上 下
94 / 155

夢を追うもの笑うもの21

しおりを挟む

 朝食を食べながら今日の予定を共有する。

 朝食の時間は大事なミーティングの時間でもあるのだ。

「俺は特に予定は無し、朝の鍛錬が終わり次第フリーだな」

 俺は暇な事が多いので好きな事をやれる。

「私と純は冒険者協会の新人を迎え入れる予定だ。今日から本格的に冒険者協会の若手を鍛えていく、明日の合宿にも参加させるつもりで動いている」

 PCHの加護持ちを鍛える為の合宿に冒険者協会の新人も参加させるつもりらしいが、現状冒険者協会の新人の子らは加護持ちが一人も居ないので不安ではある。

「それは良いけど、加護格差とかで揉め事が起きないように気を付けないと駄目だぞ……誰だって見下されるのは良い気分じゃないからな」

「分かってる。だが、反骨心を植え付ける良い機会でもあるからな……ある程度は許容する事にしている。遅かれ早かれ、加護持ちとの溝や格差は生じるだろうからな……まぁフォローはお父さんとお母さんに回ってもらうから大丈夫だろう!」

 一馬さんと雅さんがフォロー役に回ってくれるのは有難い。

 一馬さんは元々は加護無しでダンジョンを攻略した事で加護を取得出来ているので、加護無しの冒険者協会の新人の子らにとっては希望であり良き理解者になってくれると思う。

 雅さんは今も加護無しだが、今後加護を取得すれば加護無しの人がダンジョンを攻略する事で加護を得る事が出来るという証明になってくれる。

「冒険者協会の新人って結局、何人居るんだ?」

「冒険者協会入りになったのは藤堂光輝、遠藤日向、安藤御影、岩藤幸子の4人だけだな。候補者はまだ数人居るが、ある程度この4人が育ってから入れようと思っている。とりあえずは4人が冒険者協会のダンジョン攻略組の第一期生という事だな」

「おいおいおーい!遠藤と御影ちゃんは本当に良いのか?ただの一般人だろ、しかも遠藤に関してはうるさいだけの奴だぞ?岩藤さんは少し特殊な状況だから保護する意味合いも兼ねてるから良いだろうけどさ……」

 藤堂光輝に関しては自分で親を説得したのでもう何も問題は無いだろう、引き籠っていた自分を変えたいという強い意志もある上に千尋の会見を見た直後にDMを送ったその行動力は褒めるべきだ。

 遠藤は騒がしいだけの馬鹿なので不安しかない、それに覚悟も決意も無さそうだ。

 御影ちゃんは良く分からないが、祖母にあたる常連の安藤さんとその親御さんが良く許可を出したなという感じだ。

 岩藤さんはダンジョン攻略組としてじゃなくてもこちら側に引き込むつもりだったのだが、千尋と純の判断でダンジョン攻略組に正式に加入させるようだ。

「何も問題無いよ!むしろ適正が一番高そうなのは日向ちゃんだと思う!拓美君が日向ちゃんと相性悪いから、良く見えないだけで元々日向ちゃんのスペックはかなり高いからね!」

 遠藤のスペックが高いと感じた事は無いので不安しかない。

 遠藤の境遇を考えれば今後稼げると予想される冒険者という新たな職種に飛び付いたのは金に対する嗅覚の鋭さなのかもしれないし、直感型の成れの果てのような奴なので純に評価されているのはそういう面だったりするのかもしれない。

「まぁ俺が何か教えたりする訳でも無いから良いけどさ……遠藤に何かを教えるのは大変だぞ」

 俺にとってはカフェバイトの後輩にあたる遠藤は仕事教える為に俺が仕事の説明をしても何も伝わらないので、新人教育ではかなり苦労した覚えがある。

「大丈夫だよ!やり方を見せればどんどん吸収していく天才型だから日向ちゃんは!千尋ちゃんの動きを見せてあげるだけで勝手に成長していく筈だよ!」

 俺には俄かには信じがたいが、純が言うのだからある程度はそういった素養があるのだろう。

「ちなみに今日からウチの道場に内弟子として4人が来るからな、今日は私達も道場に泊まる事にしたから晩御飯は要らないからな」

「了解です。今日の晩御飯は千尋と純は無しですね!明日の朝食は如何致しますか?」

 我が家の食の責任者である英美里が明日の朝食をどうするかの確認をしている。

「ふむ……英美里の手料理が食べられ無いのは寂しいが朝食も無しだな……それと明日からは合宿所の近くの旅館に宿泊予定だから、合宿が終わるまでは留守にするから。私と純のご飯も合宿期間は用意しなくて良いからな」

「はい!」

 合宿が何日になるのかはPCHの加護持ち組の成長度合いで変わってくるが、少なくとも1週間は我が家には戻ってこないだろう。

 嫁が留守の間に俺自身も成長する為に、気の習得を本格的にしようと思っている。

「では、各々何かあれば報連相をしっかりするように!じゃあ朝練に行きますか!」

 日本中のダンジョンを攻略していくには戦える人員を増やさねばならないが、最初はどうしても少人数づつしか増やせない。

 この先冒険者協会のダンジョン攻略組の第一期生や、PCHの加護持ちの方々が指導する側に回れるようになれば人員不足も解消されていくと信じて、俺達は俺達が出来る事を後進に伝えていくしかない。


 ☆ ☆ ☆


 数日間とはいえ、千尋と純が我が家から居なくなるというのはとても寂しい事だ。

 その寂しさを埋める為にも俺は俺で気の扱いをベル大先生に指導して頂いているが、如何せん上手くいかない。

「上達の近道は継続ですよマスター!もっと気合を込めてください!意識が散漫になっていますよ!」

「分かってるけど……流石に気になるだろ……」

 怠惰ダンジョンの技術部門のインテリ悪魔の博士とドワーフの助手ちゃんがレベリングの為にスライム狩りをしているのだが、二人の手には魔法を撃ち出す事が出来る魔法銃が握られている。

 魔法銃は博士と助手ちゃんとリーダーの3人が魔法と科学の融合したPCの開発の為に試作したものらしい。 

























「槍術とか気とかもうどうでも良い!俺は魔法銃を極めよう!」

 魔法銃は男の浪漫なのだから俺が槍と気を諦めるのは仕方ない事だと思う。

「マスター!魔法銃の誘惑に負けないでください!気の操作を覚えて魔力と掛け合わせる方が恰好良いですよ!」

「そんな事出来るのか!」

 魔法と科学の融合も良いが、魔法と気の融合の方が心惹かれる。
 やはり俺は槍術と気の操作を極めようと思う。

「出来るかどうかは試した事が無いので分かりませんが、たぶん出来る筈です!後で練習してみますね!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...