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僕は人間じゃない?
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村から出て、森の入口を横切って、しばらく行ったところに、小高い崖の様な、見晴らしの良い場所がある。なんとなく1人になりたくて、ここに来たんだけど、今は色々あって、遠くを見ながら膝を抱えている。まだお昼前だというのに、色々な事があったなぁ。
♦︎
朝、牛乳を分けてもらおうと、村で唯一の牛飼いの、牛のおじさんの家に行ったんだ。牛乳が重くて、持つのが大変だから、ゴミ箱に収納したんだ。家に着いたら牛乳はすぐに母さんに渡したよ。それだけの事なのに、僕の自販機でも牛乳が出せるようになったんだ。
びっくりしたけど、そのままレベルアップ作業に勤しんで、種類がすごく増えたんだ。素材開放とかいって、自販機の素材や、瓶やら缶やらも選べるようになった。飲物を温か~くする事もできるようになった。
念願のジュースも飲めた。どれも美味しくて、この世のものとは思えないくらい美味しくて。フルーツジュースの他に、炭酸ジュースってやつがあって、すごく美味しかったなぁ。
クリアボーナスもあって、自販機の大きさが少し横に大きくなって、6本の飲物が3段も置けるようになった。
ゴミ箱もレベルアップしたんだ。ゴミ箱のミッションも3つクリアしていて、ゴミ箱の種類が2つ増えて、よく分からなかったけど、新しくできる事も増えたみたい。
昨日の狩りの成果を姉と確認すると60体も討伐していた。しばらく魔物不足になるかもしれないと、村の住人に魔物の肉をお裾分けする事になり、小型の魔物全部とオークを3匹取り出した。姉はトロルの肉を食べたがったけど、誰も坐ばき方が分からなくて、そもそも食べれるのか分からなくて、僕の収納に保存しておくことになった。
姉はボスのレアアイテムを僕にプレゼントしてくれた。風の妖精の加護が付与された指輪だった。なんとなくゴミ箱に風の加護を発動させたら、ゴミ箱の投入口が吸い込むようになった。僕はある考えを検証する為に森に行った。
森の入口付近に入って、ウサギの魔物と遭遇した。ゴミ箱は、なんなく魔物を吸い込んだ。ウィンドウを出して、完全削除ボタンを見つめた。このボタンを押すと、魔物を討伐する事ができるのか。僕の指はフルフルと震えた。
試しに、その辺の草を吸い込んで、完全削除を押したら、草の文字はパッと消え去った。命ある者にも適用されるのだろうか。それとも押したところで拒否されるのだろうか。肉など残らず、消えて無くなる可能性を思うと恐ろしかった。
しばらく静かな格闘をしたが、たかだか指一本を動かす事が出来なかった。僕は検証を諦めて、魔物を外に出した。生きた魔物を所持しておくのは危険に感じて。しかし外に出たウサギの魔物は、こちらに気付いて襲ってくる。他に方法がないので吸い込んで収納して、外に出し、を何回か繰り返し、諦めて生きた魔物を収納した。1匹くらいなら大丈夫だよね…。
検証はできていないが、僕はとんでもない殺戮マシーンを手に入れたと感じて、フラフラしながら歩いた。景色を見ながら休憩しようとして、飲物を飲もうとして自販機を設置したんだけど、場所が悪くて、自販機が崖下に落ちてしまったんだ。下を見ると完全に壊れていた。僕はもう1度自販機が出るように念じると、壊れていない綺麗な自販機が現れた。元に戻ったと安心して崖下を見ると、壊れた自販機は、そのままそこにあった。僕は気づいてしまったんだ。壊れた自販機は物として残る。つまり素材を無限に生み出す事ができる。
♦︎
そして、膝を抱えて今に至る。僕は人ならざる者になってしまったのだろうか。
そんな折、昼食だと姉が迎えに来た。僕以外の人ならざる者を見つけて、少し安心したのか、涙がこぼれた。
「…姉ちゃん。」
「え!なんで泣いてるの?!…あ!自販機が壊れちゃってる。」
姉は崖下の惨状に気がついた。
「…ねぇ、姉ちゃん。この下に降りれる?」
「え?降りれるけど。」
僕は姉におぶさり、崖下に運んでもらった。壊れた自販機は中身が空洞になっており何も無い。色やパネルや、分かりやすく飾られていた飲物部分も無くなり、ただの曲がった板状の素材になっていた。それは素材としては都合の良い姿だった。素材をゴミ箱に吸い込みながら、もしかして崖下に降りなくても吸い込めたのかな、いやまさかね、流石にそれは、と思い詰めた。
崖を登る際、試しに風の精霊の加護を自分の足元にかけてみた。フワフワ浮いたものの、指輪の様な小さい加護だと、小高い崖を登ることは難しいようだ。
「ゴミ箱に使った時は、すごく吸い込んだのになぁ」
そう溢すと姉が言った。
「だったらゴミ箱に乗ってみたら?強く吸い込めるなら、同じ強さで吐き出せるんじゃない?」
僕はゴミ箱を倒して捕まった。風の精霊の加護を発動すると、ゴミ箱はすごい速さで崖の上に吹き飛んで行った。僕は早い段階で空中に投げ出され、地面に転がった。
姉は、飛んで行ったゴミ箱を見上げながら「大怪我するところだったね」と、声をかけた。
僕は、もしかしてと思い、ゴミ箱がレベルアップした時に解放された、新しい形のゴミ箱を出現させた。バイク型と表記されたそれは、ゆりかごの様な三日月の様な形をしていた。他のゴミ箱とは明らかに用途の違いを感じる。投入口が下の方に、横向きに付いているから。
それに跨がって、風の精霊の加護を発動させた。すると、すごい速さでバイクは進んで行く。途中でバランスを崩して倒れてしまったが、これに乗れる様になったら、移動がすごく楽になるぞ!
