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最終章 再び王都へ
40.最終決戦
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大混乱の大広間。玉座の上だけが時が止まったようだった。
エロアからフレデリック王に向かって放たれる閃光。
泣き叫ぶマチアスを抱きしめ、リュカはひたすら「愛してる」とつぶやくことしかできない。
それすらも声にならず、ごぽごぽと吐き出される血がマチアスの服を赤く染めた。
「リュカ!!!!」
意識を失いそうになる直前、ヴァレルがリュカの身体を支えた。抱きしめていたマチアスをマジックバッグとともに、ヴァレルに押し付ける。
「早く、マチアスを、逃、して……」
「リュカを置いていけるわけがないだろ!?」
「や、約束しただろ……?」
昨夜のリュカとヴァレルとの約束。リュカになにがあっても、マチアスを優先し、マチアスをエロアから逃がすこと。
だが、ヴァレルはリュカとマチアスを背に、剣で戦った。
イニャスが魔獣を操りながら、ヴァレルに攻撃を仕掛ける。
火熊の爪がヴァレルをかすり、見ていられない。マチアスを抱きしめる。
周りを振り切って壇上へと登ってきたアルシェがヴァレルの隣に立った。
「魔獣は任せろ!」
長い間北の森で戦ってきた、アルシェは操られた魔獣を倒していく。
ヴァレルは、イニャスと向かい合っていた。 ガキンと金属がぶつかり合う音がして互いの剣をぶつかりあう。
「ヴェルマンドは俺がもらうっ!! さっさと死ねっ!!!!」
そう叫びながら勢い込んで剣を振りかざしてきたイニャスをかわし、その脇腹を切ると、その剣を奪いとどめを刺した。
そして、両腕に剣を持ち、続けざまエロアへと攻撃を仕掛ける。
魔力によって弾かれる剣。飛び散るヴァレルの血。だがヴァレルの決死の攻防に、エロアも顔色が悪くなってきた。
「リュカ!! コイツを仕留めろ!!」
必死に命令に抵抗しているリュカに無情な命令が下る。そんなことできるはずがない。
心臓が痛い。全身が痛い。目からも血が流れた。
―――― 早くマチアスを連れて逃げて……
先程よりも大量の血が口から吐き出された。散らばった絵の上に広がる。
ふと、真っ赤に染まった絵に、何かが浮かび上がっているような気がした。だが、もはや目も良く見えない。意識も朦朧として、頭が働かない。
「ヴァレル君!! 避けてっ!!」
突然、広間の方から、真っ黒い閃光がエロアに向かって放たれた。
その声とともに、とっさにヴァレルが身を引き、リュカとマチアスをかばう。
「ふはははは!!!! エロア!!!! 思い知ったかっ!!!! 偉大な兄の力を!!!!」
エロアの意識が飛び、命令が失われたのか、リュカの心臓を締め付ける痛みが和らいだ。
悪役のように玉座に現れたのはパトリスだった。
「パトリス……貴様か? まだしぶとく生きていたのか……」
よろよろと立ち上がるエロア。あれだけの閃光を食らってもまだなお生きているというのは、相当に魔力を高めているのかもしれない。
「お、お前も終わりだ!! お前が町にルコルコの木の粉末をばら撒いて魔獣をおびき寄せたこともバレている!! あ、兄の言うことを聞いて、お、大人しく観念しろ!!」
パトリスも、まさかエロアが立ち上がってくると思わなかったのか、声に少し戸惑いが生じた。
「ヴァレル!! 今の隙にマチアスを連れて逃げて!!!!」
血を吐きながら、マチアスをヴァレルに託し、玉座から突き落とす。
「リュカ!!!!」
ヴァレルなら、ここから落としてもマチアスにケガをさせないだろう。
一人になったリュカをエロアが、さっと捕まえた。
「パトリス、勝負はあったようだな。 お前の魔力はもう限界だ。 私には黄金の魔力がある!!!!」
奴隷魔法の呪文を唱え、エロアはリュカの魔力を吸い込んだ。
「ルー!! 大丈夫だ!! 君の魔力を思い切り叩き込め!!!!」
パトリスに言われるがまま、リュカ側から魔力を思い切り放出する。すぐにエロアは苦しみ、胸を押さえ、リュカを突き飛ばした。
