暁のミッドウェー

三笠 陣

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13 一航艦の攻撃隊

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 一航艦司令部に索敵機から敵艦隊発見の報告をもたらしたのは、羽黒から発進した一機の零式水偵であった。
 担当していた索敵線は、一〇五度線。
 時に七月五日〇二四八時(現地時間:七月四日〇五四八時)。
 米艦隊に十五分ほど遅れての、敵艦隊発見であった。
 「敵航空部隊見ユ」という言葉で始まるこの報告電に、赤城艦橋は色めき立った。さらに追加の報告を待っていると、その十分後、敵艦隊の方位と位置、艦種を知らせる詳細な電文がもたらされた。
 敵空母は、サラトガ級二、エンタープライズ級一。
 羽黒水偵からは、敵艦隊上空の雲の状態、風向き、敵艦隊の針路などの情報が刻々と送られてくる。さらには、米空母から続々と艦載機が発艦しているという報告が寄せられた。
 確実に、米空母は自分たちを捕捉している。
 吉岡忠一航空乙参謀が海図台に取り付いて定規を当て、赤城飛行長・増田正吾中佐が発着艦指揮所に向かう。
 赤城艦橋は、にわかに騒がしくなった。
 源田実航空甲参謀が、この時のために待機させていた攻撃隊をただちに全機発進させるよう、南雲忠一長官と草鹿龍之介参謀長にほとんど命令口調で進言した。
 南雲や草鹿が航空戦に造詣が深くないために、艦隊の航空作戦の立案・実施を一手に引き受けていた源田にとって、これは待ちに待った瞬間であった。
 ハワイで討ち漏らしてしまった米空母を、今こそ撃滅する時である。
 真珠湾で米戦艦部隊を屠り、インド洋で英東洋艦隊を敗走させた源田にとって、この戦いは自らが信念とする航空主兵主義を完成させる最高の機会であった。
 戦艦を無用の長物と言って憚らない彼は、まさにこの瞬間、人生の絶頂にあったといえる。
 まず、敵艦隊との接触を維持するために蒼龍の二式艦偵が発艦した。

「搭乗員整列!」

 そして、艦内のスピーカーから発せられたその命令によって、艦橋下の搭乗員待機室から攻撃隊の搭乗員たちが飛び出していく。
 赤城艦長・青木泰二郎大佐も飛行甲板に降り、搭乗員たちに短い訓示と攻撃命令を与える。
 そして、赤城飛行隊長・村田重治少佐の「かかれ!」の号令と共に、搭乗員たちが一斉に飛行甲板上の機体に取り付き、乗り込んでいく。
 攻撃隊指揮官は、加賀飛行隊長の楠美正少佐。艦攻隊長は、赤城飛行隊長の村田重治少佐。艦爆隊長は、蒼龍飛行隊長の江草隆繁少佐。そして戦闘機隊長は、赤城戦闘機隊長の板谷茂少佐。
 第一攻撃隊の陣容は、赤城から零戦九機、九七艦攻十七機、加賀から零戦九機、九七艦攻二十六機、蒼龍、飛龍はそれぞれ零戦九機、九九艦爆十八機。
 全体で零戦三十六機、九九艦爆三十六機、九七艦攻四十三機の合計一一四機、真珠湾攻撃以来の大規模なものであった。
 それらが次々に母艦を発艦していき、上空で編隊を組んでいく。
 飛行甲板が空になると同時に、未だ格納庫内に第二次攻撃隊を残している一航戦、二航戦の四空母では整備員たちを中心に第二次攻撃隊を飛行甲板に上げる作業が開始された。
 なお、ミッドウェー攻撃に出撃した五航戦の航空隊は、帰還次第、第三次攻撃隊として準備されることになっていた。
 警報音を響かせつつ、昇降機が第二次攻撃隊として整備された艦載機を飛行甲板上に押し上げていく。
 こちらの攻撃隊指揮官は、飛龍飛行隊長の友永丈市大尉。彼は艦攻隊長も兼ね、艦爆隊長は加賀飛行分隊長の小川正一大尉、戦闘機隊長は蒼龍飛行分隊長の菅波政治大尉。
 その陣容は、赤城、加賀から零戦各六機、九九艦爆各十八機、蒼龍、飛龍から零戦各六機、九七艦攻各十八機。
 全体で零戦二十四機、九九艦爆三十六機、九七艦攻三十六機の合計九十六機である。
 第一次攻撃隊の発進から一時間ほど遅れて、これら第二次攻撃隊は母艦を飛び立っていった。
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