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出生の土地

微笑み

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ゴホンッ「これは、失礼した。私はここの芸術をこよなく愛し、時に生徒へ教鞭きょうべんも取る者だ」

丸渕メガネを中指でクイッと上げながら自己紹介をする女性

「あー、私はラクシスと言い、連れがここのルットク教師に用事があって来たんだけど、その間に学園をブラついてここに来たんだ」

ラクシスが来た理由を女性は知ると納得したようで、うんうんと頷いていると女性は何か思い出した表情をする

「あっ!しまった!私、まだ名前を名乗ってなかったわ!!モナラって言います。」

モナラは慌ててラクシスに会釈をするとラクシスも釣られる形で会釈する

つっかけを鳴らしながらラクシスにグイッと近づいたモナラは尋ねる

「それで!人族のラクシスさん!!」

突如、近づいてきたモナラにラクシスは気を留めず「なんでしょう?」と返答する

「あのですね!あのですね!ちょっと私のモデルになっていただけません?」

突拍子もない事を言い放つモナラにさすがのラクシスも少し距離を取り応える

「え?あっうん、いいよ」

「えっ!?やったー!助かります!実はですね。人族のラクシスさんがこの部屋に入って目が合った瞬間、あっこの方はぜひ、私のアート!つまり脱皮アートのモデルとして手伝ってくれたのなら!なんて思ってました。それで返事をしていただき、本当にうれしいです・・・これで私たち天空の国の民が言い伝えられている、この国を創造した人の絵を完成させれるかもしれない!あぁ・・・なんて私はついているのだろう・・・あっでもまだ完成への道が出来ただけで、完成したわけじゃない・・・落ち着くのよモナラ。そうよ。ただ人族の方に承諾していただいただけじゃないの!」ブツブツ

モナラはラクシスの潔い快諾に身を震わせ喜び、ブツブツ早口で何やら呟き自身の世界へと入って行った

その様子に微動だにしないラクシスもすごいが、この女性も相当であるのは間違いない

「えっと・・・どうしたら?」

ハッ!「そうよ、そうだわ!私としたことが、せっかくのチャンスなのに逃してしまうところでした。こちらへどうぞ」

モナラは奥の壁に掲げられている絵の下へラクシスを案内して近くにあった椅子の上に立たせた

「よし!これで大丈夫です!そのまま天を仰ぐようにして止まってください!」

モナラのリクエストにラクシスは瞼を閉じ返答する

「おぉぉおお!いいです!いいですね!私、盛り上がって来ましたよ~~~!!」

バタバタとモナラは描く道具と脱皮された素材を用意しキャンパスに張り付けては剥がすという作業を繰り返していく・・・

「これは、いい!いいですね!最高ですよ!!」

ひとり変な(?)スイッチの入ったモナラは興奮しながら、創作作業に没頭した

窓辺から差していた光もだんだんと傾き薄暗くなり始めた頃、モナラは叫ぶ

「はぁい!これで大丈夫です!ありがとうございました。」

モナラが没頭していた創作作業のベースが出来たようで、ラクシスのモデルも終了となった

「いえ、気になさらず」

ラクシスの表情は一見何も変わらなく見えるが、どこかゲッソリしたようにも見える・・・不思議なものだ



この部屋での出来事も無事(?)終えたので、ドアをガチャッと開けラクシスはルットクの元へ戻ることにする

ルットクの部屋に戻るとちょうどエメレッタと別れの挨拶を終えた所で帰り際、抱き着いて別れの挨拶をしていた

ルットクは父として何もできなかったことを悔やんでいたが、エメレッタは気にしていないようで「それじゃ・・・お父さん、また会おうね?」と名残惜しそうに話しかける

「あぁ、まぁ私たちが生きている限り・・・またいつか会うことが出来るだろう」とグッと寂しい感情を抑え毅然と笑顔で振舞うルットク

ふたりは寂しさを押し殺しこの部屋を出る

学園を出る為、歩むラクシスの後をエメレッタは目を潤ませ少しまぶたを腫らながらも少し遅れてついて行く

突如、パンッと自身の頬を両手で叩き「よしっ!」と気合を入れてラクシスの横へ慌てて追いつく

ルットクの所から別れ学園を去った2人はもう一度、巨大な塔の中へと向かった

テレポートしてから双子の王へ謁見し、ルットクの話をした

「・・・なるほど、ルットクは元気だったか。」

リオル王は右手を顎に触れ瞬きし納得する

「やはりルットクの子だったか・・・つまり、我が同胞・・・」

オール王も同様に右手を顎に触れ瞬きして納得する

さすが、双子、見事にリンクしている

「・・・エメレッタよ。」

思考をしつつ、エメレッタを呼ぶリオル王

「あっはい」

エメレッタは突然の呼びかけにビクッとなったが、慌てて返事する

「この国は君にとっての故郷と同様・・・見た目は違えど、気にせず、戻っていらっしゃい」

リオル王は満面の笑みで迎える

「え?あっはい、ありがとうございます。」

驚きつつも感謝をするエメレッタ

「それで・・・極寒の神殿へ向かいたいと聞いたが・・・」

オール王がエメレッタに問いかける

「あっはい。母が健在かどうかわかりませんが、私の出生の土地を見てみたいと改めて感じました」

エメレッタは決意の籠った目でハキハキと答える

「・・・なるほど、よいじゃろう。身内の希望だ。今も交流が続いているし、定期交流もそろそろだ。一緒に同行すればいい。」

オール王はフフフと笑顔でエメレッタに語り提案をする

「はい、本当にありがとうございます。」

深々と頭を下げてエメレッタは感謝を述べた

「では、そのように手配しよう。」

オール王は近くに居た衛兵に視線を送り右手を上げ指示を出すと衛兵たちは準備に取り掛かった

「少し時間がかかる・・・エメレッタよ。よければ、これまでの経緯など色々教えてくれないか?」

リオル王は優しく微笑みかけるとエメレッタは「はい。」と返答し、今まで祖父の住む村でどのように育ったのか、ラクシスとどういう経緯で知り合い、どのように旅をすることになったかを双子の王へ話すことにした

そのエメレッタの話にウンウンと頷いたり、時には驚いたりして聞き入った・・・
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