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アーサット王国

勘違い

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グラム大臣がランドセルと統括室から出た頃。

事前にグラム大臣の部下たちがラクシスを探しに街中を探しに駆け回っていた。

衣服商店、武具屋、近接ギルド、魔導具店、英雄通りの露店・・・

「ハァハァ、ほ、本当にこんな所に英雄なんて居るんですかね?」

息を切らし、英雄像の前で汗だくになった部下はコートタイプの軽装を着用し袖で汗を拭いながら上司に愚痴っている。

「まぁ・・・実在したとしてもういい歳だろうからなぁ、それにあのグラム大臣さまからのお願いだ。無碍むげにしたくないだろ?」

「ハァハァ・・・そうっすよね。いつもお世話になってますもんねー。僕たちを孫みたいだとか言いながら自分より僕ら、いや庶民にも見返りなく世話をしてくれる大臣なんて居ないっすよ。」


「クククッまぁな!あの方は貴族なのにそれっぽくないし、どこかの2代目とはえらい違いだけどな!」

どこか誇らしげな上司は部下と同様のコートタイプで袖には階級を表す刺繍が入った装飾で表されている。

ちなみに2代目とはマイール=スギロムを指す言葉で
、初代は前王と切磋琢磨し様々な逸話を残しこの国に貢献したらしい

しかし息子である現当主は優秀な方ではあるが、初代ほどでは無く、さほど良い噂は聞かないのだ。


「さて息も整ってきたし、そろそろ再開するか?ここまで来たんだ、魔導ギルドも寄って行こう。」

「そうっすね。魔導ギルドそこで居ないならもうグラム大臣さまと合流を待ってもいいかもっすね!」

「そうだな。俺も英雄に興味あるからなぁ・・・なんだってあの刻の大災害を防いだ奴だ。きっと凄い筈だ!」

・・・にゃ!・・・にゃ!・・・ラクシス様にゃ

少し離れた所から気になる声が聞こえた。

「ん?ありゃー珍しい。おい見てみろよ?獣人だ!しかも純粋な奴だ。」

「え?本当っすね。だいたいは人よりの姿してるのに獣に近いタイプは珍しいっすね!」

「ふふふハハハハッしかもあんなにも兄弟みたいに仲の良いってのは癒されるねぇ。」

「いいっすねぇ、あの二人もアレが普通って感じで羨ましいっすね。」

「だなっ!しかもあの英雄と同じ名前だ!よっぽど親が英雄の事が好きなんだろうよ。」

「うーんまぁ俺なら英雄と同じ名前なんて重くて嫌っすけどねぇ!」

「ったく、お前らしいな!」

「そりゃそうっすよ」

ハハハハッ

話の種の相手が本物とはつい知らず談笑する二人だった。



ガヤガヤガヤガヤ・・・


二人の話に少し花を咲かしていると正門の方で何やら軽い人集りができ始めていた。


「ん?あーもしかして、グラム大臣かぁ」

「そっすね、さすが人気ありますねぇ。」

「おっ、誰か御付きと一緒に居ないっすかね」

二人は遠目で姿を確認する

「あーありゃ、いつもの護衛の方だな、大変だろうなぁ」

人混みの原因であるグラム大臣がだんだんと近づくにつれ護衛の抱える荷物が次々と増えていくのはある意味滑稽である。


「「ハッ、お疲れ様です」っす」

部下たちはグラム大臣に敬礼をし挨拶をしている


「いやーようやくここまで来れたよ。ふふふっいつも気持ちはありがたいんだが、皆から何か貰うのは気が引けるよ。」

気が引けると言いつつもどこか嬉しそうなグラム大臣に護衛も満更でもないようだ。


「ふふふ、敬礼は不要だよ。」

「「感謝します。」」

「それで進捗は・・・見る限り収穫はなさそうだね。」

「・・・はい、なかなか見当たらず、面目ありません」

「うーんごめんね。仕方がないこちらが無理を承知でお願いしているんだから。」

「いえ、我らはグラム大臣と王が全てですので・・・」

「そ、そうっす我らはそれが全てであります」

「ふふふ、そんなに畏まらなくても良いのにねぇ。あっそうだ。歳をとると嫌だね忘れてた。例の頼み事なんだけど、ひとつ分かった事があるよ」

「本当ですか?」

「マジっすか!」

「信じがたい話だが、例の証明書の持ち主は中年とかではなく逸話通りの少年で魔力反応も起きている本人そのもので間違いないだろう。」

部下たちは口をあんぐり開けて驚いた。

それもその筈、いい年齢のオッさんだと思い込んでたのだから。

「しかもどうやら純粋の獣人と同行しているようだね。」

「「えっ!?」」

「ん?どうしたのかね?」

「いや・・・その、先ほど露店から魔導ギルド方面に純粋の獣人を連れた少年が・・・」

「そ、それっす!」

「ほ、本当かね?可能性はある・・・よ、よし一刻も早く声をかけてくれるかね。私も後から追いかけるので」


「は、はい念のため二人して向かいます!」


「無理せずに改めて頼んだよ。」

「は、はい!」

グラム大臣の部下たちは忙しく少年が向かったであろう魔導ギルドへ足速に向かう。


「・・・グラム様、私たちも落ち着いて向かいましょう。」

付人に促されこうしてはいけないと部下たちの後をゆっくりではあるが、さらに追いかけていく。









その頃、ラクシスたちはというと・・・


「もぐもぐっラクシス様!魔導ギルドに用事があるかにゃ?げぷぅ」

「ギンタ・・・食べるか話すかどちらかにしない?」

「もう食べたから大丈夫にゃ!」
と口の周りに散らばる食べかすがなんとも彼(?)らしい

「あぁそれで魔導ギルドだけど、僕も少しはかじってる手前この国の魔導が気になるってとこかな」

「・・・齧ってるって何言ってるにゃ、ラクシス様はすでに極めてるにゃ!」


「ハハハハッまだまだだよ。」

それを見たギンタは深くため息をつけ何を言ってるんだと言わんばかりの表情をし

「ラクシス様は分かってにゃいかもしれないけど、魔導の最高峰に高めた先によ~やく精霊の片鱗に触れる事ができるにゃ!しかもにゃーたちを具現化とか・・・まぁいいにゃラクシス様らしいから、もういいにゃ」

