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 チャールストン伯爵家とエンバー伯爵家は家業の繋がりから、まだ生まれもせぬ内から当主の互いの子供を結婚させようと約束していた。
 先に生まれたのはチャールストン家の娘の長女オリビアだ。ついで翌年にはエンバー家に長男ロバートは誕生し、二年後にチャールストン家に長男、エンバー家に次男が生まれた。
 運良く跡取り息子まで誕生したチャールストン家は、約束通り娘のオリビアをエンバー家に嫁がせることにした。
 ……のだが。


「オリビア、この書類片付けておけよ」

 とある日の休日。エンバー家に遊びに来ていたオリビアの前に、大量の会計伝票が積み上げられた。置いたのはエンバー家の長男、ロバートだ。
 オリビアははて? と首を捻る。

「これはお義父とう様がロバート様に家業の勉強の為に処理を頼んだ伝票ですよね? わたくしがやってしまっては意味がないのでは?」

 彼女のもっともな疑問に、ロバートは苦々しく吐き捨てる。

「どうせエンバー家うちに嫁ぐんだから、お前がやっても同じだろ? こっちは年増のババアを娶ってやるんだ。いうことを聞けよ!」

「ですが……」

「俺は友達と遊んでくるから、帰ってくるまでに終わらせとけよ!」

 バタン! と乱暴に閉まったドアにオリビアはため息をつき、書類の処理を始めた。
 しばらくすると、ティーセットを持った少年が応接室に入ってきた。

「オリビア、一緒にお茶しよう! ……って、なにこの書類?」

 びっくりまなこで素っ頓狂な声を上げたのは、ミハエル。エンバー家の次男だ。

「これ、兄さんが父さんに頼まれてたやつじゃん。オリビアがやることないよ」

 頬を膨らます次男に、チャールストン家の長女はにっこり微笑む。

「いえ、わたくしはエンバー家に嫁ぐ身ですから、少しずつでもお仕事を覚えないと」

「オリビアはいい子だね」

 三歳年下のミハエルが苦笑する。

「じゃあ、一緒にやろ? 僕も家業を覚えなきゃだし。もうすぐ料理長のチェリーパイが焼き上がるんだ。ちゃっちゃと終わらせてティータイムを満喫しよう?」

「あら素敵ですね」

 張り切るミハエルにオリビアも笑顔を零し、二人は伝票を片付け始めた。
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