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第88話 姉さん、久しぶりだなあ!

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 そう言ってローゼは手に影を纏い始める。
 
 《暗影鋭爪》
 
 彼女の持つ影の力によって黒く禍々しい鋭利な爪が生み出される。
 
 放たれた爪は私に向かってくる。

 なんとか防ごうとするが衝撃に耐えられずに後ろに吹き飛ばされてしまった。
 
 これは思ったよりもきついかも知れない……。
 
 そう思っていると近くにいた低ランクの冒険者達が私の元によってくる。
 
 「ラ、ラゼルさん! 大丈夫ですか!?」
 
 「来るな! 危ない!」
 
 私はそう叫ぶが冒険者達は足を止めない。
 
 するとローゼがその冒険者に鋭い爪で斬り裂こうと攻撃を行う。

 私は瞬時にスキルを発動する。
 
 《ブリザード!》
 
 放たれた冷気はローゼの爪を氷漬けにする。だが完全ではない。

 私のスキルで凍らせられるのも数秒程度だろう……。

 ローゼの力は本当に恐ろしい。

 彼女から産み出される影の能力は強敵であると言わざる終えないものだ。
 
 「お前たちは陛下をお守りしろ! 私が何とか食い止める!」
 
 私は大声で冒険者達にそう声を投げかけると彼らは速やかに王の元に戻るのだった。
 
 まずいな、今のローズの攻撃力ならばこのリザースを全て破壊出来るだろう。

 ローズの能力を毎回コピーは出来ない。
 
 それにローズの能力は応用が効く。

 ヨルフとは違いローズはきちんと能力の使い方を分かっている様子だ……。

 どのような能力の出方をするのか全く分からないのだ。
 
 するとローゼが私に向かって飛び掛かってくる。私は咄嗟に氷の剣を作り出す。
 
 《アイスソード!》
 
 私の剣とローゼの爪がぶつかり合うと、激しい衝撃波と共に周りにあった瓦礫や冒険者達が吹き飛ばされるのだった。
 
 まずいな、このままでは本当にリザースは崩壊してしまうぞ……。

 それにリズ達も心配だ。
 
 《ダークネス》
 
 私は影の魔法を繰り出す。

 ローゼの視界を覆う黒い煙は移動しそのまま彼女に襲いかかっていく。
 
 「あれれ? 私の能力が使えるの? おもしろいね!」
 
 狂気じみた笑みを浮かべながらローゼも同様に《ダークネス》を発動し、私のダークネスをかき消すかのように黒い影が灯る。

 すると、その影は私の放ったダークネスをかき消しただけでなくそのまま私に攻撃しかけ始めたのだ。
 
 「ちっ! 厄介な影だな!」
 
 私は咄嗟に氷を作り出し、ローゼの攻撃を防ぐ。

 なんとかして打開策を見つけなければ……。
 
 するとローズは私に追撃をしようと飛び掛かってくる。
 
 《暗魔龍爪》
 
 再び強力な魔力を感じると、無数の影の刃が生成され私を切り刻もうとする……。
 
 本当に恐ろしいほどの力だ。

 刃はどれも鋭く直撃したらただでは済まないだろう……。

 それに触れなくてもこれだけのオーラが出ているのだ、触れてしまったら大怪我どころじゃすまない。
 
 《星糸ッッッ!》
 
 私は星糸で影の刃から身を守る。

 だが、それにも限界がある……このままではいずれ私の魔力は底を尽きるだろう。

 圧倒的な力の差を感じ一瞬心が折れそうになるが今はこの王都の街を救う為に戦っている。

 弱音を吐く暇はない。
 
 《闇糸!》
 
 私は先ほど放った星糸に影の龍力を混ぜて発動させる。

 すると星糸が黒く変色し、影の刃を防ぎながら徐々にローズに迫っていく。
 
 そしてそのままローズの影に纏わりつくように闇糸が絡みつく。
 
 「わわ! なにこれ!」
 
 「喰らいなさい! 私の全力を!!」
 
 私は闇糸で絡みついた影を一気に握りつぶす。

 するとローゼの体は黒い霧のようなものに包まれ姿が消える。
 
 この隙を逃すわけにはいかない! 私はすぐに魔法を展開する。
 
 《全力のブリザード!!》
 
 私を中心として街を凍り付けにしていく……。

 一瞬にして周りは凍っていく。
 
 この魔法を使えば確実にローゼを仕留めることが出来るだろう……そう思っていたその時だった。
 
 目の前には影が広がっていた。
 
 「くそ! 影には移動が自在なのか!」
 
 「あはははは! 残念でした~!」
 
 すぐ目の前にローゼが立っていた。

 ここまで能力を発動しても仕留められないのか……。

 まずいな……このままじゃ負けるぞ。
 
 そう思い最後の賭けに出ることにした。

 なんとかしてローゼの能力をコピーしなくちゃいけない!

  そう思い私はローゼの能力をコピーしようと近づこうとする……すると次の瞬間だった。

 ある人物が間に入り込んできたのだった。

 だ、誰と思い私は間に入り込んできた人物の顔を見る……。

 そこには私の弟、クルスの姿があったのだ……。
 
 「な、なんで」
 
 「姉さん、久しぶりだなあ!」
 
 久しぶりの再会ではあったのだが私は感動はする余裕などなかった。
 
 なぜならクルスの顔は狂人じみた恐ろしい笑みに包まれていたからだ。
 
 突如、街の中心で人々の歓声がこだまする。

 その声は色々な場所でも起こっているようだ。

 その歓声からきっと戦いが終わってあの2匹の竜を倒したのだと思い安心感に包まれる……だがそんな気の抜けた時が訪れる事は無かった。

 なぜならクルスは私に向かって剣を振りかざしていたのだった。
 
 私は咄嗟に氷の剣を生成しクルスの攻撃を弾くと彼はすぐに距離を取り、再び私に剣を向ける。
 
 するとローゼが笑いながら喋り出す……。
 
 「もしかしてこの子のお姉さんだったのぉ? ごめんねぇ私この子に龍力をあげちゃった!」
 
 「う、噓でしょ? クルスに何をしたの?」
 
 私は状況が飲み込めずに混乱していた。

 弟のクルスに一体何があったというのだ。

 それにいきなり攻撃を仕掛けてきたことも驚いている原因のひとつだが、それ以前に私の弟は《剣聖》を持っているから力なんて欲していないはずだ。
 
 するとローゼは笑いながら私に話す。
 
 「この子は力が無くてね、だから私の龍力をあげたの! そうしたら喜んで私に服従したよ!」
 
 クルスがローゼに龍力を貰った? そんなことありえない……。

 だが、今目の前で起きていることが現実なのだ。するとクルスが口を開く。
 
 「僕は剣聖のスキルを持っているのに上手く使いこなせなかった! それから父上からは見放され僕は落ちこぼれになった!  屋敷では僕の味方なんて誰もいない! 皆して僕を出来損ないと言ってきた! そんな時に外れスキルの姉さんは数々の実績を挙げ始めたんだ」
 
 クルスの顔を見ると悔し涙で瞳を潤ませている……。

 そしてクルスは私に剣を向けながら叫ぶように話を続ける。
 
 「だから僕は力が欲しくなったんだ、そして僕は運良くローズに出会って龍力を貰ったんだよ!」
 そういうことだったのかと私は納得する。

 だが、いくらローズから龍力を貰ったからといってあんな危ない力を使うなんて……。
 
 確かに《剣聖》のスキルの所有者は努力が出来れば精霊をも操れるはずだ。

 だが努力出来る素質がなければ何も身につかないのだ。
 
 たとえ、当たりスキルがあったとしても努力をしなければ宝の持ち腐れだ。
 
 クルスはきっと努力をしてこなかったのだろう……だから今のような状況になっているのだ。

 それにこうなった根本の原因は父上にあるだろう。

 クルスは小さいころ優しい子だった。

 なのに父上がスキルで差別をするから……。
 
 するとローゼは笑いながらクルスの方に歩み寄る。
 
 「さあクルス君! あなたの力をお姉さんに見せつけてあげなよ!」
 
 するとクルスは剣に龍力を流し込み、私に攻撃を仕掛けてくる。
 
  クルスの鋭い斬撃が私を襲うがその攻撃をなんとか防ぎきる……だが、その威力はすさまじかった。

 私の氷の剣が簡単に折れてしまうほどの威力だった。
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