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再会、そして経緯 1

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 我に返るように力が抜けて行く感覚が全身にめぐる。
 だが、今変に気を抜いては駄目だった。

「わかっ・・た。ごめんリット。ありがとう」
「ったくよ・・・手間掛けさせんなっての」

 リットは俺にローブを返すと一緒に懐から回復薬と取り出して飲み干した。
 倒れ込んでいた体勢からゆっくりと身体を持ち上げ、立てないにしろ、胡坐をかいた状態で見守る事にしたようだった。
 その様子を見て俺も少し安心出来た。

「さて・・・目黒」
「な・・・なんだよ!! 殺すなら殺してみろや!! どうせてめぇには何も出来ねーんだろうが!!」

 まだ威勢良く吠える目黒を見て複雑な気持ちがまた浮上しようとしていたが首を振るって掻き消す。

 冷静に。
 これはあの時、俺が追放された時と同じだ。まずは言葉を選んで落ち着くのが先決だ。俺が知りたい事を、こいつ等しか知らないような事。

 そして俺の過去を魅せられることと、こいつ等が視る未来の力。
 これにはきっと何かしらの関係性があるに違いない。

「どうした、もう未来は視えないのかよ?」
「はぁ!? てめぇわざと言って――。まさか、てめぇはめやがったな!!」

 そうか、気付いてなかったか。俺がこいつ等の事を知らないようにこいつ等も俺の事を知らないのは道理か。
 けれど、もうそれは恐らくもう遅い。未来視そんな事が出来るっていう情報はこちらとしても大きな物だ。
 そしてそれを打ち破った。それもまた事実だ。

「ランク・・・それがお前等の上下関係って事か、なんか哀れだな」
「何っ!?」
「刻越藍っていう奴を偽物、裏切り物って迫害追放した癖にまだ足りないってことだもんな」

 人は常に対立する存在を求めている。
 闘争心からなのかはわからない、だがどちらかというと俺の時代の世界では主に防衛本能から来る物の方が多い気がする。
 奴は敵だ。という言葉よりも。自分は敵じゃない。という言葉の方が好まれる。

 その言葉に安堵する為に敵を作る。ふざけたことだ。

 自分は敵じゃない、お前等が敵だ。敵じゃないなら言う事を聞け。あまりにも醜い。

「俺も同じ・・・か」

 今目黒に行ってる事もそれに等しいか。
 だが善人になるつもりは無い。この瞬間の俺は勝者であって、強者では無いのだから。
 悪いとわかっていても今の俺には必要な事だ。

「目黒、お前が何も話さないって言うなら別にいい。他にも居るしな、透明化の能力は・・・どっちだ?」
「・・・え」

 反応があった。
 つまり今起きている奴じゃなくて、遠くでのびてる奴か。目黒の暴走した力に巻き込まれて吹っ飛ばされたのだろうか。
 自分一人じゃあ戦えない力。なるほど、戦闘用とかなんとか言っていたのが良くわかる。

「話しは彼女から聞くからお前はいいわ目黒。帰っていいぞ、帰って何されるか知らねぇーけど」
「っ!!」

 俺の言葉に目黒が一気に顔色を変えた。それはもう一人の女子も一緒だった。
 帰ったら、つまりは本倉達のいる所に帰ったらの話。
 全員が目黒に問いかけるだろう「何があったんだ」と。
 嘘無く話すのか、嘘を言うかはわからない。が、どちらにしろ良い結果にはならないのは容易に想像できる。

 だから、目黒の選択肢は二つに一つ。

「わかったよ。お前にとっておきを教えてやるよ。その代わり、あたし等を匿えよな」
「話しの内容による。悪いがこっちにはお前個人を恨んでる奴がいるからな」

 俺の背後から鋭い視線を送るリットがその筆頭だ。いつ目黒に牙を剥いてもおかしくない。
 罪滅ぼしをしろなんて考えてない。だが、それだけの覚悟はしてもらわないといけなくなるだろうな。

「で、とっておきってのは?」
「それはな・・・。大司教とか言う奴は、これから―――」

 俺は目黒の言葉に耳を傾けていた。真意なんて関係ないがとにかく俺には情報が必要だった。
 だから俺は・・・気を抜いていた。

「がはっ・・!!!!」

 視界が・・・掠れ!!

「藍!!!」

 リットの声が聞こえた時には、俺はもう吹き飛ばされていた。もうこっちはボロボロだってのに。ふざけんな、ここはもう最終決戦か何かのボス連戦かよ。色々な意味でセーブしてねぇぞ。

「くそっ・・・!」

 フラフラとした足取りで立ち上がる。
 何かの魔法攻撃? いや違う俺は蹴られたんだ。ただ純粋に。

 だがこの威力はなんだ。リットからローブを返して貰ってければ死んでいた。
 いや・・・本当に俺を殺す気でいたのか?

 どちらかというと目黒を守るように―――

「っ! 嘘だろ・・・なんで、お前が・・・お前等が!!!」

 俺を蹴り飛ばした奴。俺が良く知る男、そしてもう一人、その男を誰よりもよく知る小柄の女子がそこには立っていた。


「生きて・・・生きてたんだね刻越」
「澄原・・・それに、透・・!?」

 幻覚を見せられてるような感覚だった。
 今目の前には、俺の親友達、共に怒り、共に泣き、何でもない日常を笑い合っていた二人が・・・。

 二人が俺を睨み付けていた。

「透・・・澄原」
「刻越・・・」


 透は喋らない。その代わりと言うかのように澄原が語り変えてくる。
 澄原の印象はガラッと変わっていた。
 常に透の後ろから世界を覗き込んでいるような女の子。それが今や透の前に立っている。

 まるで透を守るように。

「透の為に・・・死んで」


 俺に向けた言葉は・・・本当に守る物かのようだった。
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