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46、茶葉を作ろう(3)

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 家に帰ったら、早速茶葉作りに取り掛かる。
 スイウはリビングのテーブルの上に布を敷き、その上に採ったばかりの月の映る水面草を少量広げた。

「想織茶の茶葉の作り方は、属性に因って異なる。水属性なら、凍らせて乾燥させる。火属性は、炒るか蒸してから乾燥。風は自然乾燥、地は土に埋めて結晶化を促す」

 それぞれの個性を現したような製造工程だ。

「ということは、月の映る水面草は凍らせて乾燥ですか」

「そうだ」

 リルの言葉に頷いて、スイウは植物に手を翳す。すると、水面草にピシリと霜が下り、一瞬にして消えたと思うと、宝石の欠片のように固く乾燥した茶葉が出来上がっていた。

「はやっ! こんな簡単にできちゃうんですか」

 驚くリルに少しだけ目を細め、スイウは新しい水面草を一掴みテーブルに置いた。

「では、やってみてくれ」

「私がですか?」

「簡単なのだろう?」

 ……余計なことを言った。

「簡単っていうのは短時間って意味で、作業が簡単そうって意味じゃないんですけど……」

 ぶつぶつと言い訳を並べながら、リルはテーブルの前に立つ。

「私、凍らす魔法とか知りませんけど」

 一応、尋ねてみると、

「知っている」

 魔法使いはつれない答えを返す。

「水魔法が使えるなら出来るはずだ」

 断言されると、やらないわけにはいかない。リルは深呼吸して、月の映る水面草に手を翳す。

(クレーネさんはなんて言ってたっけ?)

 ――リルが水になるの。

(私が……水になる)

 ――魔法の源は精神力だ。

 スイウの声も重なる。

「凍れ凍れ凍れ」

 かっこいい呪文なんか知らない。だから叶えたい望みを唱える。
 指先が冷たい。手のひらから白い冷気が溢れる。

「……凍れ!」

 リルの命令に、テーブルの上の水面草は一瞬にして霜に覆われる。

「やった!」

 だが、喜んだのも束の間。霜はすぐに溶けて、水面草はびしゃびしゃに濡れて萎れてしまった。

「これって……」

「失敗だな」

「あうぅ~」

 すぱっと現実を突きつけられ、リルは膝から崩れ落ちる。貴重な茶葉の原料を無駄にしてしまった。

「凍らせたらすぐに乾燥させる。蒸発も水の作用だから、君にも使える魔法だ」

「そうは言われましても……」

 スイウの説明に、リルは眉間にシワを寄せる。

「何かコツはありませんか? 凍結と乾燥をスムーズに繋げる方法とか」

 少女の藁にもすがる質問に、魔法使いは上目遣いに考えて、

「経験、かな?」

「……」

 今のところ、どうにもならないアドバイスだった。
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