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2章 トラウマ
第18話 フィア、攫われる
しおりを挟む……数年後。
はい、私ことサーフィリア・ルナ・アイラックは12歳になりました。
見た目は相変わらず16歳になったままよ。
これ以上成長するのかどうかもわからないわ。
まぁ、この国での成人は15歳だから構わないのだけどね。
結局、あれから発情期が何回も来ているけれど、ルドは初めての発情期の時に宣言した通り、いまだにキス止まりよ。
最近になってやっと少し進んだかしら?
キスマークは付けられるようになったわ。
ちゃんと服で隠れる場所よ?
私はうなじのギリギリ見えるか見えないか、くらいの所に付けて欲しいと言ったのだけれどね?
今はまだ見えない所って言われたわ。
あと3年で私が成人するから、そうしたら結婚できるわ。
あと3年なんて、長いわね。
と、そんなことを考えていたのだけど。
何故か分からないけれど、いつの間にか起きたら知らない部屋のベッドの上にいたわ。
しかも、精霊魔法が使えないように魔力封じの手錠と首輪、足枷が付いているの。
なんでこんなことになっているのかしら?
ルドが私が拐われて気が付かないはずがないもの。
ルド以上に力のある者が私を攫ったの?
ルド以上の強者なんているのかしら?
……ガチャリ。
「やあ、目が覚めたようだね」
「………」
「ハハッ。そんなに警戒しなくても、すぐに取って食ったりはしないよ?」
「………」
「ハッ、どうやら僕とお話しはしてくれないようだ」
軽薄そうな雰囲気を持つ、フード付きのローブを被った男が部屋に入ってきた。
顔を隠すようにフードを目深く被っている。
「……貴方は誰?」
「……おっと、僕と話してくれる気になったようだね」
「……黙っていても何も知れないもの」
そう、黙っていてもしょうがない。ならば少しでも多く情報を聞き出した方がいいというものだ。
「フッ、随分と肝が据わっているようだね」
「……質問に答えていただけるのかしら?」
「そうだったね。僕は魔族だ。攫ってきたのは僕だけど、雇い主がいる。言っておくけど、雇い主に関しての情報を話すことはできないよ?そういう契約だし。
……君はこれから雇い主の元へ行く。拒否権はないよ?これは強制だ。そこでどんな扱いを受けるかは僕には分からないけど。」
私を攫ってきたフード男は、誰かに雇われたようだ。ということは、黒幕がいるということ。ルドに恨みのある人か、私自身に恨みのある人か……。
「なぜ私を攫ったの?」
「さぁ?僕には分からないな」
「貴方何者?」
「さっきも言った通り、魔族だよ」
「魔族がわざわざ危険を犯してまで私を攫う必要性はないと思うわ。いくら依頼されたからといって、番のいる者を攫うなんて……そんなことしないでしょう?人間のように愚かではないのだから」
なぜルドがいるのに私が攫われたのかが分かった。
精霊と魔族は相性が悪い。
そのため魔族は精霊魔法が使えない。
だが、魔族は自分の体内の魔力を使って直接魔法を起こすことができる。
さらに、相性が悪いため精霊魔法で探索をかけても見つけることはできない。
とにかく相性が悪いのだ。
「僕は濡れ衣を着せられて、追放されたんだ。魔王様だけは信じてくれると思ってたのに…。だから、精霊魔法に引っかからない僕が君を攫えば、魔族が疑われる。いい気味さ。僕に濡れ衣を着せたヤツを懲らしめることができる」
「それは貴方の雇い主に言われたの?」
「ああ、そうさ。僕が追放された時に拾ってくださった方だ」
これは、なにか裏がありそうね。
この人は騙されているのかもしれない。
けれど、私は今なにもすることができない。
大人しくしているしかないようね。
……コンコン。ガチャリ。
「……時間だ」
「分かった、今向かう」
「……?」
「それではお喋りの時間は終わりだ。君が次目覚めた時は、僕の雇い主のところだろう」
その言葉を聞き終わった途端、私の意識はなくなった……。
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