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過去編 王女殿下の初陣
15 血塗れの丘
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「騎兵砲部隊はまだ到着せんのか!?」
焦燥と苛立ちの混じった連隊長の声が、砲声の合間に響き渡る。
「駄目です、中佐殿! 橋がロンダリアの竜兵に爆撃されたらしく、未だ進出出来ておりません!」
連隊長の問いに答えたのは、通信用水晶を抱えた魔導兵であった。
「火砲もなしに、どうやってあの忌々しい丘を攻略せよというのだ!」
連隊長の前に広がるのは、人馬の死体の群れであった。
比高わずか十五メートル程度の小さな丘に陣取ったロンダリア軍によって、街道を突破して敵中央の側背を突くという北ブルグンディア側の作戦構想には大きな亀裂が生じていた。
迂回突破を図った別の部隊も、途中の村落で敵騎兵部隊と遭遇戦になり、壊乱したという。
迂回も出来ず、かといって突撃を強行すれば部隊は戦力を消耗してしまう。このままでは、迅速な旋回機動による敵軍中央と北翼の撃滅は果たせない。
騎兵二個旅団、計騎兵四個連隊からなる第六騎兵師団の進撃は、完全に停止していた。
眼前の丘で二個中隊、さらに村落での遭遇戦で一個中隊、計三個中隊相当の兵力が既に失われている。昨日、先鋒としてレーヌス河右岸に進出していた一個旅団も含めれば、第六騎兵師団は基幹となる騎兵部隊の半数近くを失っていることになる。
レナ高地に投入されて失われた歩兵一個大隊も含めれば、師団の被害は甚大であった。恐らく、この国境紛争終結後、長期の再編を行わなければならないだろう。
連隊長は旅団本部に火砲の到着がなければ丘の攻略は困難である旨を報告したが、旅団本部を飛び越して、師団司令部から丘の奪取を厳命されていた。
いったい、師団の作戦目標は敵野戦軍の包囲殲滅であるのか、丘の奪取であるのか。
連隊長は深刻な疑問を抱きつつも、命令である以上は丘を奪取しなければならなかった。
彼の麾下の騎兵部隊は、地形的理由から下馬し、敵陣地に対して白兵突撃を敢行していた。だが、敵の銃撃は凄まじく、一向に丘の頂上に辿り着けずにいた。
南側の斜面には、多数の兵士が横たわっている。死体もあれば、銃撃に頭を上げられずに地面にへばり付いている兵士もいることだろう。
この時代、兵士の持つ小銃・騎銃のほとんどは前装式であり、後世のように伏射しながら匍匐前進するということは不可能に近かった(一部の国では後装式旋条銃が開発されていたが、軍での正式採用までには至っていなかった)。
レナ高地に続き、敵陣地への攻撃で北ブルグンディア軍が大損害を出した要因の一つは、それであった。
「母さん、母さん……」
若い兵士が腹腔から内臓を飛び出させながら、虚ろな目で母親の名を呼んでいるのを、近くに伏していた曹長は歯軋りと共に聞いていた。
少しでも顔を上げれば、敵の銃撃に晒される。そうでなくとも、敵の火砲による射撃で南斜面を駆け上がろうとしていた将兵たちは多大な恐怖に晒されていた。
銃撃に比べて敵の火砲は少ないようだが、それでも一門の砲も持たないこちらよりは遙かに優位に立っている。
比高わずか十五メートルの丘を巡る攻防戦が開始されてから、すでに三時間あまり。
地面に伏し、味方の軍馬の死体の影に隠れることで曹長たちは何とか命を繋いでいた。だが、絶え間ない銃撃と砲撃に晒され、友軍の死体に囲まれた彼らの精神は少しずつおかしくなり始めていた。
突然笑い出す者、奇声を発して一人走り回る者、そうした者たちが少なからず発生していたのだ。
「このままでは日が暮れてしまう」
