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89 ビック・セブン対米新鋭戦艦
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「ファイア!」
ワシントンに、砲術長ハーベイ・ウォルシュ少佐の叫びが響く。
これまでワシントンは四度、ジャップ戦艦からの砲撃を喰らっていた。未だ命中弾はなかったが、それでも今まで撃たれ続けていたことへの鬱憤を晴らすような、そんな叫びであった。
同様に、やはりジャップ戦艦に先制されていたノースカロライナもその十六インチ砲の砲門を開いた。
「見張所より報告! 敵戦艦はナガト・クラスおよびイセ・クラスの模様!」
だが、主砲射撃を開始した直後、そのような報告がリーやデイビスの下に届けられた。星弾射撃によってようやく視界を確保し、それによって今までコンゴウ・クラスと思われていた敵の艦型が判明したのだった。
「ナガト・クラス、か……」
司令塔で報告を聞いたリーは、かすかに苦い声を出した。
これまで、合衆国側はジャップ戦艦を巡洋戦艦改造のコンゴウ・クラスであると想定していたのである。それが、旧式とはいえ十六インチ砲搭載戦艦が出現したとなれば、相応の衝撃を受ける。
ただし一方で、イセ・クラスの存在についてはそれほど驚きはない。
ノースカロライナに降り注ぐ砲弾の数がコンゴウ・クラスにしては多い(もしコンゴウ・クラスによる交互射撃だとすれば、一度に四発しか放てない)ことを不審に思っていた者たちにとって、ジャップはこの海域にイセ・クラスかフソウ・クラスを投入しているのではないかという疑念を確信に変えるものだったからである。
とはいえ、合衆国側にとって想定外であることには変わりがなかった。
ジャップは何らかの理由で高速のコンゴウ・クラスではなく低速の旧式戦艦を空母の護衛として充てていたのか、あるいは南方に確認された上陸船団の護衛をしていた部隊に遭遇したのか。
その判断が、現状ではつかなかった。
いかに暗号を解読してジャップの作戦目標を察知したとはいえ、作戦参加艦艇の一隻一隻の艦名までは把握していないのだ。ハワイの戦闘情報班ならばジャップ電信員が電鍵を叩く癖からその艦艇を割り出せると言うが、それとて旗艦のような通信量が他艦に比べて多い艦に留まっている。
「確かに想定外ではあるが、これはこれで意味がある」
リーの傍らでそう指摘したは、スプルーアンスであった。
「ジャップのナガト・クラスは連中にとって象徴的存在だ。これを撃沈出来れば四月のドーリットル空襲のように国民の戦意高揚に利用出来、またジャップ海軍の士気を落とすことも出来よう」
「……それもそうですな」
コンゴウ・クラスを素早く撃破してその先にいるジャップ空母を主砲の射程内に収めることが当初の追撃戦計画であったが、ナガト・クラスの出現によって狂いが生じてしまった。
旧式戦艦とはいえ、敵は十六インチ砲搭載戦艦。
レーダーに加え、従来の砲弾よりも重量を重くし遠距離砲戦での貫通力を増大させた新型砲弾・SHSなどの新装備を有するワシントンの優位は動かないだろうが、正面から砲戦を続ければこちらも相応の損害を受けるだろう。
果たして、ナガト・クラスを撃沈出来たとして、さらに進んでコンゴウ・クラスなどを相手取るだけの余力がワシントンに残っているか、リーには不安であった。
しかし、スプルーアンスの指摘したように、ナガト・クラスの撃沈を果たせればその宣伝効果は非常に高い。
彼は気を取り直して、砲戦の指揮に集中することにした。
ワシントンに、砲術長ハーベイ・ウォルシュ少佐の叫びが響く。
これまでワシントンは四度、ジャップ戦艦からの砲撃を喰らっていた。未だ命中弾はなかったが、それでも今まで撃たれ続けていたことへの鬱憤を晴らすような、そんな叫びであった。
同様に、やはりジャップ戦艦に先制されていたノースカロライナもその十六インチ砲の砲門を開いた。
「見張所より報告! 敵戦艦はナガト・クラスおよびイセ・クラスの模様!」
だが、主砲射撃を開始した直後、そのような報告がリーやデイビスの下に届けられた。星弾射撃によってようやく視界を確保し、それによって今までコンゴウ・クラスと思われていた敵の艦型が判明したのだった。
「ナガト・クラス、か……」
司令塔で報告を聞いたリーは、かすかに苦い声を出した。
これまで、合衆国側はジャップ戦艦を巡洋戦艦改造のコンゴウ・クラスであると想定していたのである。それが、旧式とはいえ十六インチ砲搭載戦艦が出現したとなれば、相応の衝撃を受ける。
ただし一方で、イセ・クラスの存在についてはそれほど驚きはない。
ノースカロライナに降り注ぐ砲弾の数がコンゴウ・クラスにしては多い(もしコンゴウ・クラスによる交互射撃だとすれば、一度に四発しか放てない)ことを不審に思っていた者たちにとって、ジャップはこの海域にイセ・クラスかフソウ・クラスを投入しているのではないかという疑念を確信に変えるものだったからである。
とはいえ、合衆国側にとって想定外であることには変わりがなかった。
ジャップは何らかの理由で高速のコンゴウ・クラスではなく低速の旧式戦艦を空母の護衛として充てていたのか、あるいは南方に確認された上陸船団の護衛をしていた部隊に遭遇したのか。
その判断が、現状ではつかなかった。
いかに暗号を解読してジャップの作戦目標を察知したとはいえ、作戦参加艦艇の一隻一隻の艦名までは把握していないのだ。ハワイの戦闘情報班ならばジャップ電信員が電鍵を叩く癖からその艦艇を割り出せると言うが、それとて旗艦のような通信量が他艦に比べて多い艦に留まっている。
「確かに想定外ではあるが、これはこれで意味がある」
リーの傍らでそう指摘したは、スプルーアンスであった。
「ジャップのナガト・クラスは連中にとって象徴的存在だ。これを撃沈出来れば四月のドーリットル空襲のように国民の戦意高揚に利用出来、またジャップ海軍の士気を落とすことも出来よう」
「……それもそうですな」
コンゴウ・クラスを素早く撃破してその先にいるジャップ空母を主砲の射程内に収めることが当初の追撃戦計画であったが、ナガト・クラスの出現によって狂いが生じてしまった。
旧式戦艦とはいえ、敵は十六インチ砲搭載戦艦。
レーダーに加え、従来の砲弾よりも重量を重くし遠距離砲戦での貫通力を増大させた新型砲弾・SHSなどの新装備を有するワシントンの優位は動かないだろうが、正面から砲戦を続ければこちらも相応の損害を受けるだろう。
果たして、ナガト・クラスを撃沈出来たとして、さらに進んでコンゴウ・クラスなどを相手取るだけの余力がワシントンに残っているか、リーには不安であった。
しかし、スプルーアンスの指摘したように、ナガト・クラスの撃沈を果たせればその宣伝効果は非常に高い。
彼は気を取り直して、砲戦の指揮に集中することにした。
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