上 下
4 / 20
序章

第4話 魔法で手助け

しおりを挟む
よし、魔法で服装、髪色も変えたし、これなら俺がアレンってバレないだろう。

流石に俺の名前は悪名高いからな、変装をしないと注目を浴びてしまう。

そんな事を考えながら、俺は周りの街並みを見て感動してしまう。

「ここが……王都」
 
 俺はフィオガルラ王国の王都、「リバーン」の街並みを見て、心が躍るのを感じていた。

 モニター越しに見る画面とはまるで違う、リアルな景色。

 俺は賑わう街の喧騒を背に、人々の熱気を感じながら噴水がある広場へと足を進めていく。

「てか、こうやって見ると色んな種族がいるんだな」
 
 フィオガルラ王国には、動物と人間の特徴を持ち合わせる獣人族、尻尾が生えた可愛らしい種族まで、実に多彩な住民が共存している。

 この世界には数え切れないほどの種族が存在していて、それぞれが独自の魅力を持っているのだ。
 
 そんなことを考えながら広場へ向かうと、背後から突然声を掛けられる。

「す、すみません! ここ周辺で黒色のバッグを見ませんでしたか?」
 
 振り向くと、そこにいたのは冒険者のような服装を纏った女性。

 彼女の背には煌びやかなマントを羽織り、水色の髪と水のように澄んだ瞳を持っている。

「すまないが、俺は見ていない。ここら辺で落としたのか?」
 
 「そ、それが……つい数時間前、冒険者ギルドから報酬を貰いまして、ここ王都で色々買い物をしていたのですが、目を離している間に私のバッグが盗まれてしまいまして……」

「盗まれたのか、それは災難だったな。そのバッグは一人で探しているのか?」
 
 「いえ、一応私のメンバーも手分けして探してくれています」
 
 (話を聞く限り、この人は冒険者のクランに所属しているのか。ただ、この広い王都を数人で探すには無理があるな)

「俺も探すのを手伝いますよ。ちなみに、バッグの中には何が入っているんですか?」
 
 「バッグの中には銀貨数枚と「赤い宝石」が入っています。宝石は最近、A級魔物を討伐した際にドロップしたアイテムでして、余りにも綺麗だったので売らずに持っていたんですよ」
 
 その言葉に、俺の心がざわめく。

 赤い宝石、それは間違いなく「レッドストーン」だ。

 確か魔物から低確率で入手できるアイテムであり、プレイヤーたちの間では非常に危険なものとして知られている。

 なぜなら「レッドストーン」を持っている者は、恐ろしい組織「黒神」に狙われる運命を背負うことになるからだ。

 その組織は、ある神を崇拝し、その神を召喚するために「レッドストーン」を何百個も必要とするという。

「分かりました、では手分けして探しましょう」
 
 「ありがとうございます! あ、そういえば自己紹介をしてませんでしたね。私の名前はユキと言います。冒険者をしていまして、「雪」というクランに所属しています」
 
 「冒険者だったのですね。俺の名前はアレンです」
 
 「ではアレンさん、情報が集まり次第、皆と合流したいので、あの噴水に3時間後、集合で良いですか?」
 
 「ええ、構いませんよ」
 
 「ありがとうございます! ではまた後で!」
 
 ユキは明るい笑顔を残し、情報収集のために別の場所へと移動していく。

(さて、あの能力を使った方が早そうだな)
 
 レッドストーンには莫大な魔力が宿っている。

 なら魔力の場所が分かる、3級魔法《アルカナクラス》を使えば、その場所がわかるだろう。

 ただ、少々時間がかかるため、あまり使われない魔法ではあるのだが。
 
「まあ、人助けだと思って使うか……」
 
 俺は人気のない場所へと移動し、《アルカナクラス》の魔法を発動させる。

 王都は広大なので、探すのに少々時間を要するだろうが、あの魔力を感知することが出来れば一発で見つけられるはず。

 そんなことを思いながら、俺は魔法陣を展開し、盗人の居場所を探すのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生
恋愛
1・2・3巻店頭に無くても書店取り寄せ可能です! (∩´∀`∩) コミカライズ1巻も買って下さると嬉しいです! (∩´∀`∩) イラストレーターさん、漫画家さん、担当さん、ありがとうございます! ご令嬢が婚約破棄される話。 そして破棄されてからの話。 ふんわり設定で見切り発車!書き始めて数行でキャラが勝手に動き出して止まらない。作者と言う名の字書きが書く、どこに向かってるんだ?とキャラに問えば愛の物語と言われ恋愛カテゴリーに居続ける。そんなお話。 飯テロとカワイコちゃん達だらけでたまに恋愛モードが降ってくる。 そんなワチャワチャしたお話し。な筈!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

妹が聖女に選ばれたが、私は巻き込まれただけ

世渡 世緒
ファンタジー
妹が聖女として異世界に呼ばれたが、私はどうすればいいのか 登場人物 立川 清奈 23歳 涼奈 14歳 王子 ルバート・アッヘンヴル 公爵家長男 クロッセス・バルシュミード26 次男 アルーセス・バルシュミード22 三男 ペネセス・バルシュミード21 四男 トアセス・バルシュミード15 黒騎士 騎士団長 ダリアン・ワグナー 宰相 メルスト・ホルフマン

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

5度目の求婚は心の赴くままに

しゃーりん
恋愛
侯爵令息パトリックは過去4回、公爵令嬢ミルフィーナに求婚して断られた。しかも『また来年、求婚してね』と言われ続けて。 そして5度目。18歳になる彼女は求婚を受けるだろう。彼女の中ではそういう筋書きで今まで断ってきたのだから。 しかし、パトリックは年々疑問に感じていた。どうして断られるのに求婚させられるのか、と。 彼女のことを知ろうと毎月誘っても、半分以上は彼女の妹とお茶を飲んで過ごしていた。 悩んだパトリックは5度目の求婚当日、彼女の顔を見て決意をする、というお話です。

錬金術師カレンはもう妥協しません

山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」 前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。 病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。 自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。 それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。 依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。 王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。 前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。 ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。 仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。 錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。 ※小説家になろうにも投稿中。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...