地面を這いながら曹長の近くにやって来た中隊長が言った(北ブルグンディアの騎兵連隊も、四個中隊から構成されている)。洗練された意匠の騎兵科将校の軍服は、すっかり土に汚れている。
「先ほど、連隊本部から五十名ほどの増援が到着した。彼らに援護射撃をさせつつ、我々は突撃を敢行する」
「無茶です、大尉殿。先行した第一中隊と同じく、挽肉にされてしまいます」
「突撃しなくとも同じことだ」付近に、敵歩兵砲の着弾があった。「曹長、ただちに動ける兵をまとめてくれ」
「ご命令とあらば」
曹長は引き攣った表情のまま、頷いた。
中隊長の命令は、ただちに部隊全体に伝達された。
「いいか貴様ら! ここに留まる奴は、死んだ奴か、これから死ぬ奴だ! 生き残りたくば俺に付いてこい!」
鋭剣を抜き、中隊長は部下を鼓舞する。
「第二中隊前へ! 国王陛下万歳!」
彼は立ち上がると同時に、鋭剣を振りかざして突撃を開始した。喊声と蛮声を上げた兵士たちが、それに続いて行く。
丘の上からの銃撃が、一層激しさを増した。
「弾運びおらんかぁ! 弾運べぇ!」
緑生い茂る小さな丘に上に、斉発砲隊指揮官の怒声が響き渡る。
北側の斜面から兵士たちが弾薬の入った木箱を運び、砲兵たちが即座に弾薬を取り出していく。
「次発装填急げ!」
「砲身が過熱しています! このままでは危険です!」
「水でも小便でもいいから引っ掛けて冷やせ! 敵は待ってはくれんのだぞ!」
士官も下士官も兵卒も、皆目を血走らせながら三門の斉発砲の操砲を行っていた。地面に伏せていた敵兵が、一斉に突撃を開始したのである。
この時、北ブルグンディア側では、第二中隊の突撃を見た第三中隊も、呼応して突撃を開始していた。
農場から流用した柵と蛸壺程度の防備しか持たないこの丘にとっては、それだけで脅威であった。
「装填よし!」
「てぇっー!」
把手が回され、束ねられた二十五の銃身から次々と銃弾が放たれる。それは、今まさに斜面を駆け上がろうとしていた敵兵を薙ぎ倒していく。
だが、敵兵が倒れる直前に投げた擲弾が、彼らの近くに落下した。
爆発。
数名の兵士が弾片に切り裂かれ、悲鳴を上げる。
「斉発砲を守れ!」
陣地の守備は、わずか三門の斉発砲にかかっていた。ここで、敵に破壊されるわけにはいかない。
周囲の歩兵たちが、メイフィールド銃を構えて射撃を繰り返す。だが、突撃する敵の後方から銃撃が加えられ、何人かの兵士たちが倒れた。
砲陣地というのは、歩兵に接近されると途端にその脆弱性が露わになる。機関銃の元祖の一つともいえる斉発砲も、その例外ではない。
銃声と喊声と蛮声。
何名かの敵兵は柵と飛び越える前に撃ち倒されたが、陣地への突入に成功した北ブルグンディア兵の数も多かった。
陣地各所で凄惨な白兵戦が開始された。彼我共に、小銃に装填している時間などない。敵兵に銃剣を突き刺し、銃床で殴りつけ、あるいは馬乗りになって顔面を殴打する。
斉発砲の近くに擲弾が投げ込まれ、砲員と共に吹き飛ばされた。
そして、これを好機と見た北ブルグンディア軍の連隊長は、予備隊として控置してあった第四中隊にも突撃を命じた。
すでに日没迫る小さな丘の上で、激闘が繰り広げられる。
そして北ブルグンディア軍の突撃開始から三十分あまり。ついに一部の北ブルグンディア兵が丘の頂上に到達した。だが、連隊旗を丘の頂上に掲げようとした瞬間、横合いから生き残った斉発砲の射撃が加えられた。
ロンダリア兵は二門の斉発砲の周囲に集結して、なおも丘を固守しようとしていたのである。
さらにその直後、丘からの通信によって危機を知ったライガー大佐直率の騎兵部隊が、北ブルグンディア軍の連隊本部を側面から急襲。これにより、北ブルグンディア側の指揮系統に大きな混乱が生じてしまった。
