思い込もうとしてただけの、僕が作り出した幻だったのかもしれない。

もう、なににすがって生きていけばいいのかわからない。
なにが真実でなにが幻想だったのかもわからない。

唇を噛みしめる。

泣くな。
今ここで泣く訳にはいかない。
それだけが僕に残された最後の矜持プライドだ。

アレクは様子のおかしい僕を一人にすることを心配しつつも、どうしても職場にいかなくてはいけない用事があるらしい。

「すぐ戻るから!!」

そう言って、風呂上がり僕につけた足枷を、ベッドの足につなげ出ていった。
扉が締まると同時に、崩れ落ちて泣いた。

こんな思いをするなら、会わなければよかった。
見つけないでほしかった。

◇◇◇

「あっ…あっ…あっ…」
寝ているアレクの腰にまたがり、後穴にペニスを受け入れて喘ぐ。
そんな淫らな僕を嬉しそうに眺めながら、アレクは僕の乳首をつまんだり、ひねったり、引っ張ったりしていた。

毎晩毎晩、男たちの精を搾り取る。
どこへ行っても、相手が変わっても変わらない僕の仕事。
もう生きている理由もないのに、所有印のせいで勝手に死ねないなんて…

騎乗位でアレクをイカせた後、ベッドに倒れ込む。
自分も何度もイッたのと、スクワットのように上下運動をしていたので、太ももが限界だった。
足をほぐしながら、呼吸を整えていると、唐突にアレクが言った。

「これ、プレゼント……つけてくれるか?」
「え…」
そう言って渡された箱の中には、丸いリング状のピアスが入っていた。

「今日、同僚が恋人にピアスを贈ったって話を聞いて、シルヴァにも似合うと思って買ってきたんだ……嫌か…?」

『プレゼント』という言葉に浮かれた僕の心は、戸惑いに変わる。

どこにつけるんだろう?僕の耳に穴は空いていない。
あきらかに戸惑っている僕に、不安そうな表情を浮かべた。

「い…いえ、ありがとうございます。でも、僕、ピアスホールなくて…」
「大丈夫だ、針も買ってきたから、おれがやってやる」

アレクは、シルヴァの乳首に口をつけると、じゅるじゅると思い切り吸い出し、こねくり回し、刺激を与えられた。
「あっ…あっ…あっ…」
乳首への刺激だけで、シルヴァのペニスは立ち上がり、先走りがたれ始めた。
アレクがシルヴァの乳首を思い切り引っ張った。

「あっ…あっ…だ、だめ…ちぎれちゃうっ!!…あっ!!…だめ!!…イクっ!イク!イクぅぅぅ!!」

乳首のみの刺激で達し、ぐったりベッドに倒れ込む。
ペニスから液は殆ど出ていなかった。

そんなシルヴァにアレクが近づいてくる。
シルヴァの乳首に痛みが走った。

「ひぅっ!!!」

色素の薄いピンク色が、先程の刺激で真っ赤になり、ぷっくり腫れた乳首に、ニードルが刺さっていた。

「痛いか?すまん、もう少しガマンしてくれ」

アレクは手元が狂わないよう、真剣だった。
シルヴァは黙って痛みに耐える。

「ふぅ…」

アレクの手が離れた時、シルヴァの両の乳首には、銀のリング状のピアスが付けられていた。
満足げなアレクに、「ありがとうございます」と作り笑いを浮かべてお礼を言う。
心は冷えていた。

所有の証が増えていく。
僕は奴隷だ。恋人に贈るピアスも、どれいは乳首につけられる。
なんてみじめな存在なんだ。

鏡の中自分をみつめる。
シルヴァの身体の赤い痣と噛み跡が消える日はなかった。

◇◇◇

最近アレクの仕事が忙しいらしく、帰りが遅い日が続いていた。
毎日抱かれるものの、回数が少なくて身体が少し楽だった。

今日も、いつもより遅くベッドにはいった。

「出張…ですか?」
「あぁ、ちょっと急用でな。2~3日で帰ってこれると思う。いや、帰ってくる!
食事はもちろん用意していくが、その…その間、身体は大丈夫かと思って…」

「ご心配、ありがとうございます」
にっこり微笑む。

大丈夫に決まっているじゃないか。
毎日これだけ抱き潰されているのに。
やっと一人で心も身体を休められる。

「シルヴァを一人にするのは心配なんだが、どうしても俺がやらなきゃいけない仕事だから」
こちらの気持ちには気づかずアレクは真剣だった。
「気をつけて行って…んぐぅ」

