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世界が変わっても人間そんなに変わらない5

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 ベルのダンジョン考察とゴブリンの運用方法を聞いているといつの間にか英美里が部屋に居て声をかけてきた。
「ご主人様!昼食の用意が出来ました!」
「ありがとう、すぐ行くよ!」
 英美里に返事を返して、ベルにも返事を返す。

『昼ご飯出来たみたいだから、食べてくる。また何かあったら念話するから!』
『はい、マスター。』
 英美里に任せた昼ご飯がどんなものか期待しながら居間へと移動する。
 居間へ着くと机の上には蓋があるので中身はわからないどんぶり鉢と、汁椀、そしてシーチキンとレタスとオニオンのサラダが二人分並べられていた。
「なんだろう……幸せだな」
 幸せを噛みしめながら席に着くと英美里も俺に続いて席に着き、ニコニコと笑顔でこちらの様子を窺っていた。

「いただきます」
 両手をしっかり合わせ挨拶をすると英美里も続いてくれる。
「召し上がれ!では私も、いただきます」

 早速どんぶり鉢の蓋を開ける、開けた瞬間湯気が上がりふわっと揚げ物の香ばしい香りと甘辛い醤油の匂いが鼻腔を通って直接脳まで突き抜ける、これはうまいと食べる前から脳が判断を下しているのが分かった。
 どんぶり鉢の中にはキングオブ丼のかつ丼様がそこには居た、溶き卵とダシで綴じられたとんかつと玉ねぎその上には贅沢にも半熟の目玉が乗せられていた。
「かつ丼に目玉が付いてやがる……なんて贅沢なんだ!」
「溶き卵と目玉のまま綴じた卵の両方を楽しんでいただければと思いましたので!」
 かつ丼を掻き込みたい衝動を抑えて汁椀の蓋も開け放つと白味噌の優しく甘い香りが体の緊張を解き解してくれる、実家に居るのに何処か郷愁を感じさせる香りに心が落ち着いてくる、味噌汁の具は豆腐とわかめと青ねぎというシンプルでありながらお互いが邪魔せず活かしあう素晴らしい布陣。

「英美里ありがとう、それとごめん……少し食べ方が汚くなるかも知れないけど、許してくれ!」
 英美里に感謝と謝罪をしてから、かつ丼を胃袋に流し込むように掻き込んだ。

 それからは只々無言で英美里に作ってもらった昼ご飯を平らげていく。


 ☆ ☆ ☆


「俺さぁ……昼は毎日かつ丼でもいいかも知れない」
 食べ終わり、満腹になった腹を擦りながら呟いた。
「毎日は流石に飽きてしまうと思われますので、食べたくなったら言ってくださいね!」
 かなり早く食べ終わったと思った俺だが、気付けば英美里は既に食べ終えこちらを微笑みながら見つめていた。
「俺の語彙力じゃこんな陳腐な表現しか出来ないけど、美味しかった!ごちそうさまでした!」
 作ってくれた英美里に感謝しながら両手を合わせた。
「お粗末様でした!ごちそうさまです!食後のコーヒーを入れてきますね!」
「お願いするよ」
 言うやいなや食器を台所に運び、暫く席で待っているとマグカップをお盆に乗せた英美里が戻ってくる。
「どうぞ」
 短い言葉と共に机の上にマグカップをそっと置いてくれた、軽く手を上げ感謝の意思を伝える、再び台所へと戻る彼女の後ろ姿を見つめながら幸せを噛みしめていた。


 ☆ ☆ ☆


 コーヒーも飲み終え居間でまったり寛ぎながら暇だなぁとぼんやり考える。
 正直ダンジョンもベルに任せて置けば良いし俺自身やらないといけないことは特に無い、食料も当分は買いに行かずとも大丈夫、なので何かやる事無いかと英美里に聞いてみる事にした。
「英美里ぃなんかやる事ある?」
 台所に居る英美里に声を掛けると丁度食器の片付けも終わったのか、が居間にやってきた。
「いえ特にはありませんが……暇であるならばエルフ
の様子でも見に行きますか?」
「そうだね!そうしよう!」
 英美里の提案に否もなく流されるままにエルフの様子を見に行くことを決めた、英美里の提案があったから行くのであって俺がエルフに会いに行きたいと思っていた訳では決して無い。