結果、丘を巡る戦闘は完全な混戦に陥った。
一時は頂上を奪取されたロンダリア側であったが、ライガー大佐の戦闘団本隊による急襲により敵の指揮系統に混乱が見られた隙を突いて逆襲を敢行、再び丘の頂上の持ち主はロンダリア側となった。
だが、第六騎兵師団司令部も諦めなかった。これを好機と見た師団長は、ただちに当該戦区を担当する旅団司令部に攻撃続行を下命。
兵力においてライガー戦闘団を上回る第六騎兵師団は、その数によって一気に決着をつけようとしたのである。
これに対してライガー大佐は、エスタークス魔導官に上空支援を要請。
これを受けたリュシアンは敵魔導通信の発信元を特定して、第六騎兵師団司令部へ爆裂術式を打ち込み、師団の指揮系統を撃滅するという戦果を挙げている(師団司令部への襲撃は、エルフリードの発案だったとされる)。
一八〇〇時過ぎ、ライガー戦闘団の下に独立混成第一旅団の増援が到着。
だが、夜の訪れにより反撃は不可能となったとライガー大佐は判断。友軍中央と北翼の後退による戦線整理も成功したとの情報を受けると、友軍の遺体を回収して、増援部隊の支援の下に退却を開始した。
結果として、丘を巡る攻防戦は北ブルグンディア側の勝利に終わったわけであるが、その被害は決して無視し得ぬものであった。師団司令部全滅、佐官・尉官級将校の戦死も多数に上り、騎兵部隊としての突破力はほとんど喪失してしまったのである。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
夕日が残照に変わった空の上を、リュシアンとエルフリードは飛んでいた。
「騎兵の時代は、終わったのか……」
夜の帳が降りようとする地上を双眼鏡で観察しながら、エルフリードはぽつりと呟いた。
地上では、北ブルグンディアの兵士たちが友軍の遺体を回収していた。だが、その数はあまりにも多かった。そして、人だけでなく馬の死体もその中には多く存在した。
レナ高地での陣地戦、そして今日、小さな丘を巡って発生した攻防戦において、騎兵の強みである突撃衝力を発揮する機会は、ほとんどなかった。唯一、エルフリードも参加したレナ高地での逆襲だけが、彼女が直接体験することが出来た騎兵戦であった。
だからこそ、彼女の呟きには実感が籠もっていた。軍人を目指してきたこの王女にとって、騎兵とは特に軍事力の象徴のようなものだったのだ。ある意味で彼女は、その出自故に王侯貴族が軍を率いていた時代の価値観を引き摺っているかもしれない。
だが、エルフリードが体験した戦場は、火力がものを言う世界であった。
己の価値観と、実際の戦場との乖離に、彼女は戸惑っているようでもあった。
「まあ、騎兵でなくとも火力を持つ敵に正面から突っ込むのは無謀だと思うけど」
一方、火焔魔法の使い手であるリュシアンの感想は違った。彼はエルフリードと違い、軍人としての教育を受けていない人間ではあったが、その魔術特性故に直感的に戦争形態の変化の兆しを感じ取っていたのである。
「ヒスパニアとの戦争や、ルーシー出兵でも、その傾向はあったはずだよ」
どちらも、この三〇年ほどの間にロンダリア連合王国が経験した対外戦争であった。海洋覇権を巡るヒスパニアとの戦争、革命の発生したルーシー帝国への干渉戦争、どちらの戦争でも要塞に籠もる敵軍に対して、ロンダリア側は大損害を出しているのだ。
ロンダリア軍が周辺諸国に比べて火力というものへの理解が深いのは、こうした戦争体験による。ロンダリアの将官や予備役の中には、尉官時代にこれらの戦争に従軍した経験を持つ者すらいるのだ。
とはいえ、それはあくまで要塞戦の戦訓であり、野戦においては火力を重視しつつも、ロンダリア陸軍も未だ白兵決戦主義、敵野戦軍の撃滅によって戦争の勝敗が決まるという会戦主義を維持していた。
