37 / 38
第三章 変化、成長?
第35話 取材とデマカセ
しおりを挟む
新しい魔法を教わってから、数日がたった日の昼休み。
最近ではゾーオの出現もなく、俺は食事を取り終え、自分の席で元の平和な日常生活を過ごしていた。
はずだったのだが……。
「──ねぇノア、あんた何かしたんでしょ?」
いつものように茜は一樹の席に座り、すぐ裏の席の俺に話しかける。
「な、なんだよ唐突に」
「相澤ちゃんの事よ。あの子の突然の人気、あんたが一枚噛んでるんじゃないかって思ってね」
髪飾り事件からもうすぐ一週間。
相澤の人気は中々衰える事はなく、俺に対してのストーキング被害も減っていた。
だからこそ今も、平和な時間を満喫出来ていたのだが……。
「可哀想だと思わないの? あの子、変に人気が出ちゃってるから、学校での自由も制限されてるのよ?」
「自由って言ってもストーキングだろ、それを言ったら俺の自由はどうなるんだよ。ずっと相澤の目を気にして生活してたんだぞ」
実際、相澤が隠れてないか確認するために、つい振り返るのが習慣づいてしまってるぐらいだ。
「ふーん。罪悪感、感じてないんだ?」
「……多少は」
感じて無いわけではない。むしろかなり感じている。
最近では、相澤が家に帰ってくるたび元気がなく、口々に「今日もノア君を見守れなかった……」っと言っているのを、何度も聞かされているのだから……。
「あれー、相澤ちゃんじゃん。今日も何かようがあるとか?」
廊下から、一樹の声が聞こえた。
ほら、今もあーやって来るとすぐに分かる──って、懲りずに来てるのかよ!!
「はぁ、罪悪感があるなら、あんたも少しは協力しなさい。それにしても本当、あの馬鹿は……」
協力って、何のだよ?
茜は突然席を立つと、廊下に向け歩き出す。
そして教室から出ると、鈍い音と一樹の「いてぇ!?」の声が響き、その後相澤の手を引いて教室の中へと戻ってきた──。
「に、西野先輩!?」
そして真っ直ぐと、俺の方に向かってきて、
「ほら、ノア立って。相澤ちゃんはノアの席に座って、取材させてよ」
俺は自分の席を追いやられようとしている。
どうやら、彼女を新聞の記事にするらしい。
「相澤、嫌なら断っても良いんだぞ?」
俺の問いかけに、本人ではなく一緒に居る茜が先に口を開く。
「そう。でもそれじゃ、このまま椅子に座らずに戻って貰うのが自然よね」
こ、こいつ。相澤のストーキング癖を知っていて……。
「わ、私……取材受けます!」
ほら見たことか!!
自分で言うのもなんだが、彼女が俺と言う餌を目の前に、我慢できるわけがない。
仕方なく諦め、自分の席を明け渡す。
すると茜は相澤の背を押し、彼女を俺の席へとエスコートした。
「ふふっ、そうこなくっちゃ。大丈夫、悪いようにはしないから」
茜も一樹の席に座り、相澤と向かい合う。
完璧に取材ムードだ、相澤もチラチラとこちらを気にしてるし、ここは。
「じゃぁ、邪魔になると行けないし俺は──」
逃げるが吉だ。
その場を立ち去ろうと、身をひるがえした時だった。
誰かが、俺の服の裾を掴む。
「あんたは残りなさい」
「いや、なんでだよ……」
犯人は茜だ。
どうやら、逃しては貰えないらしい。
逃げるのを諦め、立ったまま肩を落とす。
こんな状況で彼女に服を掴まれ、まんざらでもないと感じてしまってる俺も、相澤の事を馬鹿にできないかもしれない……。
「では早速。最近、校内でも凄く人気な相澤ちゃんに質問です」
「そんな、人気なんて……」
「でも、告白も後を立たないって噂を聞いていますが?」
「えっと、それは……」
腕を組んで机の隣に立つ俺を、何度もチラチラと見る相澤。
やめてくれ、見てみぬフリをするのも辛い。
「なるほどねぇ、相澤ちゃんには好きな人がいると」
「──なッ!」
茜が突然踏み込んだ質問をして、俺は声を上げそうになる。
口元を手で覆ったまま相澤の顔を見ると、顔を赤く染め上げた彼女と目があった。
「ちょ、ちょっと西野先輩!?」
茜はニッコリと微笑んだ。
「その人の告白以外は受ける気が無いので、気持ちは嬉しいけど困ります。って書いてもいいかな?」
「おい茜、相澤はそんなこと一言も……。あっ」
俺は茜の意図に気付いた。
彼女は暴露記事が書きたいんじゃない。
相澤が以前の日常生活を取り戻せるような、そんな優しい記事を書きたいんじゃないだろうか?