「き、貴様、何をした!?」
「お、お前は知らなかったようだがな、魔獣の魔力と黄金の魔力は混じり合えないんだよ!! 魔力が足りなくなって、お前が魔獣の魔力を奪ったことなど、この慧眼の持ち主、パトリス様にはお、お、お見通しだっ!!!!」
一瞬戸惑った顔をしたエロアだったが、すぐにいつもの冷たい表情に戻る。
「なるほど……ならば、貴様らを始末するまでだ!!」
「ひぃっ!!!!」
パトリスの悲鳴。エロアの真っ黒い魔力が手の中に集まるのがわかった。それはリュカにまで見えるくらいの邪悪な色で。
ふと、リュカの右手が血まみれの絵に触れているのがわかった。
追跡阻害魔法が描かれていた、絵の具でボコボコの歪んだ紙。その絵の一部が血を弾き、模様が浮かび上がっていた。
そして、周りに散らばる何枚もの絵。そこから何かが浮かび上がって見えた。
リュカはとっさにそれを掴んで、魔力を放出する体勢に入ったエロアに押し付けた。
ケイスの絵に浮かび上がっていた模様をパズルのように組み立て、強くイメージしていく。
本来であれば、従から主への攻撃ができない奴隷魔法。だが、悲鳴を上げる心臓を無視して、持てる限りの魔力を叩き込む。
―――― 陰極まりて陽となり、陽極まりて陰となる。陰の中に陽を、陽の中に陰を含有するが、この2つは交ることはない。
エロアから、黒と金の竜巻がぐるぐると渦を描いて立ち上り、天井を貫いて高く空へと登っていった。皆がそれを見上げる。
「お願いっっっ!!!!」
リュカは更に残るすべての魔力をエロアに叩き込んだ。
その立ち上った渦の、その先でなにかが光った。そしてその渦が徐々に混じりはじめたかと思うと、直後、エロアめがけて凄まじい勢いで落下してきた。
エロアに魔力を叩き込んでいたリュカは、逃げることもできず、落下した風圧でそのまま弾き飛ばされた。
飛ばされる最中、辺りがスローモーションで見えた。
ヴァレルがマチアスを抱きしめ、リュカの名を叫んで手を伸ばしている。
―――― マチアスをお願い……
自然と笑顔になる。首元からネックレスの石が飛び出してきた。その石を握りしめつぶやく。
「僕は、北極星を捕まえた……」
エロアからフレデリック王に向かって放たれる閃光。
泣き叫ぶマチアスを抱きしめ、リュカはひたすら「愛してる」とつぶやくことしかできない。
それすらも声にならず、ごぽごぽと吐き出される血がマチアスの服を赤く染めた。
「リュカ!!!!」
意識を失いそうになる直前、ヴァレルがリュカの身体を支えた。抱きしめていたマチアスをマジックバッグとともに、ヴァレルに押し付ける。
「早く、マチアスを、逃、して……」
「リュカを置いていけるわけがないだろ!?」
「や、約束しただろ……?」
昨夜のリュカとヴァレルとの約束。リュカになにがあっても、マチアスを優先し、マチアスをエロアから逃がすこと。
だが、ヴァレルはリュカとマチアスを背に、剣で戦った。
イニャスが魔獣を操りながら、ヴァレルに攻撃を仕掛ける。
火熊の爪がヴァレルをかすり、見ていられない。マチアスを抱きしめる。
周りを振り切って壇上へと登ってきたアルシェがヴァレルの隣に立った。
「魔獣は任せろ!」
長い間北の森で戦ってきた、アルシェは操られた魔獣を倒していく。
ヴァレルは、イニャスと向かい合っていた。 ガキンと金属がぶつかり合う音がして互いの剣をぶつかりあう。
「ヴェルマンドは俺がもらうっ!! さっさと死ねっ!!!!」
そう叫びながら勢い込んで剣を振りかざしてきたイニャスをかわし、その脇腹を切ると、その剣を奪いとどめを刺した。
そして、両腕に剣を持ち、続けざまエロアへと攻撃を仕掛ける。
魔力によって弾かれる剣。飛び散るヴァレルの血。だがヴァレルの決死の攻防に、エロアも顔色が悪くなってきた。
「リュカ!! コイツを仕留めろ!!」
必死に命令に抵抗しているリュカに無情な命令が下る。そんなことできるはずがない。
心臓が痛い。全身が痛い。目からも血が流れた。
―――― 早くマチアスを連れて逃げて……
先程よりも大量の血が口から吐き出された。散らばった絵の上に広がる。
