上 下
6 / 38
第一章 魔法少女の使い魔

第6話 最初の方ゾーオ戦闘

しおりを挟む
 俺の通う星彩せいさい高校の校舎は、三棟で構成されている。
 西棟は、特別教室と体育館。
 東棟の一、二階は一年。
 同じく東棟の三、四階は二年。
 そして中央棟の二、三、四階が、三年の教室だ。
 各棟はどの階も渡廊下で繋がれており、行き来は不便なく出来る。

 俺はと言うと、課題を取りに行くため、自分の教室がある東棟四階へ続く階段を上っていた。

「危ない危ない、課題完全に忘れてたよ。数学の森下先生、怒らせるとマジでおっかないからな」

 それにしても、この学校で一番怖くて有名な先生の課題を置き忘れるなんて、俺は余程疲れてるらしい。

 教室につくと、自分の机を漁る。

「えーと、あった。シロルの話だと、猫から人に戻るとき変身前の姿に戻るらしいから、持って帰れば合間をみて……。んっ? 外が騒がしいな」

 なにやら校舎の外から、悲鳴みたいな声が聞こえる。
 俺は気になり教室の窓から、見下ろした。

「喧嘩か? 止めに入っるのは……森下先生? ならすぐ収まるか」

 地面に倒れている男の上に、別の男がマウントをとり、何度も何度も繰り返し殴り続けていた。
 誰が見てもやり過ぎな行為に、偶然その場に居合わせていた森下先生が近寄っていく。 

 ──チリンチリン。

「鈴が鳴った? って、あれは昨日のゾーオ!」

 森下先生に押さえつけられた瞬間、先程までは背景と同化してまったく見えなかったゾーオが、突然姿を現したのだ。
 よく見ると、尻尾は暴力を振るっている男に突き刺さっている。
 あれで、洗脳でもしているのだろうか?

 周りには見えて無いようだけど、きっとこの揉め事はあのゾーオの仕業だ! 早く退治しないと……。
 
「くっ、かと言ってここで変身はまずいよな?」

 急がなければ。しかしまだ校内には、多くの生徒が残っている。
 もし猫になるところを見られ様なら、大騒ぎになるぞ。

 俺は仕方なく、廊下に飛び出た──。

「毎度毎度だけど!」

 俺は全速力でトイレに駆け込む。
 傍から見たら、すっごい我慢してたと思うに違いない……。

「なんて言ってる場合か!? メタモルフォーゼ!!」

 俺は首輪をして、トイレの個室で魔法の呪文を唱えた。
 すると、首輪が黒い炎へと変わり、全身に広がり身を焦がす。
 そして炎は消え、いつしか俺は猫の姿へと変わっていた。

「本当不可解な現象だ。でも今はそんな事に頭を悩ませている場合じゃない、相澤を探さないと──!」

 変身後、俺はトイレか飛び出した。
 廊下で一人、二人すれ違った生徒達から「猫がいるぞ?」っと声を掛けられる。
 しかしそんなのお構いなしだ。
 さっさと相澤を見つけないと、下手をすれば死人が出る!

「──使い魔さん、ちょうど良かった」

 階段を使い下まで降りようとした時だった。
 なんと三階と四階を繋ぐ踊り場で、偶然相澤に出くわしたのだ。

「なんでこんな所に相澤が居るんだよ! あっ、さては日輪をつけまわそうとしてただろ?」
「えへー。じゃなくて、それはこっちの台詞だよ。そんな事よりゾーオが出たみたいなの、ついてきて!」
「おい、質問に答え……。って、そっちの方が大事だけどさ!」

 相澤は階段に足を引っ掛け、転びそうになりながらも何故かゾーオのいるグランドではなく、階段の上へと上がっていく。

「おい、その先は屋上だぞ。鍵が掛かってるはずだ!」
「大丈夫だから、使い魔さん着いてきて!!」

 四階から上は、屋上繋がる階段のみ。
 窓などの出口になりそうな物も無い、相澤のやつ、どうする気で……。

 屋上扉の前につくと、そんな彼女に動きがあった。
 左手をスカートのポケットに入れて、謎のケースを取り出したのだ。
 そして、ケースについているファスナーを開ける。

「ピ、ピッキングツール!?」
「うん、何があっても良いように持ち歩いてるの」

 中には、テレビで見たことあるような解錠の道具が何本も入っている。
 そしてそれらの数本を、迷うことなく鍵穴に差し込んだ。

「な、なんかやたら手慣れてる気がするんだけど……」
「身の毛がよだつほど練習したからね」
「……なんで恐怖を感じてるんだよ。それを言うなら身を粉にしてとか、一心不乱とかじゃないか?」

 普段不器用そうな彼女が、カチカチ音をならし巧みに手を動かす。
 まさか、現実で鍵開けを拝む日がくるとは。
 
 解錠を待つ中、俺に一つの疑問が湧いた。いや、湧いてしまったと言った方が正しいかもしれない……。

「一応確認だけど、もちろんプライベートで使ったことなんてないよな?」
「……………………開いたよ」
「返事は!?」

 ドアを開け、相澤は逃げるように屋上に飛び出た。

 結局、返事は返ってこなかった……。
 身の毛がよだつとは、まさにこの事だろう。
 この時、俺の相澤に対する警戒セキュリティは、心の中でそっと上がることになったのは、言うまでもない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...