協力しろってこう言う事かよ。
「……趣味は人間観察だから、なるべくならそっとして欲しい。ってのも記事に加えた方が良いんじゃないか?」
「なるほど、ノアそれ中々面白いわね」
俺の発言に、自分のストーキング癖がバレたのでは無いかと思ったのだろう。
相澤の目は泳ぎ、手元は落ち着き無く椅子を撫で回す。
……ってやめい!!
「まぁ落ち着けよ、これはデマだから」
「デマ……。えっと、デマカセの事ですか?」
状況を理解しきれていないのだろう。
相澤は俺と茜の顔を、何度も見返した。
その挙動不審で、小動物のような彼女を見て俺達の口元は自然と綻ぶ。
「どうかしら相澤ちゃん。多少のイメージダウンにはなるかもだけど、これが広まれば少しは動きやすくなるんじゃない?」
「わざわざ振られたり、嫌われたりするのがお望みの変態はそう居ないからな」
流石の相澤も、ここまでの説明を聞き理解したのだろう。
「あっ、なるほど……。是非お願いします」
両手をパンッと鳴らし納得した表情を見せた。
そんな相澤に「かしこまり」っと茜は返事をし、ノートに記事の内容を次々と書き込んでいく。
「それじゃ、後は記事の内容確認ぐらいだろ? その間に俺は、飲み物でも買ってくるよ」
「そ、そんなの悪いです。私も……」
そう言って立ち上がろうとする相澤を、俺は手で制止した。
「良いんだよ、何度も足を運んでもらうのも悪いし、何よりマネージャーにはいつも世話になってるから。今はそっちに専念しとけ」
格好をつけた俺は、その場を後にし自動販売機へと向かう。
そしてその道中の廊下で、自分のアホさ加減にうんざりする。
「ってか、なんで俺は相澤のストーキングを手助けしてんだよ」っと……。
最近ではゾーオの出現もなく、俺は食事を取り終え、自分の席で元の平和な日常生活を過ごしていた。
はずだったのだが……。
「──ねぇノア、あんた何かしたんでしょ?」
いつものように茜は一樹の席に座り、すぐ裏の席の俺に話しかける。
「な、なんだよ唐突に」
「相澤ちゃんの事よ。あの子の突然の人気、あんたが一枚噛んでるんじゃないかって思ってね」
髪飾り事件からもうすぐ一週間。
相澤の人気は中々衰える事はなく、俺に対してのストーキング被害も減っていた。
だからこそ今も、平和な時間を満喫出来ていたのだが……。
「可哀想だと思わないの? あの子、変に人気が出ちゃってるから、学校での自由も制限されてるのよ?」
「自由って言ってもストーキングだろ、それを言ったら俺の自由はどうなるんだよ。ずっと相澤の目を気にして生活してたんだぞ」
実際、相澤が隠れてないか確認するために、つい振り返るのが習慣づいてしまってるぐらいだ。
「ふーん。罪悪感、感じてないんだ?」
「……多少は」
感じて無いわけではない。むしろかなり感じている。
最近では、相澤が家に帰ってくるたび元気がなく、口々に「今日もノア君を見守れなかった……」っと言っているのを、何度も聞かされているのだから……。
「あれー、相澤ちゃんじゃん。今日も何かようがあるとか?」
廊下から、一樹の声が聞こえた。
ほら、今もあーやって来るとすぐに分かる──って、懲りずに来てるのかよ!!
「はぁ、罪悪感があるなら、あんたも少しは協力しなさい。それにしても本当、あの馬鹿は……」
協力って、何のだよ?