「・・・?そうかよくわからないけど、それならまぁいいか。」

雑談をしながら2人は魔導ギルドへ歩いている。

「あっあれっぽいにゃ!」

「ん?おぉ、まさしく魔導ギルドだね。」

古民家みたいな木造建で看板には魔導士が左右に杖を出しクロスさせた絵が彫られている。

「ふぅ・・・いいね!この雰囲気、素晴らしいよ!」

さてっと、ふぅ・・・この国の魔導ギルドだ。


どんな所だろう、面白そう・・・


「あっラクシス様、危ないにゃ!」

視界の端に黒い影が過ぎる

バンッ  ドンッ

「きゃっ」

「大丈夫・・・?」

由緒正しい魔導士のような格好をした女の子がラクシスにぶつかった・・・というより何かに弾かれたようだ。

「あ、はい大丈夫ですけど、あれ?何かにぶつかったような弾かれたような・・・!?」

「ん?あーごめんごめん僕の加護に弾かれたんだと思うよ。」

「あっそうだったにゃラクシス様には精霊の加護があるからまず触れられにゃいにゃ!」


「え?加護?ラクシス様?猫の獣人?純粋!?」

女の子はまず、何が起きて何にぶつかったのか状況を理解出来ていないようだ。

「うーん。さっき露店で買った飲み物でも飲んで落ち着くかい?魔導ギルドの入口だと他の人に迷惑掛かるから、少しあそこにでも座るかい?」

魔導ギルドの近くにある広場の長椅子を指して勧める

「そうにゃ!あそこに一旦座るにゃ!」

女の子は言われるがまま、入口の邪魔になることを踏まえ長椅子に座って飲み物で自信を落ち着かせる。


「ふぅ、それであなたたちは何かしら?」

「うーん」

「それよりお前にゃ!ラクシス様にぶつかっといてお前が先に名乗るにゃ!」


「むむむ・・・確かにそうだけど、そこの獣人は失礼すぎるわ!」

「ふふふ、確かに女性にはこちらから名乗るのが礼節だと聞いたことあるね。」

「そ、そうよ!」

「そうか、それは失礼。ラクシス・・・ラクシス=オリジンだよ。」

「ぎんたはぎんたにゃ!」

「ふふふ、私はウィルミ、ただのウィルミよ」


何がおかしいのだろう?とぎんたが首を傾げてる・・・と

ウィルミはそうだと言わんばかりの表情をして両手の指を前で重ねて話す

「そうよ!あなたたち、私に良い考えがあるの!」

何か嫌な予感でしかない雰囲気を醸し出している。

「見たところあなたたちは魔導ギルドに初めて登録しに来た田舎者って事かしら・・・?」

「い、いゃ「そうよ!そうに決まってるわ!そんな気がしてたのよ!」

否定しようにも覆い被せて話し勝手に決めつけている。

「いやーさすが、私だわ。魔導士の頂を目指す私にとってルーキーの登録を手伝うのは当たり前だし・・・(後々、感謝もされるはずだわ・・・)」

後の方はブツブツと独り言を言っていたのでハッキリとは聞き取れなかったので、恐らく必要のない事だと気にしないでおこう。


「さて、ルーキーたち!私が登録のやり方を教えてあげるわ!」

ラクシスたちを無視して一人張り切るウィルミに圧倒されつつも、すでに登録は昔にしてあるので受付で分かるだろうとそっとしておく事にした二人だった。

「ささ、そうと決まれば行くわよ?」

ぎんたの袖を引っ張りながらギルドの扉を開け受付に向かう二人。

連れられたぎんたの後を追うラクシス。

ギルドの中はガヤガヤと人人集りひとだかりが多い

ウィルミはその人集りを割り込むように受付にズカズカと向かっていく。

「待つにゃウィルミ、あんまり急ぐと危ないにゃ!」

身長が145㎝くらいのぎんたにとっては袖を引っ張られると大変で転けそうになってしまう。

「う、受付のお姉さん!この子と後からくる子の登録お願いするわ!」

人の間を割り込み半ば強引に受付ようとする

「え?おっと・・・ちょ、ちょっとあなたマナーは守ってください!」

先にいた細めの男性と受付嬢は少し驚き対応する

「ま、まぁいいよ、譲る」

「ほら、じゃ私たちが先でいいわね?お姉さん」


「ったく、今回は目を瞑ります・・・それで?登録でしたっけ?」

ピシッと着た制服にショートボブの受付嬢は少し腑に落ちない表情をして対応を続ける。

「ごほん、そこの純獣人の彼と少し後ろに居る彼かしら?」

「そうよ!この二人が登録するわ!」

「・・・それでは手続きをします。」

「ちょ、ちょっと待つにゃ!ようやく言えたにゃ!」

「どうかなさいましたか?」

「ふぅ、私とぎんたは登録できないよ?」

「えっ!?」

信じられないと驚くウィルミに呆れ顔をする受付嬢。

「・・・と言いますと?」

「すいません。ウィルミさんに引っ張られここまで来てしまいましたが、実は私は既に登録済なんですよ」

「そうにゃ!それを言いたかったにゃ!」


「な、何ですってえぇー!!」

目をカッと見開き驚くウィルミの叫び声がギルド内に響く
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