肉食動物が獲物を捕食するかのような激しいキスをされた。
口の中が蹂躙されていく。
そしてベッドに押し倒される。
いつもの流れだ。

だが、今日はその後が違った。
アレクは、用意していたロープで、シルヴァの手を縛り、ベッドの上部に固定した。
右足の膝を折り、手の方に通すと、左足も同様にされた。

ベッド上部を頂点にした、逆Vの形ができあがる。
足を大きく開かれ、ペニスも後孔もさらされる。
乳首にはこの間つけられたピアスが光っていた。

「ちょっと辛いかもしれないけど、身体が心配だから、今日は耐えてくれ」

数日できないから、思い切り吐き出したいということだろうか。
アレクは自分の猛ったペニスに潤滑油を塗ると、すぐに挿入してきた。

「んぐっ…」

始めこそ引っかかりはあるものの、日々慣らされているシルヴァの後穴は、直ぐにアレクを受け入れ濡れ始める。

「あっ…あっ…あっ…」

縛られていようが、この浅ましい身体は、快楽を拾ってしまう。
やがて、奥の入り口へのリズミカルな刺激で、シルヴァは軽くイッた。

そのまま抽挿を続けていたアレクは、とある一点に狙いを定めると、シルヴァの下腹の上から、自分のペニスの角度を直し、その奥へと剛直を推し進めた。

「ひっ!!……お願い!!やめてっ!!やめてください!!」

気づいたシルヴァは、恐怖で懇願する。

「やめっ…あぁっ…はぁぁぁっっっ!!」

きゅぽんと音がして、結腸にアレクの先端が挟まった。

「あ゛あ゛あ゛……」

声にならない。

「あぁ、ここは初めてなのか。…はは、そうか。やっとシルヴァの初めてをもらえた」

嬉しそうに下腹をなでながら、呟いた声さえ、シルヴァにはまともに聞こえなかった。
何度も何度も最奥のその奥が刺激され、白濁液で満たされる。

「あ゛っ…あ゛っ…あれくの…せぇし…あぁ、おなかのなか…いっぱい…」

脳が焼ききれそうな快楽地獄が続いた。
白目をむき、口はだらしなく開き、口の端からはよだれが垂れ流しになっていた。
体内への刺激で、失いそうな意識を戻され、また気を失いかける。
その繰り返し。

さすがのアレクも体力の限界を感じ、何度目かの射精を終えると、シルヴァに倒れ込み、おでこに口づけをした。
シルヴァは反応しなかった。

「ふぅ…よく頑張ったな。仕上げだ」

アレクは、シルヴァの体内に残ったままのペニスに力を入れると、そのままじょぼじょぼと放尿した。

「あっ!?あっ!?…あっ…あっ…ああぁぁぁっ!!!」

精液とは明らかに違う、熱い液体が体内に流れ込む。
その感覚でシルヴァは意識を取り戻し、再び絶頂を迎える。

小便を出し切ったアレクが、ふるっと震え、体内から陰茎を引き抜く。
精液以外の黄色い液体も一緒に溢れてきて、アレクは慌ててシルヴァの後穴をプラグで塞いだ。
出口を失った液体はそのまま、ぽっこりと膨らんだシルヴァの下腹にとどまった。
もはや、シルヴァに抵抗する力は残っていなかった。

◇◇◇

「シルヴァ、これ一応置いておくから、苦しくなったら飲んで」
「…なんですか?それ」

室内に持ち込んだ保冷庫には、一週間分の食料と飲み物の他に白い液体が入った瓶が何本もあった。

「俺の精液。昨日俺の体液いっぱい出したから大丈夫だと思うけど、念のため」

昨日のプレイを思い出して、顔が真っ赤になった。
精液だけでなく、尿まで体内に出されてイッてしまった。
性奴隷だったときは、そんなことなかったのに、段々身体がおかしくなってきている。
後穴は今もプラグが刺さったままにさせられていて、ぽっこりと出てたお腹が、昨日の情事の様子を伝えている。手や足のロープで擦れた痕には包帯が巻かれていた。

「お腹がもとに戻ったらプラグは外していいよ」と言ってアレクはでかけていった。

どこまで人をばかにするんだ…

アレクがでかけていったのを窓から見届けると、直ぐにトイレに行ってプラグをはずす。
さすがにそんな命令は守れなかった。

後穴からは、たくさんの白濁液とおしっこが流れ出た。
惨めで涙が出た。
ひとしきり泣いて、少しスッキリした頃、一人の生活を楽しむ気になった。

といってもすることは何もない。
足枷で繋がれているため、動ける範囲は室内だけだったし、ただ寝て、疲れた心と身体をやすめていた。

だが、2日目から異変が現れる。
異常な性欲を感じ始め、ふと、瓶が気になり始めた。
3日目には瓶から漏れる匂いをかいで欲求を抑えた。
4日目には約束の日を過ぎているアレクに憤りながら、一日瓶の外側を舐めながら、自慰にふけった。
……イケない。
5日目に、ついにがまんできなくなって、一口舐めてしまった。

口の中に広がる甘美な味。
身体の中が満たされていく。

頭の中にもやがかかったように、もう瓶の中身のことしか考えられなくなっていた。

後穴に直接瓶を突っ込み、夢中になって出し入れする。
瓶の中身が、体内に入ってきた。
あぁやっとイケる…。
瓶を後穴に突っ込んだまま、シルヴァは達した。

僕は頭がおかしくなってしまったんだ。
こんなものまで欲するようになるなんて。
瓶の中にこびりついている液まで指でこそげとって、ぺちゃぺちゃなめる。
中身がなくなっても、瓶に残る香りで欲求を満たした。

瓶の香りがなくなると、自分の後穴に指を入れ、ついた香りを舐めとる。
わずかに残った理性が、限界を伝えてるのがわかった。
舐めすぎた指は、白くふやけていた。

◇◇◇

「……お願いがあります」

一週間後、やっと仕事から帰ってきたアレクの精液を口と後穴で受け止め、少し正気になった頭で切り出す。
帰ってきて直ぐにシルヴァに襲われたアレクは、シャワーを浴びてくつろいだところだった。
仕事が終わったからか、性欲を吐き出したからか、アレクはご機嫌でシルヴァを膝に乗せ抱きしめていた。
話を切り出すのは怖かったが、今言わないと言えない。

「……僕を、解放してください」

「……………は?」

「奴隷の分際で厚かましいのはわかっていますが、お願いします。少しでも僕に情が残っているなら、最後のなさけをかけてください」

アレクの足元にひざまずき、頭を床にすりつけてお願いする。

「奴隷?……は?……え?……俺と……別れたい……ってこと?」

「……はい」

怒りをぶつけてくるかと思った。
もしかしたら、そのまま殺されるかもしれないと思っていた。
それでもよかった。わずかな時間の差だ。

だが、重苦しい沈黙が空間を支配した。
アレクもシルヴァもどちらも動かなかった。

長い沈黙の後でアレクがポツリと言った。

「…………お前は……俺に会いたくなかった…のか?」

僕は顔を上げて、目を見つめて伝える。

「会いたくありませんでした。
こんな…こんな惨めな姿、見られたくなかった。
……アレクにだけは知られたくなかった!!
どんなに世界から蔑まされても、僕がアレクの命を支えてる!!
それだけが僕の救いだったんだ!!それを!!それを!!それを勝手に!!
…せめて!!せめて、一言先に言ってくれたら…」

シルヴァは両手で顔を覆って号泣した。
もう、すべてがどうでも良かった。

「ごめん、アレク…。もう、つかれた…。つかれたんだよ…。
もう、僕がアレクにできることはなにもないんだ。お願いだから、殺して…」

すべて吐き出したあと、気づけばアレクも僕を抱きしめて泣いていた。

「ごめん!!そんなつもりじゃなかった!!シルヴァがそんなふうに思っていたなんて…
俺はまたシルヴァがいなくなるのが怖くて!!また俺以外の人間に取られるのが怖くて!!
俺だって、シルヴァが生きてるということだけが、この地獄の5年間の救いだった!!
ごめん、本当にごめん…。所有印は消す。自由に生きていいよ。
ただ、これだけはわかって。…愛してるんだ。心の底から。
子供の頃からずっと、シルヴァは俺の生きる理由なんだ」

初めて聞いたアレクの気持ち。

さんざん酷いことをされたけど、あれはアレクの独占欲だったのか。
子供の頃から、僕は年上のアレクに頼って生きてきたけど、アレクだって不安を抱えた一人の子供だったんだ。昔からずっと、僕たちにはお互いしかいなかった。

「……僕がいなくなったらアレクはどうするつもり?」
二人で子供の様にわんわん泣き続けたあとに問う。

「わからない。シルヴァがいなきゃ、シルヴァと一緒じゃなきゃ、こんな世の中……生きてる意味がない…」

◇◇◇

僕たちはお互いを思うあまり、すれ違っていた。
愛を受け取ったことがなくて、伝え方がわからなかった。
もう少し、素直になろう。

「ごめん、アレク。アレクの不安が解消されるまで気の済むようにしていいよ。嫌なときは、僕もちゃんと言うし。…それから…その…僕の身体はすごく感じやすくなってしまったみたいで、もう、アレクの精子、中出ししてもらわないとイケなくなっちゃったみたい。そんな…淫乱な僕だけど…いい?」

アレクをちょっと元気づけたくて、とっておきの秘密を暴露した。

「………シルヴァ、ごめん。……それ、これのせいだ」

僕の下腹を指差した。


(おわり)
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