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2話

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 ロバートは、生まれる前からの許嫁であるオリビアが、とにかく気に入らなかった。
 まず、一歳年上なのが気に入らない。同じ王立学園に通っているが、ロバートの成績は下から数える方が早いのに、一学年上のオリビアが学年主席なのも気に入らない。それに……。

「いいよなぁ、オリビア嬢。学園一の才媛! 俺もあんな美人と結婚してぇよ」

「はぁ!? ふざけんなよ。親同士の取り決めで、無理矢理あんなババアと結婚する身にもなれよ!」

 同級生にからかわれると、つい悪態をついてしまう。
 ……オリビアが男女問わず人気の美人であることも気に食わない。
 ロバートは、自分で選べない運命にうんざりしていた。
 何年も前から父に「オリビアとの婚約を破棄したい!」と訴えていたが、解った解ったと笑っていなされていた。
 自分より年上で、自分より評価が高いオリビアを、ロバートはずっと苦々しく思っていた。
 思えば子供の頃からあいつはいけ好かない奴だった。
 いつもニコニコしているから、泣かせてやろうと毛虫を消しかけたが、涙一つ浮かべなかった。教科書を破ったり、廊下で会う度に突き飛ばしたりしたが、困ったように微笑むだけでやり返しても来なかった。
 そして、その度に父や弟に説教をされるのもムカついた。俺が所有物に何しようが俺の勝手だ!
 ロバートはエンバー家の長男で跡取り息子なのに、両親がオリビアばかりを褒めるのも腹が立つ。「オリビアがいればエンバー家は安泰だ」「チャールストン家には感謝してもしきれない」と。

 ……あんな男を立てることも知らない年増女をエンバー家に入れてなるものか。

 もうすぐオリビアは学園を卒業する。
 この国には結婚年齢に制限はないが、けじめとしてオリビアは学園卒業後にエンバー家に同居し、入籍することになっている。
 ロバートの胸に、仄暗い憎悪が宿る。
 あの生意気な女に、とびきりの恥を掻かせてやろう。
 貴族の多い学園では、卒業式後に大規模なパーティーをする習わしがある。
 そのパーティーでは、出席者は正装し、公式の社交パーティーそのままの振る舞いが要求される。
 つまり……婚約者や恋人のいる者は、パートナー同伴で出席することになるのだ。
 オリビアのパートナーは、当然許嫁であるロバートだ。
 ……もし、ロバートが他の女性と出席したら、オリビアはどんな顔をするだろう?
 くっくっと喉の奥から笑いがこみ上げる。
 ロバートは早速行動に出ることにした。
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