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75、プロポーズの真相

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 疲れと汚れを洗い流して綺麗な服に着替えたら、お疲れ様会の開催だ。
 リラックス効果の高い茶葉をふんだんに使用して、熱いお茶を淹れる。

「ふう、いい香りじゃなぁ」

 大樹に新しく作ってもらったテーブルを囲んで、ほっと一息つく。

「ヒメちゃん大活躍だったね」

 空になったカップに二杯目のお茶を注ぐリルに、ヒメミナは得意げに笑う。

「妾の本領発揮というところじゃな。リルもよくやったぞ」

「勉強していたお陰かな。霊薬の材料選びも迷わなかったし。ノームさん達もありがとね」

 横を見ると、高い椅子に座った小人達が作り置きのクッキーを我先にと口に掻き込んでいる。

(……森の住人の協力がなかったら、きっとあの人を助けられなかった)

 手伝ってくれた精霊に心から感謝すると同時に、彼等と交感し魔法を使うことのできた自分を誇らしく思う。

(これでスイウさんも私を一人前と認めてくれるかしら?)

 魔法使いを名乗れる日も近いかも、と希望を抱いたリルだったが、

「治癒に使った霊薬はなんだ?」

 現役魔法使いに問われて、シャキッと背筋を伸ばす。

「えっと、本に載ってた傷薬です。【火吠花】と【石の沈黙】と……」

 リルは指折り数えて五種類の材料を並べる。

「あと、ヒメちゃんの浄化魔法と【儚凪草】です。……どうですか?」

 上目遣いに評価を伺うリルに、スイウは涼しい顔でお茶を啜る。

「実際、生きて回復しているのだから問題はない」

 つれない答えだが、最大の賛辞と受け取っておく。

「でも、ほんと助かってよかったです」

 甘いお茶に心癒されながら、リルは先程の事件の記憶を辿る。

「あんなおっきな蛇が現れた時は、私も食べられちゃうかと思いました。あの牙に噛まれるなんて、想像しただけで……」

 そこまで言ってから、ふと思い出す。

「そういえば私、あの人に薬湯も飲ませました」

「ほう、どんな?」

「痛み止めの【ふわり茸】と【風乗り草】、それから安眠の【二角翼獅子の角】を……」

 ――言いながらリルは、自分の血の気が引いていくのを感じた。
 この配合は、決して間違ってはいない。むしろ効果を高め合う良い組み合わせだ。しかし、

(二角翼獅子の角って、『魅了』の効果もあるんだよね)

 もし、その効果まで高めてしまっていたら……?

『好きです。結婚してください』

 耳に蘇った声に、リルは頭を抱えた。

「スイウさん、どうしよう。私……あの人に惚れ薬飲ませちゃった」
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