オークウッド大佐によるレーヌス河湾曲部での包囲殲滅作戦なども、その一例であろう。
「私がライガー大佐殿の部隊に配属されたのも、やはり意図があったのであろうな」
昼間の激戦地となった小さな丘の上を航過しつつ、エルフリードは呟く。
「まあ、軍の意識改革を進めるのに、王族が率先して理解を示してくれるのはありがたいからね」
騎兵科将校でありながら陣地に拠る防御戦や砲戦について研究しているライガー大佐は、ロンダリア陸軍内部では少数派に属するものの、決して突飛な戦術構想を持っている軍人ではなかった。同様に、会戦主義よりも陣地戦や火力戦を重視し、研究している将校は陸軍内に一定数、存在していた。
「私も、もっと勉強せねばならんな。部下に無謀な突撃を命じる指揮官にはなりたくない」
先ほど見た眼下の光景を思い出して、エルフリードはそう呟くのだった。
リュシアンらが野営地に辿り着く頃には、すでに日は沈み、残照すら地平線の彼方へと消えていた。
幸いなことに、騎兵第十一連隊が野営地と定めた農場は、敵部隊の襲撃を受けることなく無事に存在していた。
リュシアンが翼竜を農場の開けた場所に着陸させる。
リュシアンは自分で安全索を外したが、エルフリードは高所恐怖症による緊張感で固まっていた。昼に一度地上に降りたとはいえ、ほぼ丸一日空の上にいては、彼女の精神的疲労は相当なものだろう。
リュシアンの介助を受け、エルフリードは抱きかかえられるようにして地上に降りた。
「……まだ何かフワフワする感じだ」
若干よろめきながらも、それでも彼女は地面にへたり込むことなかった。
「体、冷えてない? 大丈夫?」
案ずるように、リュシアンが問う。
「ああ、いや。若干冷えたが、まあ何とか」まだ地上に戻ってきた実感が薄いのか、声はどことなく浮ついていた。「お前の体が温かかったからな」
リュシアンは冷えを防止するため、全身の魔力循環を活発にして体温を維持していた。そこにエルフリードは抱きついていたので、一般の竜兵よりも体の冷えは緩和されていたのだろう。
「でも、念のためお湯を沸かすよ。流石に湯船は用意出来ないけど、温かい水で体を拭くだけでだいぶ違うと思うから」
「……それは、いささか不公平ではないか」
火焔魔法を得意とするリュシアンにとって、盥一杯のお湯を沸かすことなど造作もない。だが、その恩恵に与れるのが自分一人というのは、何か不公平なようにエルフリードは感じたのだ。
「いや、普通に竜兵だったらこれに酒も付く。特に酒精の強いやつが。それだけ、体が冷えることが当たり前の兵科だからね」
「……うぅ、では頼む」
温かいお湯で体を拭く誘惑に耐えられなかったのか、エルフリードは少し恥じらうようにリュシアンから目を背けた。
「……というか、そもそも、日も暮れたというのによく一発でここに戻れたな」
ふと思い出したのか、エルフリードはそんなことを言い出した。あるいは、強引に話題を変えたかっただけなのかもしれない。
「ああ、俺は魔術師だから」
「うん? 魔術師だと何かあるのか?」
「俺は専門じゃないけど、占星術なんかの知識があると、天体の知識も自然と学べるからね。後は天測航法の理論を学べば、特に地上目標なんかを目印にしなくても飛行出来る。海軍の竜兵なんかは、全員、俺と同じことが出来るはずだよ」
「そうなのか」
感心したように、エルフリードは言う。高所恐怖症とはいえ、竜兵の飛行技術そのものには素直に感銘を受けているらしい。
「まあ、それよりもライガー大佐に報告しないと」
軍人であるエルフリードは、将校斥候から帰還した以上は報告義務が伴う。リュシアンの方も、翼竜の調子についてライガー大佐に言っておかなければならない。
