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頑張る王女様

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「恥ずかしいよぉ…。」

「案ずるでない。コナソよ、ワシは凛々しいかのぅ?」

「は、はい。凛々しいです。」

「よきかな。ところで、ワシは若々しいかのぅ?」

「え?えっと…。」

「それはいかん!ソノーコよ、若々しく描くのじゃ!」

「2人とも黙っててよ!こっちは集中したいのよっ!」

僕は朝食後、王様と第二王女に別室に連れ去られてしまった。第二王女はメイドに何やら指示を出し、早速、王様から肖像画を描き始めた。「本気で集中したいから、横から覗きながら描くより、正面で描きたいの」と言って、僕を膝の上に乗せた。王族の膝の上に座るなど、恐ろしすぎるので必死に抵抗したが、「私が何人の肖像画を描かなきゃいけないか分かってんのぉ?!」と凄まれて、怖かったので大人しくしている。そうして王様を前にして、第二王女の膝の上に座るという、この状況が発生した。

第二王女は絵を描く手が早く、描き始めてから10分程で手を止めた。

「とりあえず、線画はこれで良いわ。着色は後で纏めてやるから。」

「ふむ、見せなさい。」

王様がこちらに来てウィンドウを覗き込んだ。良い出来だと、頷きながら言った。

「平民用の自販機には、王族の肖像画を。貴族用の自販機には、王族とイケメンの肖像画を付けるのじゃ。」

「はぁ、わかったわ。」

王様は部屋を出て行き、メイドが王妃様を呼びに行った。第二王女は僕を膝から下ろした。

「ふぅ、子供を膝に乗せるだけでも、結構疲れるのね。」

「あの、王女様。自販機の事なんですけど。」

「なぁに?」

「当初の予定では、肖像画代として、銀貨1枚を想定していましたが、肖像画が平民の自販機でも売られるとなると、値段をどうしたら良いか分からなくなってしまいました。」

「そうよねぇ。ただ値段の差を付けるのは良い事だと思うのよ。お貴族ってやっぱり高くて特別な方が好きだもの。あんたの方の機能で、なんとかならないの?」

「流石に…あぁ!!」

「わ、びっくりしたぁ。なんか思い付いたの?」

「は、はい…まだ確定はできませんが、デザインが終わり次第、検証したいと思います。」

「そう、なら一安心かしらね。」

コンコンッとノックの音が鳴り、朝食時よりも煌びやかなドレスと装飾品を身に付けた、王妃様が部屋に到着した。

「よし、やるわよ!乗りなさい。」

僕も気合を入れたいのに、膝の上で大人しくするだけなのが格好悪かった。

♦︎

「お姉様まで、着替えてくるなんて。装飾品が、細か過ぎて大変だわぁ。」

王妃様と第一王女の線画を書き終えて、第二王女は歩きながら溜息をついた。

「王女様、これからどこへ行くのですか?」

「んー、お父様がイケメンを描けって言ってたでしょう?メイドに頼んで、別室に集めてもらってるの。今から顔合わせになるわね。」

到着した部屋の扉を開くと、美しい男の園が広がっていた。僕は、お城って顔採用してるのかな?と、あわあわしていたが、第二王女がメイドに向かって「絞ったわね、助かるわ。」と話しかけていて、これで絞ったんですか、と驚いた。

騎士の人は体格もよく、集められた人数も多い。皆正装をしているので、男の僕でも惚れ惚れする姿をしている。よく見ると、一緒に王都に来た従者の人もいた。

大臣や補佐の人達は、知的で中世的な美しさの人が多い。全員ではないが、眼鏡を掛けているところも良いと思った。

1人だけ駆り出された庭師も、少し萎縮しているが優しそうな顔立ちで、とてもかっこいい。

王女様が部屋に入ると、イケメン達は一斉に頭を下げた。

「急にお呼び立てしてごめんなさい。今、私とこの少年は、王命を受けて動いています。あなた方は王より選ばれました。拒否権はありません。協力して頂きます。」

イケメン達は光栄な事だと喜んだり、一体どんな使命を受けたのかと固唾を飲んだりしている。1人が適当な場所に立たされ、その前に置かれた椅子に僕とお姫様が一緒に座る姿を見て、一同はポカンとした顔をする。

「あの…」と立たされたイケメンが口を開こうとすると、第二王女は「喋らないで」と強く睨んだ。

第二王女は、次々に線画を描き上げていき、色のイメージも固まっている者には簡単な彩色もした。

「ふぅ。」

第二王女は一息ついて額の汗を拭った。

「皆様、ご協力感謝いたします。…説明は必要かしら?」

面倒だなと思った王女様だが、集められたイケメンは当然ながら説明を求めた。

「皆様、休憩スペースとエントランスにある自販機という大きな箱をご覧になりましたか?まだ見ていない人が多いようね。お城は広いから、職務によってはあまり立ち寄らないのかもしれませんね。自販機では飲料を販売しています。今、あなた方の肖像画を描かせて頂きました。肖像画は、飲料の容器に貼り付けさせて頂きます。説明は以上です。職務に戻ってください。」

王女様は、とやかく言われる前に、僕と一緒に部屋を出た。

「そんなに急がなくても…」

「だって。なかには、容姿を褒められても喜ばない人もいたし、王命とか言って期待させて、王女のお遊びでがっかりされるのも忍びないわ。でも急ぐに越した事はないのよ。まだ着色が山の様に残ってるんだから。」

「…王女様は何でそんなに頑張るのですか?」

「え?…そうよねぇ。初めは自分が飲みたいだけで、それに加えてチヤホヤされたくなっちゃったんだけど、完結してたのに、お父様に無理やり白紙にされちゃったのよねぇ。まぁ、権力には逆らえないわ。これを頑張れば皆が私を褒めそやす未来が見えるし。なんだかご褒美も貰えることになったし、やってやるわ!」

王女様は私室に到着すると、早速着色に取り掛かった。王女様がすごく頑張っているので、僕も少しでも良い物が出来る様に頑張りたいと思った。今朝、細密な装飾ができるようになったから、それを使って良い物が作れるかもしれない。今はウィンドウはデザインで使われてるので、僕は頭の中で、色々な案を考えた。
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