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世界が変わっても人間そんなに変わらない2
しおりを挟むアバターの新機能追加の報告ついでに英美里とともにベルの所に向かう、昨日よりも整備された山道は綺麗な獣道から、散歩には丁度良さそうな道になっており、ベルの頑張りが目で見て分かり、嬉しくなるが防衛的観点から見てダンジョンの急所とも言える場所へのアクセスがこんなにも容易で大丈夫なのかと心配になった。
「ベルー!来たぞー!」
『はい、マスター!アバターの新機能を早速活用している様で、良かったですね!』
「おぉ!かなり便利な機能だよ!これでダンジョン内での作業問題もかなり解決したし、アバターに感謝だな!ところでベル、ここに来るまでの道が整備されてアクセスしやすくなったのは良いんだが、防衛的にどうなの?」
『はい、マスター。現状敵も居らずマスターのスキル効果だけで充分過ぎる防衛力がありますので、まずは利便性を重視して、無駄なDPを使わず、DPがより多く得られる環境作りの為に動いて居ますので本格的な防衛力の強化は後回しにしております』
俺が余計な気を回さずともベルはベルで今後を考えて行動しているようで、<怠惰ダンジョン>はベルに任せていれば大丈夫だなと再認識する。
「りょーかい!まぁちょっと気になっただけだから、引き続き<怠惰ダンジョン>は任せるよ!」
餅は餅屋、ダンジョンはダンジョンコアに任せて置けば良いのだと面倒だと思っている訳では無いと自分に言い聞かせる。
『はい、マスター。それでひとつご提案がありまして、今後DPを稼ぐ手段としてダンジョン産の農作物の育成と家畜の育成を行っていきたいのですが、単純に労働力が足りませんので、モンスターの生成を行いたいのですが……一番安価な<ゴブリン>で運営していくか、かなり高価ではありますが色々な場面で活躍が期待できる<エルフ>で運営していくかマスターの意見を聞きたいのです』
「エル……いや、それぞれのメリットとかデメリットとか聞かせてくれる?」
ゴブリンかエルフと聞いて反射的にエルフと答えようとしてしまうが、鋼の理性によりそれぞれのメリット、デメリットをベルから聞く事にした。
『はい、マスターではまずゴブリン運営のメリットから、さっきも言った通り安価であり数を揃えやすい事と繁殖能力の高さから、恒久的に労働力を得られますし、個としての防衛力はあまり期待出来ませんがこの<怠惰ダンジョン>においてはマスターのスキル効果も相まって、軍団として運営すればかなりの防衛力を得られる事などですね、デメリットとしては領地にも限りがありますので、ある程度数を管理しなければいけないという事、見た目が明らかにモンスターである為ダンジョン外の者にバレるリスクが増す事、知能が低く作業が雑になり、農作物や家畜の品質に影響がある事、知能が低いことによるトラブルが予想出来ない事、大体このぐらいかと、あくまでも予想でしかありませんので、参考程度ですが』
「なるほどなぁ……デメリットがキツいな……」
正直あまり真剣には聞いていなかったが、通常のダンジョンでは雑魚かもしれないが<怠惰ダンジョン>では数の暴力というのは無類の強さを誇る事が予想出来るので、ゴブリンは良さそうだが、デメリットがやば過ぎるので俺の中では既に無し寄りに傾いている、エルフがどうとかでは無く、本当の本当に。
「じゃあ、エルフについて詳しく聞こうか!」
鼻息荒くベルに説明を促す。
『はい、マスター。エルフでの運営のメリットは知能の高ささから難しい作業が可能な事と植物との親和性の高さによる農作物や家畜の品質の向上効果が見込める事、今後のダンジョン運営において発生するであろう様々な作業にも適正がある事、魔法適正が高く魔法が使用出来る事、見た目が人間に似ているのでダンジョン外の者にバレるリスクが低い事などですね、デメリットは高価な事と繁殖力が低い事から数を増やしづらく、補充もしにくいことですね』
「エルフにしよう!」
無意識に即答していた、ゴブリンの説明を聞いた時点でほぼ結論は出ていたので問題は無い。
『はい、マスター!では<怠惰ダンジョン>は今後エルフを軸に運営していく方針にしますね、生成する数は雌雄が2組の4体生成ですね、<夫婦>としてそれぞれ農作物類の長と家畜類の長として運営していきますね!』
「それはダメだ!」
思わず声が出る。
『ナゼです、マスター?』
ベルの冷たい無機質な声にビビりながらゴニョゴニョと囁くように拗ねた子供の様に返事を返す。
「……俺だってまだ結婚して無いし彼女も居ないし……近くにそんな奴らが居たら気が滅入るというかなんというか……とにかく嫌だ……」