「ああ、そうだな。では、行くとするか」
二人は並んで、ライガー大佐のいる連隊指揮所へと歩き出した。
焦燥と苛立ちの混じった連隊長の声が、砲声の合間に響き渡る。
「駄目です、中佐殿! 橋がロンダリアの竜兵に爆撃されたらしく、未だ進出出来ておりません!」
連隊長の問いに答えたのは、通信用水晶を抱えた魔導兵であった。
「火砲もなしに、どうやってあの忌々しい丘を攻略せよというのだ!」
連隊長の前に広がるのは、人馬の死体の群れであった。
比高わずか十五メートル程度の小さな丘に陣取ったロンダリア軍によって、街道を突破して敵中央の側背を突くという北ブルグンディア側の作戦構想には大きな亀裂が生じていた。
迂回突破を図った別の部隊も、途中の村落で敵騎兵部隊と遭遇戦になり、壊乱したという。
迂回も出来ず、かといって突撃を強行すれば部隊は戦力を消耗してしまう。このままでは、迅速な旋回機動による敵軍中央と北翼の撃滅は果たせない。
騎兵二個旅団、計騎兵四個連隊からなる第六騎兵師団の進撃は、完全に停止していた。
眼前の丘で二個中隊、さらに村落での遭遇戦で一個中隊、計三個中隊相当の兵力が既に失われている。昨日、先鋒としてレーヌス河右岸に進出していた一個旅団も含めれば、第六騎兵師団は基幹となる騎兵部隊の半数近くを失っていることになる。
レナ高地に投入されて失われた歩兵一個大隊も含めれば、師団の被害は甚大であった。恐らく、この国境紛争終結後、長期の再編を行わなければならないだろう。
連隊長は旅団本部に火砲の到着がなければ丘の攻略は困難である旨を報告したが、旅団本部を飛び越して、師団司令部から丘の奪取を厳命されていた。
いったい、師団の作戦目標は敵野戦軍の包囲殲滅であるのか、丘の奪取であるのか。
連隊長は深刻な疑問を抱きつつも、命令である以上は丘を奪取しなければならなかった。
彼の麾下の騎兵部隊は、地形的理由から下馬し、敵陣地に対して白兵突撃を敢行していた。だが、敵の銃撃は凄まじく、一向に丘の頂上に辿り着けずにいた。
南側の斜面には、多数の兵士が横たわっている。死体もあれば、銃撃に頭を上げられずに地面にへばり付いている兵士もいることだろう。
この時代、兵士の持つ小銃・騎銃のほとんどは前装式であり、後世のように伏射しながら匍匐前進するということは不可能に近かった(一部の国では後装式旋条銃が開発されていたが、軍での正式採用までには至っていなかった)。
レナ高地に続き、敵陣地への攻撃で北ブルグンディア軍が大損害を出した要因の一つは、それであった。
「母さん、母さん……」
若い兵士が腹腔から内臓を飛び出させながら、虚ろな目で母親の名を呼んでいるのを、近くに伏していた曹長は歯軋りと共に聞いていた。
少しでも顔を上げれば、敵の銃撃に晒される。そうでなくとも、敵の火砲による射撃で南斜面を駆け上がろうとしていた将兵たちは多大な恐怖に晒されていた。
銃撃に比べて敵の火砲は少ないようだが、それでも一門の砲も持たないこちらよりは遙かに優位に立っている。
比高わずか十五メートルの丘を巡る攻防戦が開始されてから、すでに三時間あまり。
地面に伏し、味方の軍馬の死体の影に隠れることで曹長たちは何とか命を繋いでいた。だが、絶え間ない銃撃と砲撃に晒され、友軍の死体に囲まれた彼らの精神は少しずつおかしくなり始めていた。
突然笑い出す者、奇声を発して一人走り回る者、そうした者たちが少なからず発生していたのだ。
「このままでは日が暮れてしまう」
地面を這いながら曹長の近くにやって来た中隊長が言った(北ブルグンディアの騎兵連隊も、四個中隊から構成されている)。洗練された意匠の騎兵科将校の軍服は、すっかり土に汚れている。