ふと、真っ赤に染まった絵に、何かが浮かび上がっているような気がした。だが、もはや目も良く見えない。意識も朦朧として、頭が働かない。
「ヴァレル君!! 避けてっ!!」
突然、広間の方から、真っ黒い閃光がエロアに向かって放たれた。
その声とともに、とっさにヴァレルが身を引き、リュカとマチアスをかばう。
「ふはははは!!!! エロア!!!! 思い知ったかっ!!!! 偉大な兄の力を!!!!」
エロアの意識が飛び、命令が失われたのか、リュカの心臓を締め付ける痛みが和らいだ。
悪役のように玉座に現れたのはパトリスだった。
「パトリス……貴様か? まだしぶとく生きていたのか……」
よろよろと立ち上がるエロア。あれだけの閃光を食らってもまだなお生きているというのは、相当に魔力を高めているのかもしれない。
「お、お前も終わりだ!! お前が町にルコルコの木の粉末をばら撒いて魔獣をおびき寄せたこともバレている!! あ、兄の言うことを聞いて、お、大人しく観念しろ!!」
パトリスも、まさかエロアが立ち上がってくると思わなかったのか、声に少し戸惑いが生じた。
「ヴァレル!! 今の隙にマチアスを連れて逃げて!!!!」
血を吐きながら、マチアスをヴァレルに託し、玉座から突き落とす。
「リュカ!!!!」
ヴァレルなら、ここから落としてもマチアスにケガをさせないだろう。
一人になったリュカをエロアが、さっと捕まえた。
「パトリス、勝負はあったようだな。 お前の魔力はもう限界だ。 私には黄金の魔力がある!!!!」
奴隷魔法の呪文を唱え、エロアはリュカの魔力を吸い込んだ。
「ルー!! 大丈夫だ!! 君の魔力を思い切り叩き込め!!!!」
パトリスに言われるがまま、リュカ側から魔力を思い切り放出する。すぐにエロアは苦しみ、胸を押さえ、リュカを突き飛ばした。
「き、貴様、何をした!?」
「お、お前は知らなかったようだがな、魔獣の魔力と黄金の魔力は混じり合えないんだよ!! 魔力が足りなくなって、お前が魔獣の魔力を奪ったことなど、この慧眼の持ち主、パトリス様にはお、お、お見通しだっ!!!!」
一瞬戸惑った顔をしたエロアだったが、すぐにいつもの冷たい表情に戻る。
「なるほど……ならば、貴様らを始末するまでだ!!」
「ひぃっ!!!!」
パトリスの悲鳴。エロアの真っ黒い魔力が手の中に集まるのがわかった。それはリュカにまで見えるくらいの邪悪な色で。
ふと、リュカの右手が血まみれの絵に触れているのがわかった。
追跡阻害魔法が描かれていた、絵の具でボコボコの歪んだ紙。その絵の一部が血を弾き、模様が浮かび上がっていた。
そして、周りに散らばる何枚もの絵。そこから何かが浮かび上がって見えた。
リュカはとっさにそれを掴んで、魔力を放出する体勢に入ったエロアに押し付けた。
ケイスの絵に浮かび上がっていた模様をパズルのように組み立て、強くイメージしていく。
本来であれば、従から主への攻撃ができない奴隷魔法。だが、悲鳴を上げる心臓を無視して、持てる限りの魔力を叩き込む。
―――― 陰極まりて陽となり、陽極まりて陰となる。陰の中に陽を、陽の中に陰を含有するが、この2つは交ることはない。
エロアから、黒と金の竜巻がぐるぐると渦を描いて立ち上り、天井を貫いて高く空へと登っていった。皆がそれを見上げる。
「お願いっっっ!!!!」
リュカは更に残るすべての魔力をエロアに叩き込んだ。
その立ち上った渦の、その先でなにかが光った。そしてその渦が徐々に混じりはじめたかと思うと、直後、エロアめがけて凄まじい勢いで落下してきた。
エロアに魔力を叩き込んでいたリュカは、逃げることもできず、落下した風圧でそのまま弾き飛ばされた。
飛ばされる最中、辺りがスローモーションで見えた。
ヴァレルがマチアスを抱きしめ、リュカの名を叫んで手を伸ばしている。
―――― マチアスをお願い……
自然と笑顔になる。首元からネックレスの石が飛び出してきた。その石を握りしめつぶやく。
「僕は、北極星を捕まえた……」
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