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夢を追うもの笑うもの21
しおりを挟む朝食を食べながら今日の予定を共有する。
朝食の時間は大事なミーティングの時間でもあるのだ。
「俺は特に予定は無し、朝の鍛錬が終わり次第フリーだな」
俺は暇な事が多いので好きな事をやれる。
「私と純は冒険者協会の新人を迎え入れる予定だ。今日から本格的に冒険者協会の若手を鍛えていく、明日の合宿にも参加させるつもりで動いている」
PCHの加護持ちを鍛える為の合宿に冒険者協会の新人も参加させるつもりらしいが、現状冒険者協会の新人の子らは加護持ちが一人も居ないので不安ではある。
「それは良いけど、加護格差とかで揉め事が起きないように気を付けないと駄目だぞ……誰だって見下されるのは良い気分じゃないからな」
「分かってる。だが、反骨心を植え付ける良い機会でもあるからな……ある程度は許容する事にしている。遅かれ早かれ、加護持ちとの溝や格差は生じるだろうからな……まぁフォローはお父さんとお母さんに回ってもらうから大丈夫だろう!」
一馬さんと雅さんがフォロー役に回ってくれるのは有難い。
一馬さんは元々は加護無しでダンジョンを攻略した事で加護を取得出来ているので、加護無しの冒険者協会の新人の子らにとっては希望であり良き理解者になってくれると思う。
雅さんは今も加護無しだが、今後加護を取得すれば加護無しの人がダンジョンを攻略する事で加護を得る事が出来るという証明になってくれる。
「冒険者協会の新人って結局、何人居るんだ?」
「冒険者協会入りになったのは藤堂光輝、遠藤日向、安藤御影、岩藤幸子の4人だけだな。候補者はまだ数人居るが、ある程度この4人が育ってから入れようと思っている。とりあえずは4人が冒険者協会のダンジョン攻略組の第一期生という事だな」
「おいおいおーい!遠藤と御影ちゃんは本当に良いのか?ただの一般人だろ、しかも遠藤に関してはうるさいだけの奴だぞ?岩藤さんは少し特殊な状況だから保護する意味合いも兼ねてるから良いだろうけどさ……」
藤堂光輝に関しては自分で親を説得したのでもう何も問題は無いだろう、引き籠っていた自分を変えたいという強い意志もある上に千尋の会見を見た直後にDMを送ったその行動力は褒めるべきだ。
遠藤は騒がしいだけの馬鹿なので不安しかない、それに覚悟も決意も無さそうだ。
御影ちゃんは良く分からないが、祖母にあたる常連の安藤さんとその親御さんが良く許可を出したなという感じだ。
岩藤さんはダンジョン攻略組としてじゃなくてもこちら側に引き込むつもりだったのだが、千尋と純の判断でダンジョン攻略組に正式に加入させるようだ。
「何も問題無いよ!むしろ適正が一番高そうなのは日向ちゃんだと思う!拓美君が日向ちゃんと相性悪いから、良く見えないだけで元々日向ちゃんのスペックはかなり高いからね!」
遠藤のスペックが高いと感じた事は無いので不安しかない。
遠藤の境遇を考えれば今後稼げると予想される冒険者という新たな職種に飛び付いたのは金に対する嗅覚の鋭さなのかもしれないし、直感型の成れの果てのような奴なので純に評価されているのはそういう面だったりするのかもしれない。
「まぁ俺が何か教えたりする訳でも無いから良いけどさ……遠藤に何かを教えるのは大変だぞ」
俺にとってはカフェバイトの後輩にあたる遠藤は仕事教える為に俺が仕事の説明をしても何も伝わらないので、新人教育ではかなり苦労した覚えがある。
「大丈夫だよ!やり方を見せればどんどん吸収していく天才型だから日向ちゃんは!千尋ちゃんの動きを見せてあげるだけで勝手に成長していく筈だよ!」
俺には俄かには信じがたいが、純が言うのだからある程度はそういった素養があるのだろう。
「ちなみに今日からウチの道場に内弟子として4人が来るからな、今日は私達も道場に泊まる事にしたから晩御飯は要らないからな」
「了解です。今日の晩御飯は千尋と純は無しですね!明日の朝食は如何致しますか?」
我が家の食の責任者である英美里が明日の朝食をどうするかの確認をしている。
「ふむ……英美里の手料理が食べられ無いのは寂しいが朝食も無しだな……それと明日からは合宿所の近くの旅館に宿泊予定だから、合宿が終わるまでは留守にするから。私と純のご飯も合宿期間は用意しなくて良いからな」
「はい!」
合宿が何日になるのかはPCHの加護持ち組の成長度合いで変わってくるが、少なくとも1週間は我が家には戻ってこないだろう。
嫁が留守の間に俺自身も成長する為に、気の習得を本格的にしようと思っている。
「では、各々何かあれば報連相をしっかりするように!じゃあ朝練に行きますか!」
日本中のダンジョンを攻略していくには戦える人員を増やさねばならないが、最初はどうしても少人数づつしか増やせない。
この先冒険者協会のダンジョン攻略組の第一期生や、PCHの加護持ちの方々が指導する側に回れるようになれば人員不足も解消されていくと信じて、俺達は俺達が出来る事を後進に伝えていくしかない。
☆ ☆ ☆
数日間とはいえ、千尋と純が我が家から居なくなるというのはとても寂しい事だ。
その寂しさを埋める為にも俺は俺で気の扱いをベル大先生に指導して頂いているが、如何せん上手くいかない。
「上達の近道は継続ですよマスター!もっと気合を込めてください!意識が散漫になっていますよ!」
「分かってるけど……流石に気になるだろ……」
怠惰ダンジョンの技術部門のインテリ悪魔の博士とドワーフの助手ちゃんがレベリングの為にスライム狩りをしているのだが、二人の手には魔法を撃ち出す事が出来る魔法銃が握られている。
魔法銃は博士と助手ちゃんとリーダーの3人が魔法と科学の融合したPCの開発の為に試作したものらしい。
「槍術とか気とかもうどうでも良い!俺は魔法銃を極めよう!」
魔法銃は男の浪漫なのだから俺が槍と気を諦めるのは仕方ない事だと思う。
「マスター!魔法銃の誘惑に負けないでください!気の操作を覚えて魔力と掛け合わせる方が恰好良いですよ!」
「そんな事出来るのか!」
魔法と科学の融合も良いが、魔法と気の融合の方が心惹かれる。
やはり俺は槍術と気の操作を極めようと思う。
「出来るかどうかは試した事が無いので分かりませんが、たぶん出来る筈です!後で練習してみますね!」
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