「先ほど、連隊本部から五十名ほどの増援が到着した。彼らに援護射撃をさせつつ、我々は突撃を敢行する」
「無茶です、大尉殿。先行した第一中隊と同じく、挽肉にされてしまいます」
「突撃しなくとも同じことだ」付近に、敵歩兵砲の着弾があった。「曹長、ただちに動ける兵をまとめてくれ」
「ご命令とあらば」
曹長は引き攣った表情のまま、頷いた。
中隊長の命令は、ただちに部隊全体に伝達された。
「いいか貴様ら! ここに留まる奴は、死んだ奴か、これから死ぬ奴だ! 生き残りたくば俺に付いてこい!」
鋭剣を抜き、中隊長は部下を鼓舞する。
「第二中隊前へ! 国王陛下万歳!」
彼は立ち上がると同時に、鋭剣を振りかざして突撃を開始した。喊声と蛮声を上げた兵士たちが、それに続いて行く。
丘の上からの銃撃が、一層激しさを増した。
「弾運びおらんかぁ! 弾運べぇ!」
緑生い茂る小さな丘に上に、斉発砲隊指揮官の怒声が響き渡る。
北側の斜面から兵士たちが弾薬の入った木箱を運び、砲兵たちが即座に弾薬を取り出していく。
「次発装填急げ!」
「砲身が過熱しています! このままでは危険です!」
「水でも小便でもいいから引っ掛けて冷やせ! 敵は待ってはくれんのだぞ!」
士官も下士官も兵卒も、皆目を血走らせながら三門の斉発砲の操砲を行っていた。地面に伏せていた敵兵が、一斉に突撃を開始したのである。
この時、北ブルグンディア側では、第二中隊の突撃を見た第三中隊も、呼応して突撃を開始していた。
農場から流用した柵と蛸壺程度の防備しか持たないこの丘にとっては、それだけで脅威であった。
「装填よし!」
「てぇっー!」
把手が回され、束ねられた二十五の銃身から次々と銃弾が放たれる。それは、今まさに斜面を駆け上がろうとしていた敵兵を薙ぎ倒していく。
だが、敵兵が倒れる直前に投げた擲弾が、彼らの近くに落下した。
爆発。
数名の兵士が弾片に切り裂かれ、悲鳴を上げる。
「斉発砲を守れ!」
陣地の守備は、わずか三門の斉発砲にかかっていた。ここで、敵に破壊されるわけにはいかない。
周囲の歩兵たちが、メイフィールド銃を構えて射撃を繰り返す。だが、突撃する敵の後方から銃撃が加えられ、何人かの兵士たちが倒れた。
砲陣地というのは、歩兵に接近されると途端にその脆弱性が露わになる。機関銃の元祖の一つともいえる斉発砲も、その例外ではない。
銃声と喊声と蛮声。
何名かの敵兵は柵と飛び越える前に撃ち倒されたが、陣地への突入に成功した北ブルグンディア兵の数も多かった。
陣地各所で凄惨な白兵戦が開始された。彼我共に、小銃に装填している時間などない。敵兵に銃剣を突き刺し、銃床で殴りつけ、あるいは馬乗りになって顔面を殴打する。
斉発砲の近くに擲弾が投げ込まれ、砲員と共に吹き飛ばされた。
そして、これを好機と見た北ブルグンディア軍の連隊長は、予備隊として控置してあった第四中隊にも突撃を命じた。
すでに日没迫る小さな丘の上で、激闘が繰り広げられる。
そして北ブルグンディア軍の突撃開始から三十分あまり。ついに一部の北ブルグンディア兵が丘の頂上に到達した。だが、連隊旗を丘の頂上に掲げようとした瞬間、横合いから生き残った斉発砲の射撃が加えられた。
ロンダリア兵は二門の斉発砲の周囲に集結して、なおも丘を固守しようとしていたのである。
さらにその直後、丘からの通信によって危機を知ったライガー大佐直率の騎兵部隊が、北ブルグンディア軍の連隊本部を側面から急襲。これにより、北ブルグンディア側の指揮系統に大きな混乱が生じてしまった。
結果、丘を巡る戦闘は完全な混戦に陥った。
一時は頂上を奪取されたロンダリア側であったが、ライガー大佐の戦闘団本隊による急襲により敵の指揮系統に混乱が見られた隙を突いて逆襲を敢行、再び丘の頂上の持ち主はロンダリア側となった。