「そういえば……野菜の種と果物の種買ってたから渡してやろう!」
「種ですか……一応ベル様に連絡を入れた方が良いのでは無いでしょうか?どんな作物を作るかは決めておられるでしょうし」
 それもそうかと、ベルに念話をかける。

『ベルー!』
『はい、マスター。どうされました?』
 連絡を入れるとすぐに返事が返ってきた。
『野菜の種とか果物の種とかあるんだけどエルフに渡しても良いかな?』
『はい!マスター!それはありがたいです!日本産の種で作る作物とダンジョン産の種で作る作物の違いがあるか検証出来ますから!是非ともエルフに渡して下さい!』
 検証できると知ってかテンションが上がっているベルに了承の返事を返す。
『分かった、エルフに渡しとくから!』
『はい!マスター!それと、エルフリーダーに念話スキルを付与しておきましたので念話してあげてください!』
『リーダーだけなの?それって他のエルフ達が可哀そうじゃない?』
『はい、マスター。今の所はリーダーだけです!DPに余裕が出来てくれば他のエルフにも付与していく予定ですのでご安心を!』
『そかそか、それなら良かったよ。じゃあリーダーに念話してみるよ、またね!』
『はい、マスター!ではまた!』
 ベルとの念話を終えアイテムボックスから買っておいた種を取り出しながらリーダーに念話を掛けてみる。

『もしもーし!リーダー!聞こえる?』
『はい、聞こえますよ児玉様!何か私に用事でしょうか?』
『おー!繋がった!念話を付与してもらったってベルに聞いてね、一応確認の為にね!』
『わざわざありがとうございます、本来ならこちらから挨拶するべきでしたのに申し訳ありません』
『いや、そういうの気にしなくて良いから、それと野菜と果物の種があるから渡しておこうと思って!どういう使い方をするかとか詳しくはベルに聞いてくれ!』
『ありがとうございます!では児玉様のお屋敷に取りに行きますね!』
『いやいや、暇だから俺がそっちに行くよ!何処に居るの?』
『では、お言葉に甘えさせて頂きます、今は畑に居ります』
『分かった!そっちに今から行くから待ってて、じゃあまた後で!』
 エルフリーダーとの念話を終え、腹ごなしの散歩がてら歩いて畑に向かおうと英美里に声を掛ける。
「じゃあ種をエルフに渡しに行こうか!」
「それは良いのですが……本体で向かわれるのですか?」
「散歩がてら行こうと思ったんだけど……どうして?」
 心配そうに英美里が聞いてくる。
「<怠惰の業>は大丈夫でしょうか?種を渡しに行くというある種業務の一環なのでは無いかと思いまして……」
 英美里の言う事はもっともだが、俺は何も心配などしていなかった。
「たぶん大丈夫!駄目でもベルと英美里がなんとかしてくれるだろ?だから検証も兼ねて俺自身の体で行くよ」
 安心させるように微笑みかけながら英美里にそう告げる。
「分かりました!何があっても私がご主人様をお守りします!」
 綺麗な顔が少し崩れるかのように鼻息を荒げて決意を固めながら頼もしい返事が返ってくる、その様子がなんだかおかしくて嬉しくて自然に笑顔になる。
「まぁたぶん大丈夫だと思うけど、段々<怠惰>について感覚的に分かってきたみたいだし!とりあえずエルフの所に行こうか」
 なんとなくだが感覚的にどういう行動を取れば<怠惰の業>が発動しそうかどうかがわかる様になってきていた、検証はしていないので確証は無いが恐らくこれもレベルアップの恩恵なのだと思う、明らかに初日よりもスキルについて感覚的にではあるがわかる様になってきているし、慣れとかもあるのかも知れないが今ならそうそう発動させない自信がある。


