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8話

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 カトレアの献身的な治療はまだまだ続く。

「お粥が炊き上がりました」

「これはお腹の毒素を抜くお粥です。桃米と粉末にしたドラゴンの鱗と天仙山の穀類からできていて、栄養があって普通に食べても健康にいいのですが、毒素の溜まった方には以下同文」

「ぐぶぉぇええぇえええ! お、お兄ちゃま……」

「こちらは同重量のプラチナと……」

「がんばれ、ミミー!」

「煮豆ができました」

「これは血液の毒素を抜くお豆さんです。海底に生える翡翠真珠豆の一種で以下同文」

「ぼげぇえごええぇぇえぇ!」

「こちらは同重量のダイヤと」

「ほら、ミミー残すな! 全部口に入れろ!」

 ――すべての皿が空になった時には、ミミーは抜け殻になっていた。

「これでもう大丈夫なはずですわ!」

 大仕事を成し終え額の汗を拭うカトレアと、

「よく頑張ったな、ミミー! これで健康になれるぞ!」

 感動の涙を流しながら従妹の完食を称えるリード。

「さあ、ミミー様。ベッドから起きて自由に駆け回って、リード様に元気になったお姿を見せてあげてください!」

 爽やかな笑顔で差し伸べられたカトレアの手を――

「……冗談じゃないわっ!」

 ――ミミーはペシッとはたき落とした!

「こんな酷いことしておいて、なに善人ぶってんのよ! お兄ちゃま、こいつはペテン師よ! 薬なんか全然効いてないわ! ……あぁっ」

 罵倒するだけして、思い出したようにふらりとベッドに倒れ込む。

 いつもの状態に逆戻りしたミミーに、リードは焦ってカトレアを怒鳴りつけた。

「一体どうなっているんだい? カトレア! まったく君は役立たずじゃないか!」

「そんな……」

 カトレアは真っ青になる。

「申し訳ありません。わたくしの力不足で……」

「謝ってすむ問題じゃないだろう! 可哀想なミミーに無駄な負担を掛けて。これは賠償モノだよ!」

 深々と頭を下げる伯爵令嬢を存分に罵る伯爵令息を、被ったシーツの隙間から眺めながらミミーはこっそり舌を出す。

「本当に申し訳ないですわ……」

 カトレア平身低頭したまま、左手を真横に突き出した。空中から取り出したのは、一本の青い小瓶。

「こうなったら、最終手段です」
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