「私にもやらせて!」そう言ってバイクに跨った姉は、スイスイと乗りこなし、僕は姉の後ろに乗せてもらって、風の精霊の加護だけを発動させるエンジンになった。
♦︎
朝、牛乳を分けてもらおうと、村で唯一の牛飼いの、牛のおじさんの家に行ったんだ。牛乳が重くて、持つのが大変だから、ゴミ箱に収納したんだ。家に着いたら牛乳はすぐに母さんに渡したよ。それだけの事なのに、僕の自販機でも牛乳が出せるようになったんだ。
びっくりしたけど、そのままレベルアップ作業に勤しんで、種類がすごく増えたんだ。素材開放とかいって、自販機の素材や、瓶やら缶やらも選べるようになった。飲物を温か~くする事もできるようになった。
念願のジュースも飲めた。どれも美味しくて、この世のものとは思えないくらい美味しくて。フルーツジュースの他に、炭酸ジュースってやつがあって、すごく美味しかったなぁ。
クリアボーナスもあって、自販機の大きさが少し横に大きくなって、6本の飲物が3段も置けるようになった。
ゴミ箱もレベルアップしたんだ。ゴミ箱のミッションも3つクリアしていて、ゴミ箱の種類が2つ増えて、よく分からなかったけど、新しくできる事も増えたみたい。
昨日の狩りの成果を姉と確認すると60体も討伐していた。しばらく魔物不足になるかもしれないと、村の住人に魔物の肉をお裾分けする事になり、小型の魔物全部とオークを3匹取り出した。姉はトロルの肉を食べたがったけど、誰も坐ばき方が分からなくて、そもそも食べれるのか分からなくて、僕の収納に保存しておくことになった。
姉はボスのレアアイテムを僕にプレゼントしてくれた。風の妖精の加護が付与された指輪だった。なんとなくゴミ箱に風の加護を発動させたら、ゴミ箱の投入口が吸い込むようになった。僕はある考えを検証する為に森に行った。
森の入口付近に入って、ウサギの魔物と遭遇した。ゴミ箱は、なんなく魔物を吸い込んだ。ウィンドウを出して、完全削除ボタンを見つめた。このボタンを押すと、魔物を討伐する事ができるのか。僕の指はフルフルと震えた。
試しに、その辺の草を吸い込んで、完全削除を押したら、草の文字はパッと消え去った。命ある者にも適用されるのだろうか。それとも押したところで拒否されるのだろうか。肉など残らず、消えて無くなる可能性を思うと恐ろしかった。
しばらく静かな格闘をしたが、たかだか指一本を動かす事が出来なかった。僕は検証を諦めて、魔物を外に出した。生きた魔物を所持しておくのは危険に感じて。しかし外に出たウサギの魔物は、こちらに気付いて襲ってくる。他に方法がないので吸い込んで収納して、外に出し、を何回か繰り返し、諦めて生きた魔物を収納した。1匹くらいなら大丈夫だよね…。
検証はできていないが、僕はとんでもない殺戮マシーンを手に入れたと感じて、フラフラしながら歩いた。景色を見ながら休憩しようとして、飲物を飲もうとして自販機を設置したんだけど、場所が悪くて、自販機が崖下に落ちてしまったんだ。下を見ると完全に壊れていた。僕はもう1度自販機が出るように念じると、壊れていない綺麗な自販機が現れた。元に戻ったと安心して崖下を見ると、壊れた自販機は、そのままそこにあった。僕は気づいてしまったんだ。壊れた自販機は物として残る。つまり素材を無限に生み出す事ができる。
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そして、膝を抱えて今に至る。僕は人ならざる者になってしまったのだろうか。
そんな折、昼食だと姉が迎えに来た。僕以外の人ならざる者を見つけて、少し安心したのか、涙がこぼれた。
「…姉ちゃん。」
「え!なんで泣いてるの?!…あ!自販機が壊れちゃってる。」
姉は崖下の惨状に気がついた。
「…ねぇ、姉ちゃん。この下に降りれる?」
「え?降りれるけど。」
僕は姉におぶさり、崖下に運んでもらった。壊れた自販機は中身が空洞になっており何も無い。色やパネルや、分かりやすく飾られていた飲物部分も無くなり、ただの曲がった板状の素材になっていた。それは素材としては都合の良い姿だった。素材をゴミ箱に吸い込みながら、もしかして崖下に降りなくても吸い込めたのかな、いやまさかね、流石にそれは、と思い詰めた。
崖を登る際、試しに風の精霊の加護を自分の足元にかけてみた。フワフワ浮いたものの、指輪の様な小さい加護だと、小高い崖を登ることは難しいようだ。
「ゴミ箱に使った時は、すごく吸い込んだのになぁ」
そう溢すと姉が言った。
「だったらゴミ箱に乗ってみたら?強く吸い込めるなら、同じ強さで吐き出せるんじゃない?」
僕はゴミ箱を倒して捕まった。風の精霊の加護を発動すると、ゴミ箱はすごい速さで崖の上に吹き飛んで行った。僕は早い段階で空中に投げ出され、地面に転がった。
姉は、飛んで行ったゴミ箱を見上げながら「大怪我するところだったね」と、声をかけた。
僕は、もしかしてと思い、ゴミ箱がレベルアップした時に解放された、新しい形のゴミ箱を出現させた。バイク型と表記されたそれは、ゆりかごの様な三日月の様な形をしていた。他のゴミ箱とは明らかに用途の違いを感じる。投入口が下の方に、横向きに付いているから。
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