だが、第六騎兵師団司令部も諦めなかった。これを好機と見た師団長は、ただちに当該戦区を担当する旅団司令部に攻撃続行を下命。
兵力においてライガー戦闘団を上回る第六騎兵師団は、その数によって一気に決着をつけようとしたのである。
これに対してライガー大佐は、エスタークス魔導官に上空支援を要請。
これを受けたリュシアンは敵魔導通信の発信元を特定して、第六騎兵師団司令部へ爆裂術式を打ち込み、師団の指揮系統を撃滅するという戦果を挙げている(師団司令部への襲撃は、エルフリードの発案だったとされる)。
一八〇〇時過ぎ、ライガー戦闘団の下に独立混成第一旅団の増援が到着。
だが、夜の訪れにより反撃は不可能となったとライガー大佐は判断。友軍中央と北翼の後退による戦線整理も成功したとの情報を受けると、友軍の遺体を回収して、増援部隊の支援の下に退却を開始した。
結果として、丘を巡る攻防戦は北ブルグンディア側の勝利に終わったわけであるが、その被害は決して無視し得ぬものであった。師団司令部全滅、佐官・尉官級将校の戦死も多数に上り、騎兵部隊としての突破力はほとんど喪失してしまったのである。
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夕日が残照に変わった空の上を、リュシアンとエルフリードは飛んでいた。
「騎兵の時代は、終わったのか……」
夜の帳が降りようとする地上を双眼鏡で観察しながら、エルフリードはぽつりと呟いた。
地上では、北ブルグンディアの兵士たちが友軍の遺体を回収していた。だが、その数はあまりにも多かった。そして、人だけでなく馬の死体もその中には多く存在した。
レナ高地での陣地戦、そして今日、小さな丘を巡って発生した攻防戦において、騎兵の強みである突撃衝力を発揮する機会は、ほとんどなかった。唯一、エルフリードも参加したレナ高地での逆襲だけが、彼女が直接体験することが出来た騎兵戦であった。
だからこそ、彼女の呟きには実感が籠もっていた。軍人を目指してきたこの王女にとって、騎兵とは特に軍事力の象徴のようなものだったのだ。ある意味で彼女は、その出自故に王侯貴族が軍を率いていた時代の価値観を引き摺っているかもしれない。
だが、エルフリードが体験した戦場は、火力がものを言う世界であった。
己の価値観と、実際の戦場との乖離に、彼女は戸惑っているようでもあった。
「まあ、騎兵でなくとも火力を持つ敵に正面から突っ込むのは無謀だと思うけど」
一方、火焔魔法の使い手であるリュシアンの感想は違った。彼はエルフリードと違い、軍人としての教育を受けていない人間ではあったが、その魔術特性故に直感的に戦争形態の変化の兆しを感じ取っていたのである。
「ヒスパニアとの戦争や、ルーシー出兵でも、その傾向はあったはずだよ」
どちらも、この三〇年ほどの間にロンダリア連合王国が経験した対外戦争であった。海洋覇権を巡るヒスパニアとの戦争、革命の発生したルーシー帝国への干渉戦争、どちらの戦争でも要塞に籠もる敵軍に対して、ロンダリア側は大損害を出しているのだ。
ロンダリア軍が周辺諸国に比べて火力というものへの理解が深いのは、こうした戦争体験による。ロンダリアの将官や予備役の中には、尉官時代にこれらの戦争に従軍した経験を持つ者すらいるのだ。
とはいえ、それはあくまで要塞戦の戦訓であり、野戦においては火力を重視しつつも、ロンダリア陸軍も未だ白兵決戦主義、敵野戦軍の撃滅によって戦争の勝敗が決まるという会戦主義を維持していた。
オークウッド大佐によるレーヌス河湾曲部での包囲殲滅作戦なども、その一例であろう。
「私がライガー大佐殿の部隊に配属されたのも、やはり意図があったのであろうな」
