上 下
18 / 69
守り神

陰謀

しおりを挟む
ーーー守り神の代替わりの義が行われる数日前


月の明りが照らす夜、とある屋敷の薄暗い一室で誰かが話し込んでいる・・・

一人は複数の略綬りゃくじゅを胸に付けた帝国の制服を着た男は半田帽を深く被っているので顔がはっきりとわからず

もう一人は白髪で緑の眼をしていて幼く見える男のふたりのようだ

「ふふふ・・・そうか」

「つまり、間もなく行われるのだよ!」

「ほぉ・・・それで、貴様は私に何を差し出す?」

「民を!」

「た、民だと!?」

表情は読めないが驚きを露わにする

「そう、我らの民だ!お主ら帝国の人族は我らを欲して居るのだろう?」

ニヒルに口元を動かす白髪の男

「・・・なるほど、それで私に何をさせようというのだね?」

「反逆だよ」
少し声を低くし囁く

「反逆だと!?」

驚愕する帝国人

「どした?まさか・・・怖気づけついたのか?」

「ふふふ、ハハハハッ!まさか私が怖気づくとでも?その逆だよ!ウリザエル殿!」

高らかに笑いながら、相手の右肩に手をやるとそれを手で弾いた

「なっ!?」

「勘違いするなよドルチェゲイス将軍!我らは対等だ!気軽に肩に触れるな!」

ウリザエルは明らかなイラつきをみせる

「お、おっとすまんすまん!つい嬉しくてな!」

ドルチェゲイス将軍は慌てて謝罪する

「ふんっ!まぁいい!我を追放したあやつに反逆できれば良いのだ!」

「ふふふっそうか・・・で、いつ向かう?」

ニヤリとするドルチェゲイス将軍

「まぁ慌てるではない、お主は解っているだろうが故郷あそこは少し特殊でな、我とて容易に帰れぬのだよ」

「ほぉ・・・計はあるのか?」

顎に手を当てながら語るドルチェゲイス将軍

「我を未だに尊敬しておる若い奴に手招きさせ帰郷する・・・」


「なるほど・・・それで私ら帝国の軍勢でそのまま攻めると?」

「機を見て我が後に糸を引く・・・それからお主らが攻めればよいだろう?」

嬉しそうに自らの策略を語り同意を求めるウリザエル

「ふふふっ、貴様も随分と故郷に恨みでもあるのだな?まぁ、良いだろう」

「あぁ・・・そうだとも本来ならこの我が、長になるはずだったのに・・・あやつめ!」

目をキリっとさせ下唇を噛みイラつきをみせる

「まぁ、これで私はお主の同胞を奴隷に・・・」

「そして私は反逆を!」

「「ふふふ、ハハハハッ」」

ある屋敷の一室で二人の笑い声が響いていく・・・




ーーー数日後

将軍は自軍を集めウリザエルと共に計略を実行すべく口上を述べる

「私の名はドルチェゲイス=コリヤット!フリード帝国に心身を捧げし誇り高き人族である!」

剣を持つ右手を高らかに上げ目的地の方向へ振り下ろす

「今ここに盟友ウリザエルとの契りに乗っ取りこれより実行する!皆の者、あやつらの血肉すべてを御し奴隷へ落そうぞ!」

「「うぉおおおおおおおおお!」」

ドルチェゲイスの声に雄叫びをあげ同意する部下たち

「我は自身の同胞を全て貴様らに捧げる!そして我を裏切った全ての者への反逆する事をここに誓おう!そして同意し賛同してくれたドルチェゲイス将軍に感謝の意を表明する」

ウリザエルはドルチェゲイスの方へ一瞥いちべつし兵に表明した

「皆のもの!準備は良いか!?」

「「うぉぉ!」」

「覚悟は良いか!」

「「うぉぉ!」」

「参るぞ!」「「うぉぉ!」」

ドルチェゲイス将軍は部下を鼓舞させる

「いざ!行かん!未開の地、エルフ族の里へ!」

ドルチェゲイス将軍率いるウリザエルと帝国軍はエルフの森、通称濃霧の森へと侵攻していく

道中、濃霧の森まで距離は遠く何泊もしなければならない