理性では夫婦で生成すれば今後、子共エルフが生まれる可能性があるのでその方が良いと分かっては居るのだが、心の内側の奥深くに沈殿するドロドロとしたマグマのような感情はどうやら鋼の理性でも抑えきれないらしい。
「差し出がましいかとは思いますが私も意見を言わせて頂きます、私はご主人様に賛成です、いくら生成モンスターであるとは言え、男女である以上余計なトラブルが発生する可能性が高まりますので、現段階ではまだ安定していない<怠惰ダンジョン>では無用なトラブルは極力排除するべきかと思います」
今まで聞き役に徹していた英美里から思わぬ援護が入り、ここが攻め時だと思い再び口を開こうとするが英美里は続けて喋る。
「なので男エルフを4体で良いかと思います、男エルフの方が体力的にも肉体的にも作業には適しているはずですから!」
ぐぅの音も出ない正論に血涙を流しながら、口を開いた。
「……いや、だが、それは……そうだね……」
『……なるほどそのような手が』
何か納得したように呟くベル、まぁしょうがないよなこれはと、なんとか自分を納得させる。
『ふぅ……マスター!マスターがあまりにも悲しい顔をされるので仕方なく今回は女エルフを4体生成致します!ですが、彼女達には名付けは出来ませんからね!これは悲しむマスターに対する私の慈悲なんですからね!感謝してくださいね!』
ベルの唐突なツンデレに一瞬呆気に取られるが、ベルの言った言葉を理解し歓喜する、女神がここには居た。
「ありがとうベル!マジ女神!大好き!愛してる!」
憧れの生エルフに出会えることにテンションは最高潮に達した。
『はい!マスター!私も愛してますよ!』
上機嫌なベル上機嫌な俺、微笑ましいものでも見るかの様な英美里、みんなが幸せだった。
『……英美里もありがとう!あなたの事を少し誤解していたみたい!これからもマスターの事一緒に支えていこうね!』
「はい、ベル様!」
ベルの英断により全員が幸せな気分になった。
そして遂にエルフの生成が行われる。
『ではマスター、女エルフを生成しますので一旦コアルームから退出してくださいね!』
俺は生成の瞬間を初めて見られると思っていたが、ベルに退出を命じられてしまい面食らう。
「えっ……なんで?」
『ハイ、マスター生成されるモンスターは衣服を着ていませんので退出をお願いします』
心なしか不機嫌なベルの声、最近ベルの感情の機微が分かるようになってきて嬉しい反面、生成の瞬間に立ち会えない残念さに渋々返事を返す、決してやましい気持ちは無い。
「わかったよ……」
コアルームから素直に退出して一旦アバター操作を辞めてアイテムボックスからお茶を取り出しまったりしながら待っていると、ベルから念話がはいる。
『マスター、エルフの生成が終了しました』
『わかった、ありがとう』
飲みかけのお茶をアイテムボックスに収納して、再びアバター操作を開始した。
コアルームの扉を開き中へ入る、そこには夢にまで見た生エルフの姿があった。
「……エルフはやっぱりエルフなんだ……」
いかにも農作業用の少し野暮ったい青いオーバーオールに無地の白いTシャツを着たエルフが4体、足元は農作業用の長靴、手には軍手が嵌められ、頭には大きめの麦わら帽子、髪は美しい金色でどこからどうみてもアメリカの農家の方だがとにかく全員が西洋系の整った顔立ちをしており、なにより耳が少し尖っている、体の線は全員細いのに胸だけはこれでもかと自己主張激しく隆起しており、ハリウッドスターを目の前にしたかのように緊張する。
「あ……その、初めまして、えと、これから、よろしくお願いします……」
緊張して小声でボソボソと挨拶をする、すると一人のエルフが代表して一歩前に出て、挨拶を返してくる。
「よろしくおねがいします、児玉様!」
何故か苗字で呼ぶエルフに若干困惑する。
「え……あの、何故苗字?」
「いえ……別にこれといって意味があるわけでは……」
エルフがチラっと英美里を見る。
「あ、あの、何か呼ばれたい呼び方があればそのようにしますが……」
怯えるように言葉を紡ぐエルフに何も言えないでいると、英美里が助け舟をだしてくれる。
「ご主人様、呼び方は人それぞれ、自由意思でよいのではないでしょうか?現に私も勝手ながらご主人様とお呼びしておりますし……」
「そ、そうだね!好きに呼んでくれればいいからな?とりあえず鑑定でスキルとか確認するからね?」
こうして、念願の生エルフとの邂逅を果たした俺はエルフ達のステータスを鑑定していった。
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