昼間の激戦地となった小さな丘の上を航過しつつ、エルフリードは呟く。
「まあ、軍の意識改革を進めるのに、王族が率先して理解を示してくれるのはありがたいからね」
騎兵科将校でありながら陣地に拠る防御戦や砲戦について研究しているライガー大佐は、ロンダリア陸軍内部では少数派に属するものの、決して突飛な戦術構想を持っている軍人ではなかった。同様に、会戦主義よりも陣地戦や火力戦を重視し、研究している将校は陸軍内に一定数、存在していた。
「私も、もっと勉強せねばならんな。部下に無謀な突撃を命じる指揮官にはなりたくない」
先ほど見た眼下の光景を思い出して、エルフリードはそう呟くのだった。
リュシアンらが野営地に辿り着く頃には、すでに日は沈み、残照すら地平線の彼方へと消えていた。
幸いなことに、騎兵第十一連隊が野営地と定めた農場は、敵部隊の襲撃を受けることなく無事に存在していた。
リュシアンが翼竜を農場の開けた場所に着陸させる。
リュシアンは自分で安全索を外したが、エルフリードは高所恐怖症による緊張感で固まっていた。昼に一度地上に降りたとはいえ、ほぼ丸一日空の上にいては、彼女の精神的疲労は相当なものだろう。
リュシアンの介助を受け、エルフリードは抱きかかえられるようにして地上に降りた。
「……まだ何かフワフワする感じだ」
若干よろめきながらも、それでも彼女は地面にへたり込むことなかった。
「体、冷えてない? 大丈夫?」
案ずるように、リュシアンが問う。
「ああ、いや。若干冷えたが、まあ何とか」まだ地上に戻ってきた実感が薄いのか、声はどことなく浮ついていた。「お前の体が温かかったからな」
リュシアンは冷えを防止するため、全身の魔力循環を活発にして体温を維持していた。そこにエルフリードは抱きついていたので、一般の竜兵よりも体の冷えは緩和されていたのだろう。
「でも、念のためお湯を沸かすよ。流石に湯船は用意出来ないけど、温かい水で体を拭くだけでだいぶ違うと思うから」
「……それは、いささか不公平ではないか」
火焔魔法を得意とするリュシアンにとって、盥一杯のお湯を沸かすことなど造作もない。だが、その恩恵に与れるのが自分一人というのは、何か不公平なようにエルフリードは感じたのだ。
「いや、普通に竜兵だったらこれに酒も付く。特に酒精の強いやつが。それだけ、体が冷えることが当たり前の兵科だからね」
「……うぅ、では頼む」
温かいお湯で体を拭く誘惑に耐えられなかったのか、エルフリードは少し恥じらうようにリュシアンから目を背けた。
「……というか、そもそも、日も暮れたというのによく一発でここに戻れたな」
ふと思い出したのか、エルフリードはそんなことを言い出した。あるいは、強引に話題を変えたかっただけなのかもしれない。
「ああ、俺は魔術師だから」
「うん? 魔術師だと何かあるのか?」
「俺は専門じゃないけど、占星術なんかの知識があると、天体の知識も自然と学べるからね。後は天測航法の理論を学べば、特に地上目標なんかを目印にしなくても飛行出来る。海軍の竜兵なんかは、全員、俺と同じことが出来るはずだよ」
「そうなのか」
感心したように、エルフリードは言う。高所恐怖症とはいえ、竜兵の飛行技術そのものには素直に感銘を受けているらしい。
「まあ、それよりもライガー大佐に報告しないと」
軍人であるエルフリードは、将校斥候から帰還した以上は報告義務が伴う。リュシアンの方も、翼竜の調子についてライガー大佐に言っておかなければならない。
「ああ、そうだな。では、行くとするか」
二人は並んで、ライガー大佐のいる連隊指揮所へと歩き出した。
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