 ☆ ☆ ☆


 本体のまま家から出て、畑に向かう。
 昼ご飯で満腹で少し苦しいくらいだったお腹も段々と気にならなくなってきた頃に畑に着いた。
 畑ではエルフが園芸用の小さなスコップを片手に持ち何かの種を植えていた、その速度は人間では不可能な程素早く行われており圧巻の一言だった。

「はっや……人間とは基礎スペックが違うんだな、流石エルフだ」
「私ならもっと素早く行えます!」
 何故か張り合ってくる英美里を「偉いね」と軽く流しながらエルフリーダーを呼ぶ。

「リーダー、種を持ってきたよ!それにしても早いねちょっとビックリしたよ!」
 リーダーが細身でありながらも豊満な体を揺らしながらこちらに駆け寄ってくる、惜しむべきは服が完全に米国の農家スタイルだという事ぐらいであろう。
「児玉様!お待ちしておりました!お恥ずかしながら魔力が尽きたので手作業で行ってますので速度はかなり遅くなっております……種を届けてくださりありがとうございます!これらもしっかりと育成させて頂きますね!」
 魔力が尽きたから手作業という事はこれらの作業も魔法で行えるのかと感心しつつ働きすぎでは無いかと心配になる。
「魔力が尽きてるんだから仕事はちょっと休んだら?あんまり無理は駄目だよ?ベルに無理やりやらされてるんだったら俺からベルに言っておくから」
「いえ、本来は魔力が尽きた段階でお仕事は終わりなのですが、ベル様が今私たちの住居を作成してださっているのでその待ち時間の間手持無沙汰でしたので趣味でやっておりました!」
「趣味?畑仕事が?」
「いえ、畑仕事というよりかはガーデニングに近い感覚ですね!ですから手作業で丁寧に植えて植物達と触れ合っていたんですよ!」
 全く理解できないエルフの感覚に戸惑いながらも気になった事があるので聞いてみた。
「そういうもんですか……ところで、ベルが住居を作ってるって言ってたけど何処に作ってるの?」
 ベルが住居を作れるという事については後でベルに念話で聞こうと思い、住居の場所をエルフに聞いてみた。
「はい、山の木々に囲まれた畑と洞窟の間ぐらいの場所を提供して頂いたのでそこに作ってもらっています」
「へー!完成したら見に行っても良いかな?」
「勿論です!是非いらしてください!まだ何もありませんので面白いものも無いとは思いますが皆で精一杯歓迎させて頂きますね!」
「いやいや、そんなに気張らなくても良いからね、ちょっと見てみたいだけだから」
「はい!では完成しましたらベル様から連絡が入りますので連絡が入り次第、児玉様に連絡いたしますね!」
「わかった、一応ベルにも念話で聞いてみるからちょっと待っててね!」
 一言断りを入れてベルに念話を掛ける。
『ベルー!』
『はい、マスター!エルフの住居は現在鋭意製作中ですので夜までには出来上がりますのでそれまで家に戻られてても良いですよ!出来上がり次第連絡しますので!』
 ベルに先んじて聞きたかった事の答えが返ってくる。
『あれ?なんで俺が聞きたい事知ってんの?』
『はい!マスター!英美里から念話で聞きました!』
『そういう事ね……ていうか家も作れるんだな?』
『はい!マスター!DPがあれば大体のものは作成出来ますよ!DPがあれば!』
『へー!やっぱダンジョンって凄いんだな』
『そうですね、ですがそれは管理するもの次第だと思います』
『まぁそれもそうか……て事はベルが凄いんだな!流石ベル!』
『はい!マスター!それ程でも……ありますね!』
『調子に乗り過ぎないようにな?じゃあまた後で!』

 ベルとの念話を終え、エルフに一旦家に戻る旨を伝えてから家に帰っていく。
「ベルが完成したら俺にも連絡くれるらしいから、一旦帰るよ!また後で念話するから!」








 エルフの家に訪問するドキドキで顔がにやけながら畑を後にした。




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