茜は突然席を立つと、廊下に向け歩き出す。
そして教室から出ると、鈍い音と一樹の「いてぇ!?」の声が響き、その後相澤の手を引いて教室の中へと戻ってきた──。
「に、西野先輩!?」
そして真っ直ぐと、俺の方に向かってきて、
「ほら、ノア立って。相澤ちゃんはノアの席に座って、取材させてよ」
俺は自分の席を追いやられようとしている。
どうやら、彼女を新聞の記事にするらしい。
「相澤、嫌なら断っても良いんだぞ?」
俺の問いかけに、本人ではなく一緒に居る茜が先に口を開く。
「そう。でもそれじゃ、このまま椅子に座らずに戻って貰うのが自然よね」
こ、こいつ。相澤のストーキング癖を知っていて……。
「わ、私……取材受けます!」
ほら見たことか!!
自分で言うのもなんだが、彼女が俺と言う餌を目の前に、我慢できるわけがない。
仕方なく諦め、自分の席を明け渡す。
すると茜は相澤の背を押し、彼女を俺の席へとエスコートした。
「ふふっ、そうこなくっちゃ。大丈夫、悪いようにはしないから」
茜も一樹の席に座り、相澤と向かい合う。
完璧に取材ムードだ、相澤もチラチラとこちらを気にしてるし、ここは。
「じゃぁ、邪魔になると行けないし俺は──」
逃げるが吉だ。
その場を立ち去ろうと、身をひるがえした時だった。
誰かが、俺の服の裾を掴む。
「あんたは残りなさい」
「いや、なんでだよ……」
犯人は茜だ。
どうやら、逃しては貰えないらしい。
逃げるのを諦め、立ったまま肩を落とす。
こんな状況で彼女に服を掴まれ、まんざらでもないと感じてしまってる俺も、相澤の事を馬鹿にできないかもしれない……。
「では早速。最近、校内でも凄く人気な相澤ちゃんに質問です」
「そんな、人気なんて……」
「でも、告白も後を立たないって噂を聞いていますが?」
「えっと、それは……」
腕を組んで机の隣に立つ俺を、何度もチラチラと見る相澤。
やめてくれ、見てみぬフリをするのも辛い。
「なるほどねぇ、相澤ちゃんには好きな人がいると」
「──なッ!」
茜が突然踏み込んだ質問をして、俺は声を上げそうになる。
口元を手で覆ったまま相澤の顔を見ると、顔を赤く染め上げた彼女と目があった。
「ちょ、ちょっと西野先輩!?」
茜はニッコリと微笑んだ。
「その人の告白以外は受ける気が無いので、気持ちは嬉しいけど困ります。って書いてもいいかな?」
「おい茜、相澤はそんなこと一言も……。あっ」
俺は茜の意図に気付いた。
彼女は暴露記事が書きたいんじゃない。
相澤が以前の日常生活を取り戻せるような、そんな優しい記事を書きたいんじゃないだろうか?
協力しろってこう言う事かよ。
「……趣味は人間観察だから、なるべくならそっとして欲しい。ってのも記事に加えた方が良いんじゃないか?」
「なるほど、ノアそれ中々面白いわね」
俺の発言に、自分のストーキング癖がバレたのでは無いかと思ったのだろう。
相澤の目は泳ぎ、手元は落ち着き無く椅子を撫で回す。
……ってやめい!!
「まぁ落ち着けよ、これはデマだから」
「デマ……。えっと、デマカセの事ですか?」
状況を理解しきれていないのだろう。
相澤は俺と茜の顔を、何度も見返した。
その挙動不審で、小動物のような彼女を見て俺達の口元は自然と綻ぶ。
「どうかしら相澤ちゃん。多少のイメージダウンにはなるかもだけど、これが広まれば少しは動きやすくなるんじゃない?」
「わざわざ振られたり、嫌われたりするのがお望みの変態はそう居ないからな」
流石の相澤も、ここまでの説明を聞き理解したのだろう。
「あっ、なるほど……。是非お願いします」
両手をパンッと鳴らし納得した表情を見せた。
そんな相澤に「かしこまり」っと茜は返事をし、ノートに記事の内容を次々と書き込んでいく。
「それじゃ、後は記事の内容確認ぐらいだろ? その間に俺は、飲み物でも買ってくるよ」
「そ、そんなの悪いです。私も……」
そう言って立ち上がろうとする相澤を、俺は手で制止した。
「良いんだよ、何度も足を運んでもらうのも悪いし、何よりマネージャーにはいつも世話になってるから。今はそっちに専念しとけ」
格好をつけた俺は、その場を後にし自動販売機へと向かう。
そしてその道中の廊下で、自分のアホさ加減にうんざりする。
「ってか、なんで俺は相澤のストーキングを手助けしてんだよ」っと……。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる