上 下
3 / 35
1章

第3話 精霊使いです!

しおりを挟む
 入口付近には少し怖そうな男の人達がいる。

 あれに睨まれたらチビッてしまいそうだ。

 だが引き下がるわけにも行かず、恐る恐るギルドの中に入っていく。

 その瞬間酒の臭いが鼻に飛び込んできた。中は思った通り綺麗で広いが騒がしい。

 奥にはカウンターが見えているし、とりあえずあそこに行けばいいのかな。

 俺はそう思いながらカウンターの方に歩いていく。

 そこには受付嬢らしき人がいて座っているため声をかけてみることにする。
 
 「すみません、冒険者登録をお願いしたいんですが……」
 
 俺は自分で思った以上に小声になってしまったが何とか受付嬢には聞こえていたのか、俺の方を見て返事をする。
 
 「分かりました、200Gはお持ちですか?」
 
 俺はスルトから貰った200Gを取り出す。

 受付嬢が金を受け取るとすぐに手にあった物が消える。

 便利過ぎてびっくりしちゃうよ俺。
 
 そうやってビクビクしていると受付嬢は口を開く。
 
 「それでは冒険者登録をするにあたって確認事項がありますのでご答えてください」
 
 確認事項か、どんな事を聞かれるのか分からない以上緊張するな……。
 
 ここはひとつ落ち着こう。俺なら出来るさ、まずはどんな感じか聞いてみることにしよう。
 
 「戦闘経験、または剣や魔法などの経験はありますか?」
 
 この質問はきつすぎるぜ。

 生まれて今までに剣なんて振ったこともないし、魔法なんてあほらしくて見たこともない。

 でもここで嘘をついても意味がないだろう、だから正直に話そうと思った俺は口を開く。
 
 「剣や魔法を使ったことすらありません、戦闘経験も全くないです……」
 
 すると受付嬢は驚いた表情を浮かべていた。

 その後から苦笑いしながら口を開く。
 
 一瞬嘘をついた方が良かったと思ったけれど、もう後には引けないな……うん諦めよう。

 すると受付嬢は口を開く。

 「ではこちらの水晶に手を触れて頂いてよろしいですか? こちらでスキルを鑑定しますので」
 
 受付嬢曰く、どうやらこの水晶でスキル適正などが分かるらしい。

 はたして俺のスキルはどれほどの力を持っているのだろうか。

 俺は水晶の前に座ると手を触れる。

 すると少し黒く光った感じがしたが、受付嬢には気づかれなかったみたいだ。

 特に何かを話している気配はないがこれもこれで結構緊張するぜ。

 そう思いながら俺は結果を待っていると……。
 
 「手が震えてます、あまり緊張なさらずリラックスしてください」
 
 そう言ってくれて少し気持ちが軽くなった。

 こうやって人を気遣うなんてこの受付嬢……流石プロだ。

 優しさと知の両方を兼ね揃えている完璧な受付嬢だ……。

 そう思っているとしばらくすると受付嬢は口を開く。
 
 「も、もう一度お願いします」
 
 「え、もう一回ですか!?」
 
 そう言って受付嬢は水晶にもう一度触れと言うように手を広げてきた。

 俺はこの幸運とも不運とも言えない状況を喜びながら手を乗せるのだった。

 これで俺も冒険者デビュー出来るかもしれない!

 そして光った結果がどうなるのか楽しみで仕方が無い! 

 俺は思わず受付嬢の顔を見てしまう。その顔はなんだか驚いた顔をしていた。

 ついに俺の顔にも苦笑いが浮かんでしまう。

 おそらく外れスキルの可能性が高いがそんなことはもうどうでもいいのだ、何と言われてもいいさ!

 さあ、俺を冒険者にしてくれ! そう思いながらじっと待っていると再び受付嬢が口を開く。どんな感じかなと思っていると……。
 
 「せ、精霊使いです」
 
 「ん? なんて?」
 
 全く聞き取れず俺は聞き直してしまう。

 今なんて言ったんだ? 俺の耳には《精霊使い》と聞こえたんだが……。
 
 本当に冗談だよね、やめて欲しいよ!

 しかし受付嬢の表情は真剣だった。再び口を開きだす。
 
 「精霊使いです!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました

雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。 女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。 強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。 くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

処理中です...