1日休んだだけなのに

東門 大

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第6章 招待されただけなのに

6-9 中川喉を潤す(1)

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 僕は四つん這いでマダムが来るのを待った。

 家畜になりきったわけではなく、お尻が痛すぎて、この姿勢しか取れないのだった。

 望んでもいないのに、いよいよ姿勢まで家畜に近づいた自分が一層惨めに感じられた。

 そして喉の渇きが極限に達し、声に出すことをためらってなどいられなくなった。

「マダム、お水をください」

 豚のように水を求め、やってくるマダム全てに声をかけた。

「ごめんなさい、今無理なの」

「他の人にしてちょうだい」

 と言う人はまだいい方で、大抵の人は見向きもせず素通りした。そして7人くらい声をかけた時、

「あら、ちょうどよかったわ」

 と寄ってきたマダムがいた。その上品そうなマダムはレースのワンピースを身につけ、首には大きめの真珠のネックレスをかけていた。


「よろしいのですかマダム。少し歩けば…」

 そんなガイドの勧めも制して、僕の前に来た。

「いいですよ。お気遣いなく」

「カーテンはどうなさいます?」

「ありがとう。でもそんなに時間はかからないから必要ありません」

 マダムは我が子を見るような目で、僕を見た。

「喉が渇いているのね。安心しなさい。私が喉を潤してあげるから。」


「まずこの姿勢では無理ね。お尻をついて座りなさい。…そして足はそろえて前に出すのよ」

 僕はお尻の痛みをこらえて、言われた通りの姿勢をとった。

「フフフ、恥ずかしがり屋さんなのね。手はそこでなく、後ろに置くの」

 上品な婦人の前で、勃起したペニスを晒すのは恥ずかしかったが、水にありつくため即座に従った。

「若いって、よろしいわね。……ところで、お前はここで水を飲むのは初めて?」

「ブーブー。」

 僕は首を縦に振って、初めてだということを伝えた。

「そう、では目を閉じなさい。いいと言うまで開けてはいけませんよ」

「さすが日向ひなた様、扱いに慣れてらっしゃる」

 水を飲むのに目を閉じる理由がわからなかったが、今の僕にとって最も優先すべきことは、限界まできた喉の渇きを癒すことだった。

「さあ、いいわよ。口をいっぱいに開けなさい」

 僕は言われた通りにめいっぱい口を開けた。水が飲めることの幸福感を噛み締めながら、水が注がれるのを待った。

「もうちょっと上向きね」

 マダムが僕の顎を持って、顔の向きを変えた。

「こぼさず飲みなさいよ」

 シャーという水が出る音とともに、僕の口に勢いよく水が入ってきた。

 生温かく少し苦めの水だったが、喉が渇いていた僕はゴクゴクと喉を鳴らしながら飲んだ。

 しかし口を開け上向きで飲んでいたため、次から次に注がれる水を飲み切ることはできなかった。

 僕がむせて目を開けると、目の前に立って排尿しているマダムがいた。

 尿は出続け、僕の顔全体にかかった。そして飲んでいたのが尿だと知り、吐き気がして顔をしかめた。

「あらあら、マダムの聖水を…もったいないでしょう」

 ガイドの怒声が聞こえた。
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