将軍率いる50人の軍は途中、魔物を狩りつつ野宿する予定となっている

兵たちは濃霧の森の先にいるエルフに夢を見てまだかまだかと期待高ぶる・・・それほど需要のあるエルフ

知識を求めるもの、見た目の美しさに酔うもの、夜伽に使おうとするもの・・・さまざまで人族や他族にも十分価値のあることがわかる

・・・しかし、本来なら会う事すら困難な種族で出会ったとしても誇り高く精霊や妖精に寵愛されている種族ゆえ、魔法、魔導に長けており手を出してしまえば、痛い目に会うことは容易に想像がつく事ほどだ

だが、帝国に手を差し出したウリザエル

彼は同胞エルフを恨んでおり、種族を根絶やしにしようとしている・・・

理由は定かではないが、よっぽどのことなんだろう




ーーーー

帝国を出て何泊かしたあと、しばらく進軍すると目的地の濃霧の森が見えてくる

「よしっ!ここから先は下乗し馬を置いていく!担当の者はしっかり管理しておくように!」

ドルチェゲイス将軍の指示の下、兵たちは馬から下乗をし野営用テントの準備をする

「将軍殿たちは一度、この場に控えて頂きたい!我が協力者と連絡をし道案内をさせるのでしばし待たれよ!」

ウリザエルは将軍たちと離れ一人濃霧の森へと歩んで行った

ひとりの兵が将軍に近付く

「それにしても・・・大丈夫ですかねぇ、ドルチェゲイス殿あの男エルフは信用できるんですか?」

「ん?あー副将軍か、そうだな・・・正直ここだけの話、私は里にさえ行ければどうでもいいのだよ?」

「ほぉ・・・といいますと?」

「もし、仮にあやつエルフが戻って来なくても、ここまで来たら森に火でも放てばよい」

「え?それだと条約が・・・」

「なに、あやつがしくじったという事にでもすればよいだろ?ハハハハッ」

「それもそうですな!ハハハハッ」







しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

アリス・ロシュフォール ~砂漠に咲く花~

犬塚ゆき
ファンタジー
錬金術を研究しながら、ある人物を探していたアリス・ロシュフォール。 突如として舞い込んだ手掛かりをもとに、アリスは白狐の姿をした魔獣ルースと共に旅立つ。 しかし砂漠の国でアリス達が出会ったのは、人ならざる少年トゥーラと、錬金術を軍事利用しようと企む大企業の社長ハイダルだった。

ひとりの獣人と精霊

わんコロ餅
ファンタジー
「ひとりの少年と精霊ののんびりライフ」の続編になります。 こちらから見ていただいても大丈夫ですが、前作のネタバレが含まれます。

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

寒がりな氷結眼鏡魔導士は、七匹のウサギとほっこり令嬢の温もりに癒され、愛を知る

ウサギテイマーTK
恋愛
伯爵家のミーヤは、動物の飼育と編み物が好きな、ちょっとおっとりした女の子である。婚約者のブルーノは、地味なミーヤが気に入らず、ミーヤの義姉ロアナと恋に落ちたため、ミーヤに婚約破棄を言い渡す。その件も含め、実の父親から邸を追い出されたミーヤは、吹雪のため遭難したフィーザを助けることになる。眼鏡をかけた魔導士フィーザは氷結魔法の使い手で、魔導士団の副団長を務まる男だった。ミーヤはフィーザと徐々に心を通わすようになるが、ミーヤを追い出した実家では、不穏な出来事が起こるようになる。ミーヤの隠れた能力は、次第に花開いていく。 ☆9月1日にHotランキングに載せていただき感謝です!! ☆「なろう」様にも投稿していますが、こちらは加筆してあります。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

処理中です...